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最終更新日:2015年1月13日
1.軽油と同等の性能でディーゼルエンジンの運転が可能な脱石油燃料
近年の中国やインドの急激な経済発展によって世界の石油消費が増加し、現在は原油の生産が需要の伸びを満
たせない「石油ピーク」の状況に到達しているとも云われている。貨物輸送の主役であるディーゼルトラックには軽 油が使用されているため、「石油ピーク」の時代には少しの社会情勢の変動によって軽油不足に陥る危険が極めて 高い。軽油不足が生じた場合には、トラックの運行に支障をきたすため、貨物輸送が大きな打撃を受けることにな り、重大な社会的混乱を引き起こすことは間違いない。これを事前に回避するため、経済産業省は2006年5月に 「新・国家エネルギー戦略」を発表し、ほぼ100%を石油系燃料に依存する運輸部門はエネルギー需給構造の中で 最も脆弱性が高いために石油依存からの脱却を図るために,「今後、2030年までに、運輸部門の石油依存度を 80%程度とすることを目指す」と宣言している。
そのため、今後、政府はトラック運輸部門での脱石油の新たな燃料の導入による輸送体制を構築するとし、その
脱石油の候補として、バイオ軽油、ジメチルエーテル(DME)および液体燃料(GTL:gas to liquids)を挙げている。し かし、これら燃料の中で、わが国ではバイオ軽油の量的確保が困難と予想されるため、トラック分野全体の脱石油 を図る燃料としては不適と考えざるを得ないことは明らかだ。したがって、現在のところ、脱石油に有効な燃料として 政府の考えている燃料は、天然ガスから合成できるDMEまたはGTLと考えているものと推定される。実際、多くの 人がディーゼルトラックの脱石油燃料としてDMEまたはGTLを推奨しており、多くの政府予算を使ってこれら燃料の 製造法の改良研究やディーゼルエンジンでの燃焼研究が盛んに行われているところである。
これまでディーゼルエンジンの燃料にDMEまたはGTLを用いた試験研究の結果として、DMEやGTLに関連した企
業・団体が発表している「ディーゼルエンジンの燃料として見た場合のDMEとGTLの特長」を表1にまとめた。
ディーゼルトラックの燃料としてこれまでの軽油に代替してDMEまたはGTLを用いることにより、ディーゼルエンジ
ンから排出される有害排出ガスを大きく削減できるなどの表1に示したメリットに加え、ディーゼルトラックの脱石油 が 実現できるという、一石二鳥の効果があると説明する人が多い。そして、ディーゼルトラックの燃料にはDMEまた はGTLが最適と主張する論文や説明資料が世間に溢れている。その内容に誤りがなければ、今後、ディーゼルトラ ックの燃料を軽油からDMEまたはGTLに転換していくことについて、誰も疑問を挿む余地は微塵も無い。しかし、本 当にディーゼルトラックの燃料にDMEまたはGTLを広く用いることは、本当に可能であろうか。これについて、筆者は 大いに疑問があると考えている。そして、筆者の本心を正直に言わせてもらえば、「DMEまたはGTLはディーゼルト ラックの燃料としては失格」であると考えている。その理由については、その詳細を以下に示す。
2.天然ガスに比較して「CO2排出の増大と燃料コストの増加」を招くDMEとGTL
ディーゼルエンジンでは排出ガス低減の技術進歩により、EGRと尿素SCR触媒でNOxを削減し、DPFでPMを削
減する技術は既に実用化され、更なる改良は必要なもののほぼ確立された技術と考えて良いだろう。そのため、現 在では燃料組成の改質・改良による排出ガス削減の必然性は無い。しかし、ディーゼル燃料の軽油の原料である 原油について、生産が需要の伸びを満たせなく、頭打ちとなる「石油ピーク」の時代に突入したことにより、ディーゼ ルトラックの脱石油を早急に検討することが必要となってきた。その上、地球環境問題への意識の高まりからディー ゼルトラックのCO2削減の社会的ニーズが以前にも増して高まってきている。勿論、トラック用燃料のコスト削減は 永遠の課題である。現在のディーゼルトラック用の燃料に求められている改善の課題は「脱石油」、「CO2排出量 の削減」、「エネルギー資源の有効活用」および「燃料コストの削減」の4項目に絞られる。
そこで経済産業省は2006年5月に「新・国家エネルギー戦略」では,ほぼ100%を石油系燃料に依存する運輸部門
はエネルギー需給構造の中で最も脆弱性が高いために石油依存からの脱却を図るべきとし,「今後、2030年まで に、運輸部門の石油依存度を80%程度とすることを目指す」ことを宣言した。そして大型トラック輸部門の脱石油エ ネルギーとしては、天然ガス由来のDMEやGTLなど導入を推進するとしている。このような経済産業省の方針に呼 応するかのように、一部の学者や関連業界の専門家は前述の表1に示した「DMEとGTLがディーゼルエンジンの有 害排出ガスの削減に効果」がある点を捉え、DMEとGTLがディーゼルトラック用としての脱石油で低公害の理想的な 次世代燃料であるとマスコミ等で盛んにアピールしているようだ。この宣伝ではDMEとGTLにおけるCO2の排出につ いてほとんど言及されていない。
一方、環境省の「京都議定書で合意された1990年時点のCO2排出量に比べて2008年〜2012年までの期間に我
が国が6%削減する目標」に対する都市間走行の大型トラックに対してもCO2削減が必要なことは良く知られてい る。それにもかかわらず、CO2排出を無視してDMEまたはGTLがディーゼルトラック用の理想的な次世代燃料と位 置付けるのは問題である。筆者は、デーゼル大型トラックの燃料をDMEまたはGTLに転換した場合、DMEでは軽油 に比較してCO2削減はほとんど無く、GTLでは軽油に比較してCO2の大幅な増大を招く結果になると考えている。 その理由は、以下に示すように、現在の製造方法ではDMEまたはGTLの製造時に加熱のために多量のエネルギー を必要としているためだ。一般的に言えることであるが、欠点を無視して利点のみを取り上げればほとんどの場合 には「理想的」と形容することが可能とになるため、詐欺的な説明の場合に多く使われる手法である。
現在、CNGの原料である液化天然ガス(LNG)やDMEおよびGTLは,天然ガスの産出地で製造されている。そ
の際、採掘した天然ガスの一部をLNG、DMEおよびGTLを製造に必要なエネルギーとして使用しており、各燃料 の採掘から製品化までのそれぞれのエネルギー効率は,LNGでは0.870〜0.930(平均0.900),DMEでは0.680〜0. 730(平均0.704),GTLでは0.490〜0.680(平均0.593)である。一方,原油から軽油を精製する際のエネルギー効率 は,0.850〜0.960(平均0.924)である。(出典:JHFC総合効率検討特別委員会,平成15年度「JHFC総合効率検討 結果」中間報告書,財団法人 日本自動車研究所,平成16年3月) 図1は、これら各燃料のエネルギー効率を示し たものである。 ![]()
表1のデータを用い、各燃料の生産時に消費される天然ガスまたは原油から排出されるCO2を加算したLNG,D
ME,GTLおよび軽油の発熱量当たりのCO2排出量を計算し,LNGを基準とした比較を図2に示した。 ![]()
図2から明らかなことは、現在の製造技術での天然ガスや原油の採掘から製品化までの間の加熱時に排出する
CO2を含めた場合の各燃料のCO2排出量を比較すると、DMEのCO2排出量はLNGより28%も多く,GTLのCO 2排出量はLNGより52%も多く、軽油のCO2排出量はLNGよりも32%も多いことが判る。特に、GTLは軽油よりも 約15%も多くのCO2を排出するため,軽油よりも大気環境を悪化させる燃料と云える。また天然ガスを原料とする LNG、DMEおよびGTLの3者の製造原価を比較した場合、CO2の排出量の比は製造時の天然ガスの投入量の 比に相当するため、DMEの燃料原価はLNGより28%高く、GTLの燃料原価はLNGより52%高くなるものと予想さ れる。
そして、LNGとDMEおよびGTLの3種類のそれぞれの燃料の単位発熱量当たりの製造に必要とされる天然ガス原
料の量の比は、LNG:DME:GTL=1.00:1.28:1.52となり、DME製造にはLNG製造より28%も多く天然ガス原料を必 要とし、GTL製造はLNG製造より52%も多く天然ガス原料を必要とする。その結果、LNG、DME、GTLの3種類のそ れぞれの燃料でディーゼルエンジンを運転した時に同一の熱効率で運転できると仮定した場合には、DMEはLNG より28%も多く天然ガスを消費し、GTLはLNGより52%も多く天然ガスを消費することになる。このようにLNG、 DME、GTLのそれぞれの燃料がディーゼルエンジンで同一の熱効率で運転することが可能であれば、DMEとGTLは LNGよりも格段に天然ガス資源を浪費する燃料と位置付けることができるだろう。
また、「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心とした温室効果
ガス排出量に関する研究報告書】 平成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研鰍ノ記載されているDMEや GTLのWell-to-Tankのエネルギー効率が天然ガスや超低硫黄軽油(硫黄の含有率=0.0001wt%以下)に比較して 大幅に低い。そのため、省エネルギー資源が求められている現在においては、DMEやGTLは、大型トラックの燃料 としては明らかに欠陥と考えられる。(表2参照方)
注1:出典は、「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心とした温室効果ガス排出量に関
する研究報告書】 平成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研
注2:出典は、天然ガス専焼のCNG大型トラックは、重量車燃費基準に不適合の欠陥トラックのページ
以上の図1に示したJHFC総合効率検討特別委員会,平成15年度「JHFC総合効率検討結果」中間報告書,財
団法人 日本自動車研究所,平成16年3月)のデータや、表2に示した「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価」【日本に おける輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心とした温室効果ガス排出量に関する研究報告書】 平成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研鰍フデータを見ると、大型トラックの燃料にDMEを用いた場合は、大型トラックに 軽油を用いる場合に比べ、エネルギー資源を30%以上も浪費することが信頼のある組織・団体の平成16年(= 2003年)の報告書に公表されている。したがって、常識にある学者・専門家は、平成16年の時点において既に省資 源・省エネルギーを求められている現在社会において大型ディーゼルトラックの燃料としてDMEが失格であることを 理解している筈である。
一方、表2に示したように、大型トラックのエンジンにDDFエンジン(軽油着火型天然ガスエンジン)を採用した場合
には、軽油を燃料に用いた場合の大型トラックと同等のWell-to-Wheelのエネルギー効率で大型トラックを運行でき ることは、筆者の論文【自動車技術会学術講演会前刷集No.71-00(2000年5月) 「323 中型トラック用ECOS-DDF 天然ガスエンジンの開発 」(20005001) (主著者:石田)】において平成13年(2000年)に発表している。したがっ て、平成16年(=2003年)の時点において、大型トラックの脱石油の手段としては、DMEが失格であることが明確化 している上に、既にこの時点では、軽油ディーゼルのトラックを「脱石油化」および「低炭素化(=CO2の削減)を実現 できるDDFエンジン(=DDFトラック)の技術が存在しているのである。
さて、前述のDMEやGTLに関連した企業・団体が発表している表1の「ディーゼル燃料としてのDMEとGTLの特
長」を見る限りは、DMEとGTLはディーゼルエンジンにとって低公害でクリーンな理想的な次世代の脱石油燃料と言 っても過言ではないように思われる。しかし、図2「採掘・製造工程を含めた発熱量当たりの燃料のCO2排出の比 (LNG基準)」を見ると、DMEのCO2の排出量はLNGよりも32%も多く、GTLのCO2排出量はLNGより52%も多い ことから、仮にディーゼルエンジンが天然ガス(=CNGまたはLNG)を燃料にして運転できるのであれば、DMEとGT Lはエネルギー資源を浪費してCO2を大量に排出する反社会的なディーゼルエンジンの燃料と断定することができ るだろう。そこで問題となることは、ディーゼルエンジンが軽油に劣らない熱効率で天然ガス(=CNGまたはLNG) を用いて運転することができるか否かである。
これについて筆者は「可能である」と確信している。つまり「ディーゼルエンジンが軽油に劣らない熱効率で天然ガ
ス(=CNGまたはLNG)を用いて運転することができる」と断言したいのである。従来の軽油を燃料とするディーゼ ルエンジンと同等の熱効率で天然ガス(CNGまたはLNG)を用いて運転することが可能なエンジンがディーゼルデ ュアルフュエルエンジン(DDFエンジン)である。このDDFエンジンは、燃焼室内にパイロット噴射した軽油を圧縮自 己着火させ、この自己着火の火炎で燃焼室内に供給した主燃料の天然ガスを燃焼させて運転するエンジンであ る。DDFエンジンはトラック用エンジンとしては日本では馴染みは無いが、欧米では市販された実績は皆無ではな い。このDDFエンジンは、「ディーゼルと同じ圧縮比」で且つ「吸気絞り弁が無い」機構のため、ディーゼルと同等の 熱効率で運転できることはエンジンサイクル理論からも当然のことである。
図3は、いすゞ6HH1-Cディーゼルエンジン(過給6気筒、8.266リットル)を改造したDDFエンジンの全負荷性能曲
線である。この図3よりDDFエンジンの全負荷時における出力、トルクおよび燃費がベースディーゼルとほぼ同等で あることから、天然ガス(=CNGまたはLNG)を用いて運転するDDFエンジンは従来の軽油を燃料とするディーゼ ルエンジンとほぼ同等の熱効率で運転できることが十分に納得できたであろう。ただし、図4は全負荷時の天然ガス 比率を示したように、このDDFエンジンの全負荷時の天然ガス比率は80%前後であり、DDFエンジンでは燃料の 全量が天然ガスではないとの条件が加わるのは、このエンジンの機構から見て致し方の無いことである。
このようにDDFエンジンは、前述で仮定した「ディーゼルエンジンが天然ガス(=CNGまたはLNG)を燃料にして
運転できる」の命題を実現することが可能である。したがって、今後、天然ガスを原料として多量の熱エネルギーを 消費して合成されるDMEとGTLがディーゼルトラックの燃料に使用する施策が推進されることにより、「エネルギー 資源の浪費」と「多量のCO2排出による地球環境の悪化」が引き起こされる愚行は絶対に避けるべきである。 ![]() ![]()
このように、DDFエンジンではパイロット噴射の軽油が必要となるが、軽油を燃料とするディーゼルとほぼ同等の
熱効率で主燃料に天然ガスを用いて運転できることが特徴である。今のところ、軽油を燃料とするディーゼルとほぼ 同等の熱効率で運転が可能なエンジンは、DDFエンジン以外には見当たらない。このDDFエンジンについて詳細 を知りたい方は、ディーゼルに比べ15%のCO2削減が可能なDDFエンジンのページをご覧いただければ、DDFエ ンジンの構造・作動と共に、DDFエンジンの特性を良く理解していただけるだろう。DDFエンジンではパイロット噴射 する補助燃料の軽油と主燃料の天然ガス(CNGまたはLNG)の2種類の燃料を必要とする煩雑さはある。しかし、 軽油を燃料とするディーゼルエンジンと同等の熱効率で主燃料に脱石油の天然ガス(CNGまたはLNG)を用いて運 転できることが最大の特徴であり、メリットである。そして、将来、軽油にGTLを混合してディーゼルトラックの脱石油 を図る手段として検討されていることを考えれば、パイロット噴射の軽油の自己着火で主燃料の天然ガスを燃焼さ せるDDFエンジンが脱石油の手段として有効であることは明らかである。
そして、DDFエンジンでは、DDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック に詳細に記述したよう
に、少しの工夫を行うことによりDDF運転とディーゼル運転とを互いに切り替えが可能なデュアル運転モード の機能を持たせることが可能である。主に都市間の貨物輸送に使用されるディーゼル大型トラックは常に日本全国 のどこでも運行できることが必要であるが、デュアル運転モードのDDF大型トラックは、CNGスタンドの設置さ れた地域ではDDFエンジンで走行させ,天然ガスの補給が困難な地域ではディーゼルエンジンで走行させ ることが可能である。したがって,デュアル運転モードの機能を備えたDDF大型トラックを新たに実用化した場合に は,軽油と天然ガスを併用しながら日本全国に貨物を輸送することができるため、我が国の貨物輸送分野における 大型トラックの分野での脱石油を容易に実現させることが可能である。しかし、経済産業省の「新・国家エネルギー 戦略」(2006年5月)にはDDFエンジンが大型トラック輸部門の脱石油の技術候補に挙げられていない。その理由 は、DDFエンジンの研究開発についての知見や経験が少ない日本のトラックメーカー、研究機関および大学の専門 家・学者は、DDFエンジンの知識が乏しいにもかかわらず、彼らが勝手にDDFエンジンの欠点を作り上げて自信 満々にDDFエンジンを批判しているためではないだろうか。 そのため多くの日本人は、日本を代表するようなディー ゼルエンジンの専門家・学者によるDDFエンジンの批判を疑いも無く受入れ、そのまま信じてしまっているように考え られる。どうしようもないことであるが、今後、わが国における大型トラックの環境性能を向上していく上では、極めて 残念なことである
このように、日本のトラック用ディーゼルエンジン技術者は自身がDDFエンジンの研究開発の経験がほとんど無
い。それにもかかわらず、日本ではDDFエンジンが否定されていることは、大型トラックの「CO2削減」と「脱石油」 の有効な手段を自ら捨て去っていることになるのである。そのよう状況を自ら作り出していることを理解せず、大型ト ラックの「CO2削減」と「脱石油」について何らかの方策を示さなくてはならない日本の指導的立場の学者と専門家 の人達は、北米大陸と同様な「DMEとGTLによって脱石油を実現する」と云う考え方をそのまま輸入し、「日本でも DMEとGTLによって脱石油を実現する」と主張されているのである。 そして、この主張の際には、通常、DMEは Well to WheelのCO2削減には何の効果も無く、そしてGTLは軽油に比べてWell to WheelのCO2が増加させること については無視し、全く言及されないのである。多くの学者・専門家が、このような片手落ちとも考えられる「日本で もDMEとGTLによって脱石油を実現する」ことを堂々と主張されていることについて、筆者には理解し難いものがあ る。
米国や中国(=China=支那)のような広大な大陸の国では国土全体に天然ガス(LNGでも良い)が供給できない国
では、それぞれの国土全体の貨物輸送にDDFトラックを使用することができないことは明らかだ。そのため米国や 中国ではディーゼルトラックの脱石油の燃料にはDMEやGTLに頼らざるを得ないことは明白である。特に石油ピー クの時代を迎えたにもかかわらず経済発展によって大量の石油輸入国に転じた中国では、今後のトラック輸送の 増大に対応して行くためにはDMEやGTLに頼らざるを得ない状況になりつつある。そこで中国は「LPGと同等に扱 えるDME」や「軽油と同等に扱えるGTL」に注目してDMEとGTLの製造設備の導入に意欲を燃やしているようだ。米 国や中国のような大陸の国がトラック用燃料に「DMEとGTLによって脱石油を実現する」と主張するのは理に適っ ていると思うが、これらの国と異なった島国の日本でのトラックの脱石油燃料にDMEやGTLの導入方針が検討さ れていることについては合理性に乏しく、疑問があると思っている。
その理由は、日本は島国のため国内のほぼ全域でLNGを輸入するLNG受入基地があり、日本全国でLNGを容
易に入手できるため、これをCNG(天然ガス)にしてトラックに供給することが可能であり、このCNG(天然ガス)をD DFトラックに供給してDDFトラックで貨物輸送の燃料に使用できる現状が全く無視されていることだ。現時点で既に 日本はぼ国内の全域に天然ガス(LNG)が供給できる国であるが、必要な場所にCNGスタンドを設置してDDFトラッ クにCNGを供給する体制を整えることは可能である。しかし米国や中国では国土の全域に天然ガス(LNG)を供給 することは困難であるために米国や中国のディーゼルトラックの脱石油にはDMEとGTLを使わざるを得ないのが 現状である。このように、日本のディーゼルトラックの脱石油には天然ガス(LNGでも良い)を用いることが可能な特 殊な国であることを深く認識する必要がある。
今後、日本では天然ガス(LNGでも良い)を併用するDDFトラッを大量に導入することによって、ディーゼルトラック
の脱石油を実現し、CO2排出の削減やエネルギー資源の有効活用に最大の効果を発揮することになるだろう。島 国の先進国でLNG受入れ基地が充実した日本では、DDFトラックの導入によって{脱石油」を図りつつ「CO2排出 の削減」、「エネルギー資源の有効利用による燃料コストの削減」を実現することが可能と考えられる。それにもか かわらず、経済産業省は「新・国家エネルギー戦略」(2006年5月)を見る限り、トラックの燃料に「CO2排出の増加」 と「エネルギー資源の浪費」を招くDMEとGTLの導入を推し進める方針のようであるが、これについて筆者は不思 議に思えてならない。
さて、現状では、トラックメーカーやDME・GTLの関連企業・団体は、前述の表1に示したような「DMEとGTLがディ
ーゼルエンジンの燃焼に適した優れた特性を持った燃料である」ことを強調し、DME・GTLの関連企業・団体はイ ンターネットのホームページ等では「DMEとGTLがディーゼルエンジンにとって低公害でクリーンな理想的な次世代 の脱石油燃料である」ことを盛んにアピールしているようだ。そして、DMEやGTLに関連した企業・団体のホームペ ージでは、DMEとGTLがそれぞれの燃料の製造時に熱源として多量の天然ガスを消費することについてはほとんど 記載していないようだ。DMEとGTLがそれぞれの製造過程で加熱に費やした天然ガスから排出されたCO2を加算 して計算したDMEまたはGTLの発熱量当たりのCO2排出量は、原料の天然ガスより大幅に増加することは当然 である。前述の図2に示したように、DMEのCO2排出量がLNG(液化天然ガス)より30%弱も多く、GTLのCO2排 出量がLNG(液化天然ガス)より50%強も多く排出する事実にはついては、DMEやGTLに関連した企業・団体のホ ームページでは、言及されていないようである。
DMEやGTLに関連した企業・団体のホームページで、DMEやGTLの良い側面だけ強調し、悪い面に対しては意
識的に触れていないとすれば問題点の隠蔽とも考えられそうだ。このような情報を提供するホームページの情報発 信者の言い分としては、「インターネットのホームページで手軽に入手した情報を安易に信じる人は馬鹿だとし、真 実の情報を得たければ自分自身の知識を磨いて情報の取捨選択をすれば良い」と云うことであろうか。いわゆる騙 される者が悪いとする感覚だ。法人・個人の区別無く、モラル(社会的な規範や良心)の欠如したホームページの情 報発信者には困ったものである。
しかしながら、前述のように、軽油を燃料とするディーゼルエンジンと同等の熱効率で天然ガス(CNGまたはLN
G)を用いて運転することが可能なDDFエンジンと云う技術が既に存在し、このDDFエンジンを搭載したDDF大型ト ラックを開発すれば、主燃料に天然ガス(CNGまたはLNG)を使用して都市間の貨物輸送を行うことが可能であ る。それにもかかわらず、都市間走行の大型トラックの燃料に「燃料コストの増加」、「CO2排出量の増加」および 「エネルギー資源の浪費」を引き起こすDMEまたはGTLを使用する試験研究が多くのトラックメーカー、研究機関、 大学等で政府の予算も使って盛んに実施されている現状が、如何なる理由に拠るものか不明である。これらのトラ ックメーカー、研究機関および大学等の指導的立場の人は、軽油ディーゼルと同等の熱効率で天然ガス(CNGまた はLNG)を燃料として運転できるDDFエンジンと云う技術をご存知で無いのであろうか。それとも、DMEやGTLに関 連した企業・団体が発表している表1の「DMEとGTLはディーゼルエンジンにとって低公害でクリーンな理想的な次 世代の脱石油燃料」の宣伝文句を鵜呑みにし、ディーゼルトラックの次世代の脱石油燃料にはDMEまたはGTLが 最適と信じ込んでしまっているのであろうか。
何しろ、DMEは製造時に大量の天然ガスを消費するため、CO2がLNG(天然ガス)より28%も多く排出し、燃料
原価がLNG(天然ガス)より28%程度も高価になると予想される。また,GTLは製造時に大量の天然ガスを消費する ため、CO2がLNG(天然ガス)より52%も多く排出し、燃料原価がLNG(天然ガス)より52%程度も高価になると予想 される。このようなDMEとGTLはLNG(天然ガス)よりもCO2の排出量が格段に多く、燃料原価もLNG(天然ガス)よ りも大幅に高い燃料であることは間違いない。主燃料に天然ガス(LNG)が使用できるDDFトラックの技術を無視し、 GTLトラックやDMEトラックの普及はCO2排出量の増加や天然ガス資源の浪費を促進することは、「CO2削減」、「省 資源」を正義とする現在の社会通念に反する行為では無いだろうか。天然ガスの浪費を伴うGTLやGTLをトラックの 燃料に用いることは、トラック運送業者に浪費する天然ガスのコストを負担させることになり、運送業者に多大の犠 牲を強いることになる。
これに対し、航空機の燃料に天然ガスを使用しようとすれば、飛行機に重い燃料タンクを搭載し、頻繁に燃料補
給が必要となるため、航空機の燃料に天然ガスを使用することは誰が考えても不可能であることは明らかだ。した がって航空機の脱石油燃料としては、天然ガスから合成したGTLを使用せざるを得ないことは明白である。しかし、 多量のエネルギー(天然ガス)を投入して天然ガスから合成したDMEやGTLをトラックの熱機関の燃料とすること は、膨大な天然ガス資源を浪費するだけであり、これによって生じるデメリットは深刻なものである。トラックの燃料 にDMEやGTLを使用するメリットを敢えて挙げれば、従来のLPGや軽油と同等の取り扱いが可能と云うことのみであ ろう。
一方、DMEに関連する人達は、なりふり構わず、「DMEはディーゼルエンジンの高効率性を持つ燃料であり、
将来の有望な燃料」との宣伝活動を盛んに行なっているようだ。例えば、軽油よりもエネルギー効率が30%も劣 るDMEを推奨する機械学会の疑問のページに詳述しているように、日本機械学会誌2010年5月号(Vol.113、N0. 1098)に掲載された「DMEトラックの最新開発状況」の論文において、鰍「すゞ中央研究所の島崎直基氏と西村輝 一氏の両氏は、意図しての行為か否かは不明ではあるが、Tank-to-Wheelの試験データを根拠としながら、その試 験データがTank-to-Wheelの試験データを根拠に導き出された結論である事実を全く記載しないで「DMEはディーゼ ルエンジンの高効率性を持つ燃料であり、将来の有望な燃料」と主張されているのである。この日本機会学会誌の 論文では、DMEと軽油との異種の燃料の優劣の議論に必須のWell-to-Wheelのライフサイクルアセスメント(LCA)で の評価を全く行わないでDMEが将来の有望な燃料と結論づけられているため、致命的な欠陥をもった論文である考 えて間違いは無いだろう。
この日本機械学会誌2010年5月号(Vol.113、N0.1098)に掲載の「DMEトラックの最新開発状況」の論文では、「軽
油よりもWell−to−Wheelのエネルギー効率が30%も劣るDMEをディーゼルエンジンの将来燃料として推奨」すると 云う、心ある読者を驚愕させような誤った結論を発表している。現在は省エネルギーの推進が求められている時代 であるにもかかわらず、この論文では軽油よりもWell−to−Wheelのエネルギー効率が30%も劣るDMEを推奨する 間違った結論を堂々と主張されているのだ。そこで、著者に「この論文の結論の誤り」を指摘したが、その後、何ヶ 月も経過した現在でも訂正の処置が取られていない。このことから、いすゞ中央研究所の技術者は、日本機械学会 の権威・信用を巧くを利用し、DMEに関する誤った技術情報を厚顔無恥にも意図的に発信されているように見受け られる。
このようにして、いすゞ中央研究所の技術者は、DMEトラック開発に関するこれまでの政府補助金の受領を正当化
し、今後の更なる政府補助金の獲得を狙っているのではないかと推察される。何はともあれ、軽油ディーゼルトラッ クよりも Well−to−Wheel のエネルギー効率が30%も劣るDMEトラックの研究開発に貴重な政府の特別会計の予 算が補助金として無駄に使われていることは、重大な問題があることは明らかだ。このようなことは、補助金乞食に はこの上なく美味しいことに違いないだろうが、一般国民とっては税金の無駄使いのように見えて納得がいかないと ころである。これを川柳風に説明すると、
・DMEトラックの研究者から見れば
「DMEで 騙して掴む 研究費」
「DMEの 嘘で手にする 研究費」
・DMEトラックの研究補助金を出すNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)等から見れば
「DMEで 詐欺とも知らず 出す補助金」
「DMEで 詐欺と知りつつ 出す補助金」
何れにしても、軽油ディーゼルトラックよりも Well−to−Wheel のエネルギー効率が30%も劣るDMEトラックの研
究開発に特別会計の予算が補助金として無駄に使われていることは、早急に中止されるべきではないだろうか。
このいすゞ中央研究所の島崎直基氏と西村輝一氏の両氏のTank-to-Wheelの条件下における「DMEはデ
ィーゼルエンジンの高効率性を持つ燃料であり、将来の有望な燃料」との主張は、燃料の優劣の議論に必 須のWell-to-Wheelのライフサイクルアセスメント(LCA)での正しい評価に書き直すと、「DMEは軽油ディー ゼルよりも約30%もWell-to-Wheelの熱効率が劣っているため、将来性の無い燃料」との記述に本論文を 訂正すべきである。このようなことは、誇大宣伝を通り越し、虚偽宣伝に近いように思えるのである。このような宣 伝に日本機械学会が全面的に協力しているように見える状況は、実に嘆かわしいことだ。
因みに、日本機械学会のホームページでは2003年2月24日付けで「DME(ジメチルエーテル)燃料普及のための
提言」(出典のhttp://www.jsme.or.jp/teigen/teigb01.htm、または「日本機械学会のDME燃料普及のための提言の コピー」を参照)を行っている。この日本機械学会のホームページでは、自らを「DMEの専門技術者集団」と宣言した 上で、軽油よりも約30%もWell-to-Wheelのエネルギー効率が劣るDMEをディーゼルエンジンの燃料に用いることを 堂々と勧めているのだ。このように、日本機械学会がエネルギー資源の浪費を推奨していることは、驚きである。こ のことは、日本機械学会がDME関係者の個人的な利益追及のために誤った技術情報を平気で発信する反社会的 な宣伝機関に成り下がっているように、筆者には見えてしまうのである。
このように日本機械学会が積極的に「DMEが将来的には有望な燃料」との宣伝活動が功を奏しているため
に、政府はDMEの関係企業・業界団体には「CO2の増加」と「エネルギー資源の浪費」と云う致命的な欠陥 を抱えたDMEトラックまたはGTLトラックの導入と普及を目的とした研究・開発に予算をが積極的に支給し、 これらの無駄なDME関連の研究開発を推進しているのである。そして、DDF運転とディーゼル運転の選択が 可能なDDF大型トラック に詳述している日本の都市間の貨物輸送に使用可能なDDFトラックという優れた 技術を黙殺しているのだ。そして、政府はNEDO等を通じて補助金乞食に特別会計の予算を気前よく大盤振る舞 いしており、税金の無駄遣いの典型的な例と云えるのではないだろうか。
3.Well-to-Wheelの劣悪な熱効率で資源の浪費を招くDMEトラックを推奨する組織・団体
DMEトラックがディーゼルエンジンよりもWell-to-Wheelの燃費(=熱効率)が30%程度も劣る欠陥のあることは、
紛れも無い事実である。この燃料の浪費(=エネルギー資源の浪費)を招く欠陥があるDMEトラックを推奨している 組織・団体は、わが国では数多く存在している。これらDMEトラックを推奨する組織・団体名とそのホームページを表 3に示したので、御覧いただきたい。
そもそも、天然ガスから合成したDMEを燃料とするDMEトラックは、軽油を燃料とするディーゼルエンジンよりもWell
-to-Wheelの燃費(=熱効率)が30%程度も劣る重大な欠陥がある。それにもかかわらず、以上の表3に示した組 織・団体は、エネルギー資源の浪費を招く天然ガス由来のDMEを燃料とするDMEトラックの研究開発を行い、そのト ラックの普及を推奨しているのである。このことは、上述の表3に示した組織・団体が省エネルギー・省資源が最重 要視されている時代に、堂々とエネルギー資源を浪費すると云う、反社会的で誤った技術の普及・促進の宣伝活動 を行っていることになるものと考えられる。それとも、これら表3の組織・団体の学者・専門家は、脱石油に有効であ れば、エネルギー資源の浪費が社会的に容認されるとの間違った考えを持った人達であろうか。
果たして、表3に示した日本の多くの組織・団体の学者・専門家は、大型トラックの燃料に天然ガス由来のDMEを
用いる場合には、Well-to-WheelのDMEのエネルギー効率が軽油のWell-to-Wheelのエネルギー効率よりも30%も 劣っていても許されると勝手に解釈しているのであろうか。もっとも、現在では主婦や小学生でも省エネルギーや省 資源の必要性を十分に理解している状況である。そのような時代に、表3に示した日本の多くの組織・団体の学者・ 専門家が軽油を燃料とする大型ディーゼルトラックに比べてWell-to-Wheelのエネルギー効率が30%も燃費が劣る 天然ガス由来のDMEを燃料とするDME大型トラックの普及を熱心に推奨していることについては、主婦や小学生か らも「時代錯誤」、「非常識」との嘲笑を受けることは間違いないと考えられるが、如何なものであろうか。
4.軽油に比べて熱効率が30%も劣るDMEの自動車燃料の規格を作成する愚かな人達
以上のように、天然ガスから合成したDMEを燃料とするDMEトラックは、軽油を燃料とするディーゼルエンジンより
もWell-to-Wheelの燃費(=熱効率)が30%程度も劣る重大な欠陥がある。そのため、将来、軽油の代替の燃料とし て自動車用燃料にDMEを広く普及させた場合、地球上の自動車分野のエネルギーの消費を無駄に増加させること になることが明らかである。そのようなエネルギー資源の浪費を招く軽油に代替してDMEを自動車用燃料として広く 一般化する可能性は、常識的に考えれば、皆無と考えられる。しかし、世の中には、DMEが自動車用燃料として広く 普及するとの常識の無い学者・専門家が存在するようだ。その学者・専門家は、将来的な自動車用燃料にDMEが 普及することに備えて、以下の表4に示したように、DMEの自動車用燃料の規格作成に懸命に取り組んでいるよう である。ポンコツ元技術屋の筆者から見れば、荒唐無稽な行為のように見えるが、如何なものであろうか。
以上うのことから、最近の(独)産業技術総合研究所の研究計画では、小熊 光晴氏、鳥羽 誠氏、小渕 存氏、
佐々木 基氏、後藤 新一氏を含む学者・専門家は、政府予算を使ってトラック用燃料に使用不能な欠陥のあるDME について、「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」と云う業務を熱心に推進しているいるようである。これを見 ると、(独)産業技術総合研究所の小熊 光晴氏、鳥羽 誠氏、小渕 存氏、佐々木 基氏、後藤 新一氏を含む学者・ 専門家は、ディーゼルエンジンの燃料の観点からの評価では、天然ガスから合成したDMEが軽油よりも燃費(= Well-to-Wheelの熱効率)が30%程度も劣る重大な欠陥があるとの認識が欠けているように見受けられるのである。
そのため、(独)産業技術総合研究所の光晴氏、鳥羽 誠氏、小渕 存氏、佐々木 基氏、後藤 新一氏を含む学者・
専門家は、「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」が適切な業務を実施中との認識であるかも知れない。 しか し、ポンコツ元技術屋の筆者から見れば、天然ガスから合成のDMEが将来とも自動車用燃料として普及する可能 性が将来とも皆無なために、「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」が不必要と考えられる。したがって、「自 動車用DME燃料品質の国内外標準化」は、日本では将来とも何の役には立たないことが明らかであり、「愚の骨 頂」・「荒唐無稽な行為」と思えるのである。そのため、トラック用燃料に使用不能なDMEの燃料品質の標準作成 は、DMEの燃料品質の標準を作成する(独)産業技術総合研究所の政府予算の執行は、会計検査院の適切な検 査によって中止されることを切に望むところである。
5.将来のトラック輸送分野の「脱石油」や「低炭素化」は、DDFトラックにより実現可能
わが国では、多くの組織・団体の学者・専門家は、将来の大型トラックの「脱石油」のために、DMEエンジンを搭載
したDMEトラックを普及すべきとの誤った主張であることは、少し冷静に考えれば、誰にも容易に理解できることだ。 そして、筆者は、ディーゼルに比べ15%のCO2削減が可能なDDFエンジンおよびDDF運転とディーゼル運転の選 択が可能なDDF大型トラック の中で提案しているいるように、パイロット噴射した軽油の着火火炎によって主燃料 の天然ガスを点火して運転する軽油着火型天然ガスエンジンを搭載したDDF大型トラックが、軽油ディーゼル大型ト ラックと同等の軽油換算の燃費(=熱効率)で運行することが可能であるため、将来的にはDDF大型トラックを広く 普及しているべきであると考えている。何故ならば、このDDF大型トラックは、軽油換算で2015年度重量車燃費基準 を容易に達成できる上に、大型トラックの「脱石油」や「低炭素化(=CO2削減)」の実現も可能となる優れた特徴が あるためだ。
このように、天然ガスを併用するDDF大型トラックは、ディーゼル大型トラックと同等の燃費(=熱効率)で走行でき
るため、大型トラックにおける脱石油や「低炭素化(=CO2削減)」を実現する技術として最適である。それにもかか わらず、上述の表2に示した組織・団体を含めた日本の多くの組織・団体の学者・専門家は、DDF大型トラックの技 術を頑なに無視する一方、将来とも2015年度重量車燃費基準に適合できる可能性が皆無と考えられるDMEトラック の無駄な試験研究をこれまで熱心に実施されてきたのである。これについては、筆者は理解に苦しむところであり、 未だに信じられないことである。果たして、日本の多くの組織・団体の学者・専門家は、今後とも2015年度重量車燃 費基準に適合不能なDMEトラックの実用化を頑固に推奨され続けるのであろうか。
ところで、原料の天然ガスからDMEやGTLの液体炭化水素を合成する主要な方法は、ドイツの研究者、フランツ・
フィッシャー (Franz Fischer) とハンス・トロプシュ (Hans Tropsch) によって1920年代に開発されたのが起源である。 それ以来多くの改良や調整が施され、今日では類似する製造方法の総称として「フィッシャー・トロプシュ」の名が用 いられる。このように、DMEやGTLの製造技術が一世紀近くの歴史を経て改良されていることを勘案すれば、今 後、短期間に燃料の製造過程において数十%ものエネルギー効率が改善できる可能性は、常識的に考えて無理と 言えるだろう。したがって、地球の環境面を考えれば、当然、都市間走行のディーゼル大型トラックの燃料には「エ ネルギー資源の浪費」の不具合を招くDMEまたはGTL使用は、厳に避けるべきである。したがって、わが国におい てはDDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック に詳細に記述したように、天然ガス(CNGまたは LNG主燃料とする都市間走行のDDF大型トラックを数多く導入することにより、早急にトラック貨物輸送分野 におけ脱石油」、「CO2削減」および「エネルギー資源の有効利用」の推進を図るべきであると考える。
また、バイオマスを原料として製造されるバイオマス由来のDMEも、天然ガス由来のDMEと同様に、ディーゼルトラ
ックの燃料としては失格である。その理由は、バイオマス由来のDMEによる自動車の低炭素・脱石油は、不可能 だ!のページに詳述しているので、興味のある方は御覧いただきたい。
以上のように、筆者自身の薄弱な知識を省みず、不遜にもディーゼル大型トラックの燃料にDMEまたはGTLを使
用することについての問題点を摘出させて頂きました。上記本文中で誤り等がございましたら、メール等にてご指摘 下さいませ。また、疑問点、ご質問、御感想等、どのような事柄でも結構です。閑居人宛てにメールをお送りいただ ければ、出来る範囲で対応させていただきます。 ![]()
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