![]() (DDF:ディーゼルデュアルフュエルエンジン=軽油着火型天然ガスエンジン)
最終更新日:2015年7月9日
1.早期に実用化が可能な大型トラックの低公害化技術について
1-1.実用化が進む乗用車・小型トラックの低公害化技術
乗用車・小型トラックは都市内を走行する比率が圧倒的に多いため,低速走行頻度,加速・減速頻度,発進・停
止頻度が高く,一日の走行距離は短いことが特徴だ。このような乗用車・小型トラックの走行形態においては、圧縮 天然ガス(CNG)自動車とハイブリッド自動車では,それぞれの長所が生かせるため,既に数多くの乗用車・小型ト ラックに採用されている。また,植物油をエステル化したバイオディーゼル燃料は二酸化炭素(CO2)の削減効果が あるため,小型トラック等での試験走行が行われている。その他にも電気自動車の乗用車は2009年に発売を予定 するメーカーも現れている。このように,近年,乗用車・小型トラックの分野では低公害車が着実に増加しており,C O2の削減を含む低公害化および脱石油の技術が着実に浸透している様子が伺える。
1-2.大型トラックには不向きな乗用車・小型トラックの低公害車技術
大型トラックは、日本の経済活動の物流面で主役を担っていることは誰もが認めるところである。日本の国土は
南北に細長く形成されているため、大型トラックの場合には一日に1000km以上も走行することも珍しくはない。
そのような使用環境においては、低公害車のCNG自動車は一充填走行距離が短く,日本全国に十分なCNGスタ
ンドが整備されていないことから,都市間走行の大型トラックには不向きである。また,同じく低公害車のハイブリッ ド自動車は、低速走行やアイドリングの場合や頻繁な停止時の制動エネルギーの回生によって燃費燃費が改善さ れ,排出ガスの低減に効果が発揮できるが、高速道路を連続走行する時にはこれらの燃費および排出ガスの低減 効果が全く得られない。そのため,都市間の連続高速走行が多い大型トラックにハイブリッド技術を採用しても、本 来の機能が全く発揮できない代物である。また、電気自動車では一回のバッテリー充電での走行距離が短いことに 加え,トラックではバッテリーの重量増による貨物積載量の削減を招くため,今後ともディーゼル大型トラックが電気 自動車に変わる可能性は万に一つも有り得ない。このように、現在の乗用車・小型トラックで既に実用化され、若し くは実用化されようとしている低公害車技術は、都市間走行の大型トラックには適していないことは明白だ。そのた め、大型トラックの動力源には今後ともディーゼルエンジンに頼らざるを得ないことは周知の事実として認識されて いる。
ところで、2007年2月の産業構造審議会環境部会地球環境小委員会・中央環境審議会地球環境部会第10回
合同会合 交通政策審議会交通体系分科会第11回環境部会 合同会議の資料2 「運輸部門のCO2削減対策と 課題」(http://www.mlit.go.jp/singikai/koutusin/koutu/kankyou/11/02.pdf)の運輸部門におけるCO2排出削減のた めの「新動力システム・新燃料の利用」の項に記載されているCO2削減の技術は、ハイブリッド車、電気自動車およ びバイオマス燃料である(下表を参照方)。前述の通り、ハイブリッド車と電気自動車は都市間走行の大型トラックに は採用できない技術であり、辛うじてバイオマス燃料のみが大型トラックに採用が可能である。しかし、我が国では 必要量を確保することが困難なため、バイオマス燃料による大型トラックのCO2削減が不可能であることは誰もが 認めるところである。 ![]()
1-3.大型ディーゼルトラックに求められている低公害技術
ディーゼルエンジンを低公害化する技術は日々進展しており,窒素酸化物(NOx)は尿素SCR触媒により十分な
削減が可能である。そして,パティキュレート(PM)はディーゼル微粒子除去装置(DPF)により必要なレベルまでに 削減できる技術が確立されている。そのため、ポスト新長期規制(2009年実施)やその後の排出ガス規制強化に対 しては,これら技術の組合せにより規制への適合が可能と云われている。しかしながら、我が国に対して気候変動 枠組条約に基づいた京都議定書において2008年から2012年までの期間に1990年時点のCO2排出量に比べて6% の削減が求められているが、ディーゼルエンジンのCO2排出を現状以上に削減できる技術は未だ確立されていな い。京都議定書のCO2削減目標達成には、都市間走行のディーゼル大型トラックのCO2排出についても、現状か ら更に削減できる新たな技術の開発が必要である。バイオマス由来の燃料を用いることによってディーゼルエンジ ンのCO2の削減が可能であるが,この燃料はわが国では将来とも必要量の確保が難しいと予想されるため,京都 議定書の目標を達成する手段にはなり得ないことは多くの専門家が認めていることである。
そもそも京都議定書が1997年12月11日に議決されてCO2削減の必要性が広く認識され始めて10年以上レ
ベルの長い年月が経過しているにもかかわらず、日本の政府・学会・企業からはバイオマス由来の燃料以外に、現 行の大型ディーゼルトラックのCO2排出が少しでも削減できるような技術は、未だに何も発表されていないのだ。こ のことは我が国の大型ディーゼルトラックのCO2削減に関し、10年余りの間に何の研究成果も得られていないこと の証拠である。
一方、近年の中国やインドなどの急激な経済発展や石油ピークの時代に突入したことから、近い将来、我が国で
は石油燃料が不足する事態が否定できない状況になりつつある。その場合の軽油不足から生じるトラック貨物輸 送の支障による経済的な混乱を回避できるようにするため、経済産業省は2006年5月に「新・国家エネルギー戦略」 を発表した。この戦略では「ほぼ100%を石油系燃料に依存する運輸部門はエネルギー需給構造の中で最も脆弱 性が高いために石油依存からの脱却を図るべき」とし,「今後、2030年までに、運輸部門の石油依存度を80%程度 とすることを目指す」とする方針としている。当然、大型トラックについても早急に脱石油化を図る必要があることは 当然である。したがって、現在の都市間走行の大型トラックに求められている技術的に改善すべき重要な課題は、 「CO2削減」と「脱石油」である。この課題を解決するためには、将来型の大型トラック用として「CO2削減」と「脱石 油」を同時に満足できる新しいエンジンを早急に開発する必要があることは明らかである。
2.CO2の削減が可能な燃料について
近年の中国やインドでは、著しい経済発展に伴って石油消費の増加が著しい。今後、世界情勢の緊迫から,世界
の石油市場での需給が逼迫し,軽油不足によって我が国の大型トラックが円滑に運行できなくなる恐れも否定する ことはできない。最悪の事態に備えるのが危機管理であるとすれば,トラック輸送の危機管理に万全を期すため, 早期に大型トラックにおいて脱石油の燃料の早急な導入が望まれるところだ。
このような状況を踏まえ,燃料の低公害性をも考慮し,脱石油の有力な燃料候補としては天然ガス等から合成さ
れるジメチルエーテル(DME)または液体燃料(GTL:gas to liquids)を推奨する人も多い。これらDMEとGTLはディ ーゼル燃焼に適していることもあって,ディーゼルトラックに用いる研究が盛んに行われているところである。
現在、CNGの原料である液化天然ガス(LNG)やDMEおよびGTLは,天然ガスの産出地で製造されている。そ
の際に採掘した天然ガス自体をエネルギー源として使用した場合の各燃料の採掘から製品化までのそれぞれのエ ネルギー効率は,LNGでは0.870〜0.930(平均0.900),DMEでは0.680〜0.730(平均0.704),GTLでは0.490〜0.680 (平均0.593)である。一方,原油から軽油を精製する際のエネルギー効率は,0.850〜0.960(平均0.924)である。(出 典:JHFC総合効率検討特別委員会,平成15年度「JHFC総合効率検討結果」中間報告書,財団法人 日本自動 車研究所,平成16年3月) 図1は、これらのエネルギー効率を示したものである。 ![]()
これらのデータから生産時に投入されるエネルギーを含むLNG,DME,GTLおよび軽油の発熱量当たりのCO2
排出量を計算し,LNGを基準とした比較を図2に示した。 ![]()
現在の製造技術での天然ガスの採掘から製品化までの間の加熱時に排出するCO2を含めた場合の各燃料のC
O2排出量を比較すると、DMEと軽油のCO2排出量はLNGより約30%高く,GTLのCO2排出量はLNGより約 50%も高い。特に、GTLは軽油よりも約15%も多くのCO2を排出するため,軽油よりも大気環境を悪化させる燃料 と云える。天然ガスを原料とするLNG、DMEおよびGTLの三者を比較した場合、LNG、DMEおよびGTLのCO2の排 出量の比は、それぞれを製造する設備投資を無視しても燃料価格の比に相当すると推察され、DMEの価格はLNG より約1.3倍、GTLの価格はLNGより約1.5倍程度になると予想される。
なお、DMEに関連する人達は、なりふり構わず、「DMEはディーゼルエンジンの高効率性を持つ燃料であり、将来
の有望な燃料」との宣伝活動を盛んに行なっているようだ。例えば、軽油よりもエネルギー効率が30%も劣るDME を推奨する機械学会の疑問のページに詳述しているように、日本機械学会誌2010年5月号(Vol.113、N0.1098)に掲 載された「DMEトラックの最新開発状況」の論文において、島崎直基氏と西村輝一氏の両氏は、DME専門家である ことを考慮すると意図しての行為と見られるが、Tank-to-Wheelの試験データを根拠としながら、その試験データが Tank-to-Wheelの試験データを根拠に導き出された結論である事実を全く記載しないで「DMEはディーゼルエンジン の高効率性を持つ燃料であり、将来の有望な燃料」と主張されているのである。この日本機会学会誌の論文では、 DMEと軽油との異種の燃料の優劣の議論に必須のWell-to-Wheelのライフサイクルアセスメント(LCA)での評価を 全く行わないでDMEが将来の有望な燃料と結論づけられているため、致命的な欠陥をもった論文である考えて間違 いは無いだろう。
この島崎直基氏と西村輝一氏の両氏のTank-to-Wheelの条件下における「DMEはディーゼルエンジンの高効率
性を持つ燃料であり、将来の有望な燃料」との主張は、燃料の優劣の議論に必須のWell-to-Wheelのライフサイク ルアセスメント(LCA)での正しい評価に書き直すと、「DMEは軽油ディーゼルよりも約30%もWell-to-Wheelの熱効 率が劣り、将来的にも自動車に使用できない欠陥燃料」との記述に本論文を訂正すべきである。このようなことは、 誇大宣伝を通り越し、虚偽宣伝に近いように思えるのである。このような宣伝に日本機械学会が全面的に協力して いるように見える状況は、実に嘆かわしいことと思っている。因みに、日本機械学会のホームページでは「DME(ジ メチルエーテル)燃料普及のための提言」(http://www.jsme.or.jp/teigen/teigb01.htm)のページを設け、軽油ディー ゼルよりも約30%もWell-to-Wheelのエネルギー効率が劣るDMEを堂々と推奨しているのである。日本機械学会が エネルギー資源の浪費を推奨していることは、驚きだ。
ところで、仮に、ディーゼルエンジンが軽油に劣らない熱効率で天然ガスを用いて運転することが可能であるなら
ば、天然ガスに多量のエネルギーを投入して合成するDMEやGTLをディーゼルの燃料に使用することはCO2を増 大させるだけでなく、燃料の浪費と燃料コストの上昇を招くことになる。このように、CO2の排出と燃料価格との両面 から考えた場合、DMEとGTLは大型トラック用の脱石油の燃料に適していないことは容易に理解できることだ。この ことは、天然ガスから合成のDMEとGTLは、トラック用燃料に不適に詳述しているので、参照願いたい。
DMEとGTLについては、将来、採掘が可能な石油と天然ガスが枯渇し、これらの燃料が自動車用に十分に供給さ
れなくなった時点で,石炭をガス化して合成する燃料としてディーゼルエンジンに使用する形態が最も望ましいと考 えられる。
3.CNGを燃料とするエンジン(天然ガスエンジン)
3-1.天然ガスエンジンの種類
天然ガスはセタン価が極めて低いことから,空気と天然ガスの混合気を燃焼させるには,外部からの点火が必要
となる.一つはスパークプラグの火花放電により天然ガスのみを燃焼させるスパークプラグ方式天然ガス専焼エン ジンがあり,他は燃焼室内にパイロット噴射した軽油の自己着火の火炎により天然ガスを燃焼させる軽油着火型 のディーゼルデュアルフュエル(DDF)エンジンがある.(図3参照) スパークプラグ方式天然ガス専焼エンジン(スパ ークプラグ式CNGエンジン)は、市販のCNG乗用車、小型CNGトラック、中型CNGトラックおよびCNGバスのエン ジンとして採用されている。 ![]()
3-2.従来のスパークプラグ式天然ガスエンジン等の熱効率とCO2排出性能
(DDFエンジンとの相違点)
国土交通省では平成14〜16年度の3ケ年計画で産学官の連携のもとに「次世代低公害大型自動車の研究開
発」(http://www.ntsel.go.jp/jutaku/15files/06.pdf#search='次世代低公害')が実施された。そこでは図4に示すプロ ジェクト実施体制をのもとに、大型の天然ガストラック、DMEトラック、ハイブリッドバス、スーパークリーンディーゼル エンジン、燃料電池バスの開発研究が行われた。 ![]()
この中の天然ガス自動車のプロジェクトでは、スパークプラグ式天然ガスエンジンを搭載したGVW25トンクラスの
大型CNGトラックの開発研究が行われ、研究結果が報告されている。結果報告の詳細はhttp://www.ntsel.go.jp/ jutaku/15files/06.pdf#search='次世代低公害'の「次世代低公害大型自動車の研究開発」'を参照願いたい。
この報告書によると、JE05モード試験では、GVW25トンクラス大型CNGトラック用のスパークプラグ式天然ガス
エンジンのCO2排出量は、「同一排気量エンジンでディーゼルエンジンのトップクラスに並ぶ低CO2排出量とすること ができた。」と記載されている。 つまり、JE05モード試験では大型CNGトラック用のスパークプラグ式天然ガスエン ジンのCO2排出量は、同一排気量のディーゼルエンジンのCO2排出量と同等であると報告されている。
一方、天然ガスと軽油の単位発熱量当たりのCO2発生量は、天然ガスが51g/MJ、軽油が67g/MJであり、天然
ガスのCO2排出量は軽油よりも大幅に少ない。それにもかかわらず、JE05モード試験ではこのプロジェクトで開発 されたGVW25トンクラス大型CNGトラック用のスパークプラグ式天然ガスエンジンのCO2排出量は、同一排気量の ディーゼルエンジンのCO2排出量と同等であったとのことだ。このことは、天然ガスと軽油のそれぞれの単位発熱量 当たりのCO2発生量を基にして計算すると、このプロジェクトで開発されたGVW25トンクラス大型CNGトラック用の スパークプラグ式天然ガスエンジンの熱効率が、同一排気量の大型トラック用ディーゼルエンジンの熱効率よりも、 計算上、31%も劣っていることになる。吸気絞り弁を備えた低圧縮比のスパークプラグ式天然ガスエンジンが吸気 絞り弁の無い高圧縮比のディーゼルエンジンに比べてJE05モード試験の熱効率が大幅に劣っていることは、エン ジンサイクル理論から考えて当然のことである。 これについては、別のページ天然ガス専焼大型トラックは、重量車 燃費基準に不適合の欠陥トラックだ!にも詳述しているので、御覧いただきたい。
この報告書で確認された重要なことは、スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型CNGトラックは従来の大型ディ
ーゼルトラックよりも31%も多くの燃料エネルギーを浪費することが明確にされたことである。熱効率の悪いスパー クプラグ式天然ガスエンジンを搭載した大型CNGトラックは、常に運行コストの抑制のために燃料消費量の削減が 求められている都市間貨物輸送には全く使用できないことは明らかである。したがって、将来、脱石油の必要が生 じたとしても、スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型CNGトラックが実用に供される可能性は皆無と考えて良い だろう。言い換えれば、スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型CNGトラックは、省エネルギーが強く求められて いる現在では、存在する価値の無い大型トラックと考えられる。この平成14〜16年度に実施された国土交通省の 大型CNGトラック開発プロジェクトについては、「総排気量13リットルクラスのスパークプラグ式天然ガエンジンを搭 載した車両総重量25トン級の大型CNGトラックは、開発しても実用性が全く無いことを実証したこと」が最大の成果 と言っても過言では無いだろう。
3-3.軽油着火型の天然ガスエンジンであるディーゼルデュアルフュエル(DDF)エンジン
欧米の天然ガスが容易に入手できる地域では、安価な天然ガスを併用して経済的にトラックを運行させるため、
軽油着火型の天然ガスエンジンであるDDFエンジンを搭載したトラックが一般に使われている例があるが、我が国 ではDDFエンジンを搭載したトラックが市販された例は見当たらない。筆者が以前に勤務していた日本エコス鰍ェ カナダのAlternative Fuel Systems Inc.と共同でいすゞフォワード(積載量4トンクラス)のディーゼルエンジンをベー スにzu 吸気ポート噴射式DDFエンジンを開発し、この吸気ポート噴射式DDFエンジンを搭載したいすゞフォワード のDDFトラックを試験走行を実施した例がある。吸気ポート噴射式DDFエンジンは図5の模式図に示したように各 シリンダの吸気弁の開弁中に吸気ポートからシリンダに向かって天然ガスを噴射する方式のエンジンである。 ![]()
このいすゞフォワードに搭載した吸気ポート噴射式DDFエンジンの詳細は、報告書(著者:石田明男 他,323 中
型トラック用ECOS-DDF天然ガスエンジンの開発,学術講演会前刷集No.71-00,社団法人 日本自動車技術会)に まとめている。
ここでは、この報告書にもとづいてDDFエンジンの構造や性能の要点をまとめたので、DDFエンジンの優れた特
長を理解する一助にしてにいただければと思っている。
3-4.DDFエンジンの作動と燃焼
DDFエンジンでは,各シリンダの吸気ポートに設けたガスインジェクタから吸気弁の開弁期間中に主燃料の天然
ガスをシリンダ内に向かって噴射する方法が採用されている.その理由は,シリンダ内に天然ガスの過濃領域と空 気の多い領域に分けた不均一な混合気を形成させ,ディーゼルの高い圧縮比を変えずに全負荷時に多量の天然 ガスを供給した場合でもノッキングを生じさせないようにするためだ。DDFエンジンでは,燃焼室内にパイロット噴射 した軽油の予混合気が最初に自己着火して火炎が形成され,この火炎が天然ガスの希薄予混合気を燃焼させる プロセスで運転が行われる。DDFエンジンの燃焼は,図6の熱発生率の模式図に示したように,ディーゼル燃焼で ある軽油の拡散燃焼が大きく削減され,これに天然ガスの予混合燃焼が付加されたものと考えられる。 ![]()
3-5.試作したDDFエンジンの概要
いすゞ6HH1-CディーゼルエンジンをDDFエンジンに改造した中型トラックのエンジンの諸元を表1、システムを図
7に示した。
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ベースの6HH1-Cディーゼルの電子制御ユニット(ECU)にDDFエンジンのECUが新たに追加され,酸化触媒装
置およびEGRクーラが追加された.これによりエンジン回転数及びアクセルペダル位置信号にしたがって軽油およ び天然ガスの噴射量が制御され,エンジン出力および排出ガスの最適化が図られている.このDDFエンジンは、い すゞフォワード(積載量4トンクラス)に搭載され,(財)日本自動車研究所に委託され,シャシーダイナモ設備によりエ ンジン性能および排出ガスの試験が実施された。
3-6. DDFエンジンの排出ガス性能
DDFエンジンの排出ガス試験結果を図8および図9に示した。ベースの平成6年規制適合ディーゼルに対しNOx
の約40%,一酸化炭素(CO)の約90%,炭化水素(THC)の約35%,PMの約70%の削減が得られた.これは,開 発試験当時の平成7年の低公害車等排出ガス技術指針(環境庁)の重量車低排出ガスレベルを満足したものであ る。DDFエンジンの軽負荷時には,一部のシリンダに天然ガスの供給を中止するスキップファイアの制御を行い, 天然ガスの過剰な希薄化を防止して未燃天然ガスの排出削減が図られている。 ![]() ![]()
図10はDDFエンジンのD13モード排出ガス試験中に消費される軽油と天然ガスの平均流量である.PMが排出さ
れない天然ガスが燃料全体の60%近くを占めるため,ベースのディーゼルに対してPMの約70%が削減できたもの と考えられる. ![]()
また,DDFエンジンの全負荷時の3モード黒煙および無負荷急加速黒煙は何れも零(汚染度%)であることも確認
した.
3-7. DDFエンジンの出力性能
図11に示したように,DDFエンジンの全負荷時の出力,トルクおよび燃料消費率はベースのディーゼルとほぼ同
等の性能を示した. ![]()
また,DDFエンジンの全負荷運転時の天然ガス比率は図12に示した通り,80%前後である.
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そして、図13はディーゼルエンジンを基準とした場合のDDFエンジン(D13モードの燃費率)およびスパークプラグ
式天然ガスエンジン(実走行の燃費率)の燃費率の比較を示す。その結果、DDFエンジンのD13モード燃料消費率 はベースディーゼルに対し約8%の増加に過ぎない.因みに,運輸低公害車普及機構の実走行試験の調査ではス パークプラグ方式天然ガス専焼エンジンの一定距離走行時の燃料消費量はディーゼルに対し35%も悪化したこと が報告(出典:低公害・代替燃料自動車の普及・促進のための調査研究報告書,(財)物流技術センター運輸低公 害車普及機構,p.6-11 平成11年3月)されている.また、後述の4項に示した報告書では、スパークプラグ式CNG エンジンエンジンの熱効率は、ディーゼルエンジンより30%強も劣っていることが明らかである。したがって,ディー ゼルと 同等の高い熱効率を有するDDFエンジンは、常に燃費向上を求められている大型トラックに採用可能な、 優れた天然ガスエンジンであるとこは明らかである. ![]()
3-8. DDFエンジンのCO2排出性能
図14はD13モード試験におけるディーゼルエンジンとDDFエンジンのCO2排出値を示す。
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図14に示したようにDDFエンジンのCO2は,D13モードでディーゼルエンジンよりも15%も少ないことを確認し
た.D13モード時の消費燃料の60%近くが炭素成分の少ない天然ガスであり,その熱効率がディーゼルエンジンと ほぼ同等であったためと考えられる。
ところで、軽油の燃焼時には「発ガン性」が疑われているナノ粒子(50nmクラスの微細な粒子)や、PM2.5(.5μm[ミ
クロン]以下の微粒子)が常に排出される欠点がある。これに対し、天然ガスの燃焼ではナノ粒子やPM2.5が排出さ れないことが大きな特長である。一方、DDFエンジンにおいては、13モード時の消費燃料の60%近くが天然ガスであ る。このことから、DDFエンジンの運転時には、エンジンから排出される「発ガン性」が疑われているナノ粒子や、 PM2.5がディーゼルエンジンに比べて半減することが可能となるのである。
一方,実走行に近い試験モード運転において、ディーゼルエンジンに比較して30%強も熱効率が劣るスパークプ
ラグ方式天然ガス専焼エンジンのCO2排出量は、ディーゼルエンジンとほぼ同等であることは、平成14〜16年度 に国土交通省が実施した「次世代低公害大型自動車の研究開発」(http://www.ntsel.go.jp/jutaku/15files/06.pdf# search='次世代低公害')プロジェクトや、塩路昌宏著の報告書「自動車用エンジンの熱効率向上"自動車技術,Vol. 53,No.9 (1999)」で明らかにされている。そのため、ディーゼルエンジンよりCO2が15%少ないDDFエンジンは,現 時点ではCO2の排出が最も少ない内燃機関であると考えられる。
5.DDFエンジンの特長
軽油着火型の天然ガスエンジンであるDDFエンジンの特長をまとめると、以下の表2の通りである。
スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型CNGトラックは、従来の大型ディーゼルトラックに比較した場合、ディー
ゼルと同等のCO2を排出し、ディーゼルよりも燃料エネルギーを31%も多く浪費する致命的な欠陥がある。これに 対し、燃焼室内にパイロット噴射した軽油の自己着火の火炎により天然ガスを燃焼させる軽油着火型のDDFエン ジンは、従来の大型ディーゼルトラックに比較した場合、ディーゼルと同等の熱効率であることに加え、ディーゼルよ りCO2が15%少なくできる長所がある。以上の内容については、昨年(2008年)の11月14日に潟Gヌ・ティー・エス (http://www.nts-book.co.jp/)に発行された「クリーンディーゼル開発の要素技術動向」と云う専門書(http://www. nts-book.co.jp/item/detail/summary/energy/20081114_51.html)の第5章の7項に、「環境負荷から環境浄化へ--- 天然ガスを併用するディーゼルエンジン---」の項に詳しく記載されているので、参考にしていただきたい。
なお、DDFエンジンは、ディーゼルと同等の高い熱効率を有しているので、大型トラックにおいてディーゼルエンジ
ンに代替して用いることについては熱効率の面からは何の問題も無い。したがって、天然ガスを併用するDDFエン ジンは、今後の大型トラックの「CO2削減」や「脱石油」を推進するための最適な天然ガスエンジンであると断言して 良いのではないだろうか。
6.DDFエンジンにおける更なる性能向上の技術
これまでの説明に用いたいすゞフォワードDDFエンジンのデータは、吸気ポートに天然ガスを噴射する吸気ポート
噴射式DDFエンジンの試験結果である。この図5に示した吸気ポート噴射式DDFエンジンを改良し、図15に示した ようなシリンダ内に天然ガスを直接噴射する直噴式DDFエンジン(特許公開2008-51121)とすることによって、シリン ダ内への天然ガス噴射の適正化を図ることができるため、DDFエンジンの性能を更に向上させることが可能であ る。また,部分負荷運転時の燃費低減のために気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)や部分負荷時のHC削 減のために部分負荷時に酸化触媒の温度上昇を可能にする後処理制御システム(特許公開2005-69238)等の新 たなアイデアを導入することにより,更なる環境性能の向上を図ることも可能だ。 ![]()
ところで、このDDFエンジンを搭載したトラックでは、運転手のスイッチ操作を行うことにより、DDF運転とディーゼ
ル運転とを任意に選択して切り替えることが可能な「デュアル運転モード」の走行が可能である。デュアル運転モー ドのDDF大型トラックが実用化された場合のメリットについては、DDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大 型トラック のページに詳細に記載したので、ご覧いただきたい。
7.十分な知識を持たずにDDFエンジンを批判するディーゼルエンジン専門家の迷惑
DDFエンジンは新しい技術であるため、我が国ではこのエンジンを十分に理解しているエンジン技術者は極めて
少ない。DDFエンジンはディーゼルデュアルフュエルエンジンと云うその名の示すとおり、ディーゼルエンジンから派 生した軽油圧縮着火型のエンジンである。そのためDDFエンジンについての十分な勉強や情報収集を行っていな いにもかかわらず、ディーゼルエンジン技術者自身が一遍の論文を読んだだけでDDFエンジンを理解していると自 身が納得してしまっているところが大きな間違いの原因となっているようだ。最近まで或る日本を代表する研究所の エンジン研究部門の部長を勤られた人からDDFエンジンについて次のような欠陥があると指摘の上で、DDFエンジ ンは実用性が無いとの意見が示され、驚愕させられたことがある。
「(日本を代表する研究所のエンジン研究部門の元部長は)天然ガスの二燃料噴射は実施してませんが、火種を
軽油として、メタノールの筒内噴射は、二十数年前に国家プロジェクトで実施しました。このときの経験から問題点を まとめると、低負荷でのディーゼル以下の熱効率(特に、メタノール噴射時)、コスト面(二噴射系はコストが高くつ く)、信頼性・耐久性(特に燃料噴射系の信頼性・耐久性がディーゼルより劣ること)が上げられます。したがって、軽 油以外の燃料によるに燃料噴射システムは、低負荷での熱効率、コスト面、耐久性・信頼性でディーゼルを凌駕す ることは難しいと思います。」
この元部長のDDFエンジンに対しての問題指摘は、DDFエンジンを全く理解されていないことを如実に示している
証拠である。そもそもDDFエンジンはアイドリング運転では軽油のみのディーゼル運転である。そしてDDFエンジン の低負荷における天然ガスの希薄燃焼が困難な運転領域では、軽油のみを燃焼させて運転するディーゼルそのも ので運転するエンジンである。この研究所のエンジン研究部門の元部長は、このようなDDFエンジンの運転制御を 全く理解せずに、DDFエンジンでは低負荷において火種のパイロット噴射に少量の天然ガスを供給してエンジン運 転するものと勝手に思い込み、「低負荷での燃焼の不安定やディーゼル以下の熱効率となってしまうことが問題」と 思い込んでいるようだ。DDFエンジンの低負荷において火種のパイロット噴射に必ず少量の天然ガスを供給してエ ンジンを運転しなければならない法律や規則は何処にも無いのである。DDFエンジンではパイロット噴射の軽油と 主燃料の天然ガスの供給は、自由自在に制御すれば良いのだ。低負荷運転で無理に天然ガスを供給してDDFエ ンジンを運転させるようにしてもDDFエンジンの総燃料消費量に占める天然ガスの消費割合の増加は僅かであり、 DDFエンジンにおける天然ガス消費量の割合の増減に大きな影響はないのである。
このようなDDFエンジンを全く理解せずに的外れなDDFエンジン批判であっても、日本を代表する研究所のエン
ジン研究部門の元部長の発言であれば信じる人が多く、DDFエンジンの欠陥として流布されている可能性が極め て高いと思われる。DDFエンジンにとっては無実の罪を着せられているようなものであり、実に嘆かわしいことだ。 地位のあるエンジン専門家がご自身の知識や経験が不十分な分野についての無責任な発言や主張される迷惑な 行為は、厳には謹んでいただきたいものである。
さて、我が国では実際にDDFエンジンを研究されたエンジン関係の学者・専門家が少ないため、DDFエンジンに
関する情報は少ないのが現状である。そのため、前述の或る研究所のエンジン研究部門の元部長の「DDFエンジ ン批判」と同じく、DDFエンジンを十分に理解されていないエンジン関係の学者・専門家は、今後ともDDFエンジン に対して方々で的外れの批判が繰り返されるものと推察される。このようなことは即刻に止めて欲しいものであが、 自身が的外れの批判であることを認識されていないために今後も引き続き誤ったDDF批判を続けられることを考え ると、DDFエンジンが不憫でならない。このようなことが、多くの学者・専門家からDDFエンジンが無視されている理 由の一つになっているのではないだろうか。
8.大型トラックの「CO削減」と「脱石油」が実現できる技術を見出していない学者・専門家
近年の中国やインドなどの急激な経済発展や石油ピークの時代に突入したことから、近い将来、我が国では石油
燃料が不足し、軽油不足から生じるトラック貨物輸送の支障を生じる危険が増してきた。そこで経済産業省は2006 年5月に「新・国家エネルギー戦略」を発表し、運輸部門における石油依存からの脱却を図るために、2030年まで に、運輸部門の石油依存度を80%程度とする方針を発表した。大型トラックについても早急に脱石油化を図る必要 があることは当然である。また、2009年12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で鳩山 首相は「90年比25%のCO2削減」を宣言し、の目標を日本政府は2010年1月26日に25%削減の目標を国際 事務局に提出したとのことである。政府は大型トラックにおいてCO2削減目標を実現し、脱石油を実現して行くため の計画を早急に策定する必要がある。そのため、政府の担当官僚は学者や専門家にCO2削減や脱石油に必要な 技術戦略の提案を求めていくことは間違いない。
一方、政府官僚からCO2削減や脱石油に必要な技術戦略の提案を求められる立場の学者や専門家は、「現時
点では都市間走行の大型ディーゼルトラックにおけるCO2削減が実現できる見通しは全く立っていない」ために、何 の技術案を示すことができないのが現状のようだ。都市間走行の大型ディーゼルトラックのバイオマス由来燃料以 外でのCO2削減について、自動車技術 Vol.64、No.1、2010(2010年1月1日発行)の「特集:自動車技術の進化」に おいて、飯田訓正 他3名著「ディーゼルエンジンこの10年」の最後の「5 おわりに」の項に「(ディーゼルエンジン の)CO2のさらなる削減は今後も大きな挑戦課題」と技術開発の必要性が記載されているのみである。そして「CO2 削減の課題達成」には「従来のディーゼルエンジンの要素技術開発に加え、燃料、燃焼、触媒の研究、システム制 御の統合化技術が求められている」と記載されている。批判を恐れずに筆者の言葉でこの記載内容を判り易く説明 すると、「ディーゼルエンジンのCO2削減の課題達成は極めて困難であり、今のところ、ディーゼルエンジンのCO2 を大幅に削減できる有効な技術は何一つ見出されていないのが現状である。ディーゼルエンジンのCO2削減が実 現できる手段や方法が全く不明であり、技術的に八方塞がりの状況を呈している。ディーゼルエンジンのCO2を大 幅に削減するためには、今のところディーゼルエンジンの要素技術、燃料改良、燃焼改善、触媒の研究、システム 技術の改良の推進など、現時点で考えられるディーゼルエンジンの性能・排出ガスに関する全てのアイテムの改良 研究を継続していくことしか方法は残されていない。しかしながらこれらの改良研究を推進しても、ディーゼルエンジ ンのCO2削減が確実に実現できる保証はない」と云うことになる。
昔から「桃栗3年、柿8年」と云われるように、果物の場合には苗木を植えてから一定の年月が過ぎれば果物を収
穫できることは誰もが知っていることである。しかし、技術開発では、果物の収穫と同様に一定の年月を費やせば 成功する保証は何も無いのである。大型トラックのCO2削減や脱石油のような技術開発では、研究開発を実施す る技術アイテムの選択を失敗する場合や、技術アイテムの選択が適切であったとしても研究開発を実施する技術 上のアイデア不足の場合には、その技術開発が予定通りに成功しないことも起こり得ることである。まして、現時点 で技術的な見通しが全く立っていない大型トラックのCO2削減や脱石油について、それが実現できる時期を予想で きないことは当然である。前述の通り、「自動車技術」誌(2010年1月1日発行)に掲載の論文「ディーゼルエン ジンこの10年」(著者:飯田訓正 慶応大教授 他3名)では、ディーゼルエンジンのCO2削減が「挑戦的課 題」と記載され、このCO2削減のために「従来のディーゼルエンジンの要素技術開発に加え、燃料、燃焼、 触媒の研究、システム制御の統合化技術が求められている」と結論付けられている。これは都市間走行の 大型ディーゼルトラックでは「CO2削減が技術的に八方塞がりの状況」であり、「ディーゼルエンジンの性能・ 排出ガス関連の思いつく全てのアイテムについての研究を実施すべき」ことを婉曲に記載したものと考えら れる。この「自動車技術」誌が自動車技術会の会誌編集委員会によって編集されていることから考えると、 この意見は、著者の飯田訓正 他3名の諸氏だけでなく、多くの日本の自動車関係ディーゼルエンジンの学 者・専門家に賛同されているものと見て差し支えないと考えられる。
この「自動車技術」誌(2010年1月1日発行)の飯田訓正 慶応大教授の論文内容からも判るように、現時点では大
型トラックのCO2削減や脱石油を可能にする技術的な見通しが立っていないのである。そのような状況の中で、筆 者はDDFエンジンを搭載したDDF大型トラックの実用化によって「CO2削減」ばかりでなく、「脱石油」をも実現できる ことを必死に訴えているが、自動車技術会の会誌編集委員会からはDDF大型トラックの技術を完全に無視されてい るようである。無名の筆者の主張の届く範囲が極めてローカルに限られているため、自動車技術会の会誌編集委 員会の目に触れていないのだろうか。それとも会誌編集委員会のメンバーが筆者の主張を目にしたとしても、自動 車技術会の倫理規定における「(情報の発信)常に中立的、客観的立場から誠意を持って研究内容や成果を社会 に正しく説明するように努めます。」との規定を反故にして筆者のDDF大型トラックに関する主張を意図的に無視し ているのだろうか。何れにしても、「自動車技術」誌に例え婉曲な表現であってもディーゼルエンジンの「CO2削減が 技術的に八方塞がりの状況」を伺わせるような記述については、DDFエンジンによって大型トラックのCO2削減や脱 石油を提案している筆者にとっては「少し書き過ぎ」の感が拭い切れないのである。このような状況を見ると、自動 車技術会は倫理規定の通りに運営されているのだろうかと、筆者には疑問に思えてくるのである。
9.天然ガス専焼トラックのCO2排出量は、ディーゼルトラックのCO2排出量とほぼ同等
(独)交通安全環境研究所の2010年11月24(水)・25日(木)の講演会において、交通安全環境研究所は、表1に
示した論文「大型天然ガストラックの実証運行試験の成果と普及への課題」(参照)を発表した。この論文では、平 成21年度に終了したGVW25トンのオットーサイクルのスパークプラグ方式天然ガスエンジンを搭載した圧縮天然ガ ス(CNG)大型トラック(以後、天然ガス専焼大型トラックと称す)による貨物輸送事業の計30万kmに及ぶ(独)交通 安全環境研究所の実証試験の結果( =http://www.ntsel.go.jp/forum/forum2010.html)が報告されている。この報 告では、天然ガス専焼トラックのCO2排出量は、ディーゼルトラックのCO2排出量とほぼ同等であることが明記され ている。 まとめ(=http://www.mlit.go.jp/common/000168127.pdf)」には、「オットーサイクルのスパークプラグ方式天然ガス エンジンを搭載した天然ガス専焼大型トラック」は、「大型ディーゼルトラック」に比較して実走行での燃費(=熱効 率)が25%も劣っていることを示した(独)交通安全環境研究所の計測データが明示されている。このことから、国 土交通省と(独)交通安全環境研究所は、かなり以前から、「大型ディーゼルトラック」に比較して「オットーサイクル のスパークプラグ方式天然ガスエンジンを搭載した天然ガス専焼大型トラック」の実走行のCO2排出量が同等であ り、燃費(=熱効率)が25%程度も劣っていることを十分に承知していたと筈と推測される。これらの内容について は、天然ガス専焼のCNG大型トラックは、重量車燃費基準に不適合の欠陥トラックに詳述しているので、興味のあ る方は御覧いただきたい。
10.DDFエンジンの採用によって大型トラックの「CO削減」と「脱石油」が実現可能
鳩山首相は2009年9月22日に国連本部で開かれた国連気候変動首脳級会合で2020年までに温室効果ガス
を1990年比で25%削減する日本の中期目標を表明した。省エネの発達した日本ではCO2の25%削減の実現 が極めて困難であることは既に世界的に良く知られていることもあって、鳩山首相の非現実的なCO2削減宣言に対 し、国連ではほとんど注目されなかったようだ。常識的に考えれば鳩山首相の露骨な売名行為・自己宣伝であるこ とが容易に判断できるため、各国のマスコミも揃って無視したのではないだろうか。結果から言えば、CO2削減につ いて世界各国が冷徹な判断の基に行動していることを理解できていない鳩山首相は、CO2の25%削減を表明す ることによって首相自身が世界の称賛を得るものと勝手に思い込み、CO2排出に関して日本の社会全体に重い足 かせを嵌めてしまったのだ。このような的外れの鳩山首相の行動は、国民にとっては迷惑な話である。
そうは云っても、既に日本は大幅なCO2削減を世界に向かって宣言したことから、大型トラックにおけるCO2削
減の必要性も現実味を帯びてきたのである。一方、経済産業省の2006年5月の「新・国家エネルギー戦略」では「ほ ぼ100%を石油系燃料に依存する運輸部門はエネルギー需給構造の中で最も脆弱性が高いために石油依存から の脱却を図るべき」とし,「今後、2030年までに、運輸部門の石油依存度を80%程度とすることを目指す」とす政策 を発表しているのだ。このように現在の政府は大型トラックにおいてはCO2削減と脱石油と云う立派な方針・目標を 堂々と掲げているのである。しかしながらこれら方針・目標を完遂・実現できる見込みは少しでもあるのであろうか。 「大型トラックの「CO2削減」と「脱石油」の技術は、未だに不明か?」に詳述したように、筆者は政府が大型トラック のCO2削減と脱石油の政策を積極的に推進しているとはとても考えられないのである。
しかしながら、政府の大型トラック分野の管理を担当する官僚は、大型トラックのCO2削減と脱石油の実用可能
な技術案が全く未知であったとしても、既に発表されている政府のCO2削減や脱石油の目標に沿ったような大型ト ラックのCO2削減や脱石油の技術戦略を早急に策定する必要がある。そのために、学者・専門家に対して大型トラ ックのCO2削減や脱石油を実現する技術を提案することを既に要求しているかも知れない。その場合、大型トラッ クのCO2削減や脱石油の技術を見出せない学者・専門家は、現時点では研究中(or 調査中 or 検討中)と回答せ ざるを得ないだろう。これでは大型トラックのCO2削減や脱石油の技術戦略を発表できない。そのため、政府と学 者・専門家の間で大型トラックのCO2削減や脱石油の技術戦略ができないことの責任の押し付け合いが始まるの ではないだろうか。このような政府官僚と学者・専門家の責任回避の無駄な争いを防ぎ、わが国においてする大型 トラックのCO2削減や脱石油が実現できるようにする方法は、学者・専門家がDDFエンジンの「CO2削減」と「脱石 油」の有効性を率直に認め、DDFエンジンを搭載した大型トラックの開発促進を政府に提案する以外に無いと考え ている。
しかしながら、、多くの学者・専門家は、一致団結してDDFエンジンの技術を頑なに無視する協定のあるが如く、政
府官僚にCO2削減や脱石油の有効技術としてのDDFエンジンの評価・評論や提案が全く行われていないように思 われる。このようにエンジン学者・専門家はCO2削減や脱石油に有効なDDFエンジンの技術を黙殺しながら、他方 では「大きな挑戦課題」と称して「CO2削減」と「脱石油」の技術開発を大々的に実施すべき必要性を声高に訴えて いるのである。これは、大型トラックのCO2削減や脱石油が長年にわたる努力にもかかわらず未だに誰も開発に 成功していない超難関技術とする情報操作を行っているように感じられる。大型トラックのCO2削減や脱石油が超 難関技術との認識を広めることによって、これまで以上の研究予算を獲得し、学者・専門家の各々が従来から実施 している自ら研究テーマを継続して研究できるようにすることを狙った作為的な行為にも見えるのである。仮に「CO 2削減」と「脱石油」に有効であるDDFエンジンの技術があることを多くの人が知るところになれば、多くのエンジン学 者・専門家が現在実施中の自己の研究テーマへの注目度の低下や予算削減の憂き目に遭う可能性も否定できな い。そのよな事態になることを回避するために茶番劇を演じているように思えるが、これは筆者の偏った見方であろ うか。筆者が若かった頃、「エンジニアは真実を追究すべき」と尊敬すべき上司から技術屋としての理念を厳しくた たき込まれた経験がある。しかし、現在の日本の指導的立場の学者・専門家は、真実の追究と云うエンジニア本来 の理念を忘れてしまっているようで寂しい限りである。
わが国の学者・専門家が一致してDDFエンジンの技術を無視する行為は、DDF大型トラックの実用化が遅
れることになり、今後の都市間走行の大型トラック分野におけるCO2削減だけでなく、脱石油のエネルギー 利用システムの構築も遅延させてしまうことは明らかである。このように日本の政府・メーカ・大学・研究機関の 学者・専門家がDDF大型トラックを無視することによって生じる損失は、図り知れないものがある。いつになれば DDF大型トラックの技術が認知され、実用化に着手されるのであろうか。
ところで、前述の通り現在では原油の生産が需要の伸びを満たせなく、頭打ちとなる「石油ピーク」の時代に突入
しているといわれている。そのため、2010年2月22日現在、世界的な不況の中にあるにもかかわらず、ニューヨーク 商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米国産標準油種WTIの中心限月3月物は、1バレル=80ドル前後であ る。今後、インドや中国の発展による石油消費の増加や世界景気が回復した場合には、あっけなく原油価格が上 昇する可能性が高いと見る識者は多いようだ。テレビ東京の2010年2月14日の「日高義樹のワシントン・リポート」で は、日高氏は現時点で1バレル=100ドル以下の原油価格は、今後の景気が回復した時点では1バレル=200ドル 程度まで上昇すると予想されていた。そのような時代になった場合、必要量の軽油の入手が困難となる状況になる ことも十分に考えられ、大型トラックの運行に支障を来たすエネルギー危機が生じる恐れも危惧される。このような 事態の発生を事前に回避する最適な方法は、早い時期に燃料に天然ガスと軽油を併用するDDF大型トラックの実 用化を図り、広く普及させておくことである。遠い昔に退職した元技術屋の筆者は、将来の石油危機の到来によっ て生じる我が国のトラック貨物輸送分野での混乱防止や、CO2削減による地球温暖化防止の面で僅かでも貢献し たいとの思いから、無力ではあっても今後も地道に大型トラックのCO2削減と脱石油に有効なDDFエンジンの実用 化推進をアピールし続けて行きたいと思っている。
ところで、筆者のホームページで詳述しているように、天然ガスから合成のDMEとGTLは、トラック用燃料に不適で
あるにもかかわらず、未だに多額の政府予算を費やして大型トラックの燃料にDMEやGTLを導入する研究を推進 されているのである。そして、軽油よりもエネルギー効率が30%も劣るDMEを推奨する機械学会の疑問に詳述し ているように、DMEトラックに関して詐欺的とも云えそうなDMEを推奨する論文が堂々と発表されていることは、驚き である。このような活動によって、トラック用燃料にDMEやGTLを使用する研究開発に多くの国家予算を投入されて いる現状については早急に是正すべき考えているが、これは筆者の誤った見方であろうか。
11.最近、ボルボはDDF大型トラックを発売
さて、スウェーデンのボルボ・トラックスは、2011年5月31日に長距離輸送向けに大型DDFトラック(写真1参照)を
発売(出典:http://www.volvotrucks.com/trucks/global/en-gb/newsmedia/pressreleases/Pages/pressreleases. aspx?pubid=10743)した。その発表によると、エンジンは13リットル、最高出力は440HP(338kW)、最大トルクは 2300Nmである。天然ガス(LNG)の利用率は75%であり、エンジンの熱効率は、スパークプラグ式天然ガスエンジ ンに比べて、30〜40%高く、CO2排出量はディーゼルトラックに比べて10%削減することができるとのこと。また、 筆者がこれまで説明してきたように、走行中に天然ガス(LNG)を使い果たした場合には、軽油のみで走行すること も可能である。2011年には100台程度をオランダ、イギリス、スウェーデンで販売する予定で、8月から生産が開始さ れるとのことだ。今後、2年程度で、欧州の6〜8カ国で年間400台程度の販売が予定されているようだ。
因みに、ボルボ・トラックスが市販する大型DDFトラックは、天然ガスを給気管内に噴射する方式のDDFエンジン
である。このボルボ・トラックスの大型DDFトラックと同じ給気管内噴射式のDDFエンジンを搭載したトラックのエン ジン性能と排出ガス試験結果については、筆者は、2000年5月の自動車技術会の講演会で論文を発表した。その 論文は、自動車技術会学術講演会前刷集No.71-00(2000年5月) 「323 中型トラック用ECOS-DDF 天然 ガスエンジンの開発 」(20005001) である。このように、筆者は10年以上も前から、DDFトラックの有用性を訴 えてきた。そして、2008年12月9日にDDFトラックのこのページを追加し、大型DDFトラックの早期実用化の必要性を アピールしてきたつもりだ。しかしながら、これまで、日本の学者・専門家やトラックメーカからは筆者が推奨する大 型DDFトラックを冷たく無視されてきたのである。
その一方で、日本の学者・専門家は、これまで軽油ディーゼルよりも天然ガスエネルギー資源を30%も多く浪費す
る「スパークプラグ式天然ガスエンジンを搭載したトラック」や「天然ガスから合成されるDMEを燃料とするDMEトラ ック」を熱心の推奨されてきたのである。このように、「スパークプラグ式天然ガスエンジンを搭載したトラック」や「天 然ガスから合成されるDMEを燃料とするDMEトラック」のWell-to-Wheelの熱効率は、「軽油ディーゼルトラック」や 「DDFトラック」よりも30%程度も熱効率の劣る特性があることは周知の事実である。筆者のホームページ天然ガス から合成のDMEとGTLは、トラック用燃料に不適やDDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック で もそのことを詳述している。また、前述のボルボのホームページにおいても、スパークプラグ式天然ガスエンジンを 搭載したトラックは、同じ天然ガスを燃料としているDDFエンジン搭載のトラックよりも30%以上も熱効率が劣ること が記載されている。
このように、「スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型トラック」や「DMEトラック」のWell-to-Wheelの熱効率が
「軽油ディーゼルトラック」や「DDFトラック」よりも30%程度も劣っているにもかかわらず、日本の一部の学者・専門 家は、軽油よりもエネルギー効率が30%も劣るDMEを推奨する機械学会の疑問のページで説明しているように、 「スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型トラック」や「DMEトラック」が将来の「脱石油」を実現する先進的なトラ ックとして賞賛し、これまで盛んに推奨していたのである。
ところが、ボルボは、2011年5月31日にトラックメーカとしては世界で始めて長距離輸送向けの大型DDFトラックの
発売を発表し、8月から大型DDFトラックの市販を開始したのだ。このことは、DDFトラックを使用して貨物輸送を行 った場合には、「スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型トラック」や「DMEトラック」を使用して貨物輸送を行った 場合に比較して、天然ガスのエネルギー資源を30%程度も有効に利用できることがボルボによって現実化されたの である。そして、DDFトラックよりWell-to-Wheelの熱効率が30%程度も劣る「スパークプラグ式天然ガスエンジンの 大型トラック」や「DMEトラック」を推奨することは、「脱石油」の観点からも遇の骨頂であることを、多くの人に知らし めることになったのである。
このボルボの大型DDFトラックの発売情報を知った日本のディーゼル関係の学者・専門家は、既にさぞかし驚か
れたのではないだろうか。これによって、日本の学者・専門家は、大型DDFトラックを無視する心の拠りどころを失 い、戸惑いを感じているのではないかと推察される。「スパークプラグ式天然ガスエンジンの大型トラック」や「DME トラック」を熱心に推奨している学者・専門家は、ボルボが天然ガスを燃料とするDDFトラックの市販を開始したこと によって、数年前の金融危機のリーマンショックならぬ「ボルボ ショック」とも呼べそうな衝撃を受けたものと推察さ れる。果たして、日本のディーゼル関係の学者・専門家やトラックメーカは、これからも頑なにDDFトラックを無視し 続ける方針を固持されるのであろうか。それとも、これまでのDDFトラックを黙殺する方針を大転換し、以前のこと を完全に忘れ去ったかのように、何食わぬ顔で積極的にDDFトラックを賞賛し始めるのであろうか。
もっとも、これまで天然ガスエネルギー資源を浪費する「スパークプラグ式天然ガスエンジンを搭載したトラック」や
「天然ガスから合成されるDMEを燃料とするDMEトラック」を熱心の推奨されてきた学者・専門家と云えども、常識 のある人達であれば、天然ガスエネルギー資源を有効に活用できる大型DDFトラックの市販が開始された現在で は、これまでのように「スパークプラグ式天然ガスエンジンのトラック」や「DMEトラック」を開発促進を訴える学者・ 専門家は、これからは音沙汰も無くひっそりと姿を消して行くのではないかと、筆者には思えるが、如何なものであ ろうか。
また、スウェーデンのボルボ・トラックスが長距離輸送向けの大型DDFトラックを発売したことから、昔から欧米技
術を崇拝して止まない日本の学者・専門家は、即刻、大型DDFトラックの信奉者に宗旨替えする可能性が考えられ る。それは、日本人には、「バスに乗り遅れるな!」と直ぐに脅迫観念に捉われ易い人が多いように思われるから だ。また、技術内容の優劣を自らの思考によって合理性を追求して判断するのではなく、付和雷同して意見の主張 をするような学者・専門家が数多く存在することも、その原因と思えるためだ。
そのため、近い将来、日本のディーゼル関係の学者・専門家やトラックメーカは、「積極的に大型DDFトラックを賞
賛し始める」ことに、大きく舵を切る可能性もありそうだ。もっとも、その場合の言い草として、「DDFエンジンの有用 性は昔から十分に承知していたが、これまではその特性が生かされる時代ではかった。しかし、最近ではCO2削 減と脱石油が重要視されるようになったので、DDF大型トラックの特性を十二分に発揮できる時代が到来した」と 白々しく主張を始めるように思えるのである。万が一でも、仮にそうなった場合には、わが国の大型トラックの分野 において、大型DDFトラックによる「CO2削減」と「脱石油」が推進されることになり、大いに好ましいことではないか と思っている。
12.DDFトラック技術の「黙殺から実用化」に方針変更したいすゞ自動車の最近の言動
12−1.2000年5月に筆者が発表したDDFエンジンを搭載したDDFトラックに関する論文
筆者は、2000年5月に開催の日本自動車技術会春季大会において、いすゞフォワード(積載量4トンのトラック)に
搭載した吸気ポート噴射式DDFエンジンの出力性能と排出ガス試験の結果をまとめた論文を発表した。その 論文の概要を以下の表3に示す。
以上のように、約15年も昔の2000年5月に開催の日本自動車技術会春季大会において、いすゞフォワードに搭載
した吸気ポート噴射式DDFエンジンを搭載したのトラック(積載量4トン)の出力性能と排出ガスの試験結果をまとめ た論文を筆者が発表した。このDDFトラックの論文発表の結果、トラックメーカのエンジン関係の専門家・技術者 は、約15年程度も以前から、軽油を燃焼室内にパイロット噴射して天然ガスを主燃料にして運転するDDFエンジン を搭載したDDFトラックが以下の@〜Cの優れた特徴を備えた脱石油に最適な将来型のトラックであるとの技術情 報を得ていると考えられる。
@ DDFトラックは、ディーゼルと同等の燃料充填後の走行距離
A 天然ガス専焼トラックではディーゼルトラックよりも30%も熱効率の悪化を招くが、DDFトラックではディー
ゼルトラックに近い熱効率での運行が可能
(天然ガス専焼トラックはディーゼルトラックよりも30%も熱効率が悪化する証拠については、天然ガス専焼のCNG大型トラックは、
重量車燃費基準に不適合の欠陥トラックのページの1〜2項に詳述している。興味のある方は御覧いただきたい。)
B DDFトラックのCO2排出は、ディーゼルトラックよりも15%程度の削減が可能
C DDFトラックのPM排出は、ディーゼルトラックの1/3程度までの削減が可能
ところで、読者の殆どの人達は、これまでも度々、「エコトラック」と云う言葉を耳にし、また、資料・文献等で目にし
たことがある筈だ。このエコトラックとは、エコロジーなトラックと云う意味である。昨今の地球上の環境破壊や 公害問題を解決に有効なトラックに付与される名称である。即ち、エコトラックとは、「エコロジーなトラック」 の略称であり、「燃料エネルギー資源の有効活用(=高い熱効率で運行・走行可能)」と「大気環境破壊の抑 制(=優れた排出ガス性能)」の両方、または片方がディーゼルトラックよりも優れた性能を実現したトラック のことである。そして、「燃料エネルギー資源の有効活用(=高い熱効率で運行・走行可能)」と「大気環境破壊の 抑制(=優れた排出ガス性能)」の何れか一方の性能がディーゼルトラックよりも優れた性能を発揮するトラックであ っても、他の片一方の性能がディーゼルトラックよりも劣ったトラックは、「エコロジーなトラック」、即ち「エコトラック」 とは呼べない代物である。この場合には、正しくは「欠陥エコトラック」との呼称が適切ではないだろうか。
すなわち、天然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)は、NOxとPMがディーゼルより少ない優れた排出ガ
ス性能を持つが、ディーゼルトラックよりも30%前後も熱効率が劣るため、「エコトラック」としては失格である ことが誰の目にも明らかなことだ。それにもかかわらず、天然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)は、1998年 頃に国内で市販が本格的に開始された1998年頃から、「エコトラック」に分類され、将来型のトラックとして政府の補 助金付きで販売されてきたことも、歴然たる事実である。
一方、1998年頃に国内で天然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)の市販が本格的に開始された当初
から、天然ガス専焼トラックがディーゼルトラックよりも30%前後も熱効率の劣ると云う事実は、いすゞ自動 車等のトラックメーカが社内の走行燃費試験で当然のことながら確認できたいた筈である。しかし、いすゞ自 動車等のトラックメーカは、この事実を社外秘として固く封印し、天然ガス専焼トラックがディーゼルトラックよ りもNOxとPM(=ディーゼル粒子状物質)が低いことを理由にして「エコトラック」と称し、強引に販売し続け てきたようだ。
このように、1998年頃に国内で天然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)の市販が本格的に開始された当初か
ら、ほとんどの日本の学者・専門家・技術者がディーゼルトラックよりも30%前後も熱効率の劣る天然ガス専焼トラ ックを「エコトラック」に分類していた事実は、過去の文献・記事・論文を見れば一目瞭然である。そして、ほとんどの 日本の学者・専門家・技術者は、これまではディーゼルトラックよりも30%前後も熱効率の劣る天然ガス専焼トラッ クを無理やり「エコトラック」とする誤った呼称を与えてきたのである。勿論、学術的な領域においても、天然ガス専 焼トラックを無理やり「エコトラック」と賞賛する詐欺とも言える記事・論文を積極的に発表してきたのが日本の「天然 ガス専焼トラック」の実態のようである。この状況を見ると、日本には天然ガス専焼トラックがディーゼルトラック よりも30%前後も熱効率の劣る事実を理解していない「馬鹿・間抜け」な学者・専門家・技術者か、若しくは 天然ガス専焼トラックが「エコトラック」であるとの詐欺的な記事・論文を平気で発表する「人としての良心」を 持たない学者・専門家・技術者が大部分を占めているように思えるのである。この状況を見ると、天然ガス自 動車の分野では、日本には真面目で有能な学者・専門家・技術者が皆無のように感じるが、如何なものであろう か。
そのため、これまでの天然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)に関する日本の学者・専門家・技術者の記
事・論文・主張の発表のほとんどが出鱈目(=デタラメ)な内容であったことは、当然の結果のように思える。このよ うに、日本の学者・専門家・技術者が一致団結し、長年に亘って出鱈目(=デタラメ)、若しくは詐欺的と判断 される記事・論文・主張を発表し続けた結果、ディーゼルトラックよりも30%前後も熱効率の劣る天然ガス専 焼トラック(=積載量2トン以上)の販売での政府補助金の付与による税金の「無駄遣い」の垂れ流しが20 年近くも続いてしまったことである。このようなエコトラック失格の然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)に20 年近く亘って多額の政府補助金を支給し続けた国土交通省の官僚は、「オレオレ詐欺・振り込め詐欺」に騙された 惚け老人に匹敵する愚行のように思うが、如何なものであろうか。そして、このような税金の「無駄遣い」は、納税の 義務を負わされた国民の立場から言わせて貰えば、極めて残念なことである。
このように、日本の学者・専門家・技術者による天然ガス専焼トラック(=積載量2トン以上)に関する出鱈
目(=デタラメ)な記事・論文・主張の発表と、2000年5月に論文発表したの筆者のディーゼルトラックに近い 熱効率での運行が可能なDDFトラックの技術の存在を結束して無視・黙殺してきた結果、2000年5月発表 の筆者のDDFトラックの論文発表の以降も、いすゞ自動車等のトラックメーカは、政府の補助金を受けてい ても世間から何の批判も受けることなく、ディーゼルトラックよりも30%前後も熱効率の悪い積載量2トン以 上の天然ガス専焼トラックを「エコトラック」として2015年6月現在に到るまで長々と、販売し続けることができ たものと推測されれる。
ところで、GMは1997年に電気自動車「EV1」を生産したが、この「EV1」の計画を2003年末に中止した例がある。そ
の際の「EV1」計画中止の理由は、ガソリン販売量の減少を嫌った石油業界の強力な圧力との噂を聞いたことがあ る。そのようなことが仮に事実であれば、日本の大学・研究機関の学者・専門家やトラックメーカの専門家・技 術者がディーゼルトラックに近い熱効率での運行が可能なDDFトラックの技術の存在を結束して無視・黙殺 したのは、軽油販売量の減少を嫌った石油業界(=石油連盟等)が強力なDDFトラックの排斥活動(=潤沢 な研究費等を供与することによる日本の学者・専門家にDDFトラックの無視・黙殺を徹底させる懐柔活動) を積極的に行った可能性も考えられる。この石油業界(=石油連盟等)のDDFトラックの排斥活動については、 確たる証拠が無く、単なる筆者の推測に過ぎない。
そうは言っても、日本の学者・専門家・技術者は、ディーゼルトラックに近い熱効率での運行が可能であり、
且つ、脱石油(=脱軽油)に有効なDDFトラック(=積載量2トン以上)の新技術を、筆者による2000年5月 のDDFトラックの論文発表後も10年以上に亘り、完全に無視・黙殺し続けた事実が歴然と存在としている。 そして、日本の学者・専門家・技術者がDDFトラック(=積載量2トン以上)の実用化の必要性を認めた記 事・論文・主張を発表し始めたのは、つい最近(=2012〜2013年頃)になってからの事である。
因みに、経済産業省(エネルギー庁)は、2002年6月施行のエネルギー政策基本法(平成十四年六月十四日法律
第七十一号)を制定した。その第七条では、「事業者は、エネルギーの効率的な利用に努める責務を有す る。」 と明記されている。つまり、エネルギー政策基本法は、事業者であるいすゞ自動車等のトラックメーカに対し、 市販するトラックにおいてもエネルギーの効率的な利用に努める責務を負わせている。ところが、いすゞ自動車等 のトラックメーカは、エネルギー政策基本法が施行された2002年6月14日以降も、堂々とディーゼルトラック よりも30%前後も熱効率の劣る天然ガス専焼トラックを「エコトラック」と称して市販し続けたのである。このこ とは、いすゞ自動車等のトラックメーカが2002年6月14日に施行されたエネルギー政策基本法に違反した反社会的 な経済活動を長年にわたって実施してきた立派な証拠と見ることも可能と考えられる。
因みに、上記の表4に示した通り、2000年5月開催の日本自動車技術会春季大会で発表した筆者の「ディーゼル
トラックに近い熱効率での運行が可能なDDFトラックの技術」の論文により、いすゞ自動車等のトラックメーカは、エ ネルギー政策基本法の施行された2002年6月14日の時点では、天然ガスを主燃料とする燃費(=熱効率)の良好 なDDFトラックの技術の存在を既に承知・熟知していた筈である。それにもかかわらず、いすゞ自動車等のトラッ クメーカは、この燃費(=熱効率)の良好な天然ガスを主燃料とするDDFトラックの技術を無視してディーゼ ルトラックよりも30%前後も熱効率の劣る天然ガス専焼トラックの市販を続けてきたことは、2002年6月14日 以降も継続してエネルギー政策基本法の違反の確信犯と見ることも可能ではないだろうか。何はともあれ、 いすゞ自動車等のトラックメーカが十数年の長きにわたって、ディーゼルトラックと同等の優れたエネルギー効率で 走行・運行が可能なDDFトラックの技術を頑なに無視・黙殺してきたことは、筆者には何とも理解し難いことである。
以上のように、いすゞ自動車等のトラックメーカは、エネルギー政策基本法が施行されて「エネルギーの効率的な
利用に努める責務」が課された状況であっても、DDFトラックの技術を無視・黙殺する手段・手法を用いて、ディー ゼルトラックよりも30%前後も熱効率の劣る(=燃料エネルギー資源を浪費する)天然ガス専焼トラックをトラック貨 物輸送分野の脱石油のための極めて有効な手段であるとの虚偽の説明を繰り返すことにより、長年にわたって政 府の補助金付きで天然ガス専焼トラックを販売することに成功したのである。このことは、これまでの状況をを見れ ば、歴然たる事実である。
このように、エネルギー政策基本法に違反した天然ガス専焼トラックの購入者に国土交通省が補助金を拠出され
てきたことは、経済産業省(エネルギー庁)と国土交通省の施策に矛盾があると思えるが、この筆者の見方は、誤っ ているのであろうか。つまり、経済産業省(エネルギー庁)がエネルギー政策基本法(平成十四年六月十四日 法律第七十一号)によっていすゞ自動車等のトラックメーカにエネルギーの効率的な利用に努める責務を負 わせる施策を実施ししている状況において、国土交通省が補助金の交付までして天然ガス専焼トラックの普 及による燃料エネルギー資源を浪費を図る施策を行っていることは、経済産業省と国土交通省が間逆の施 策を行っていることになると筆者には思えて仕方がないのである。このようなことは、政府の各省庁間では有っ てはならない施策と考えられるが、これは筆者だけの誤った見方であろうか。
12−2.自動車技術誌2015年5月号に「いすゞ自動車の関係者」がDDFトラックを推奨する記事を発表
そもそも、トラック貨物輸送の分野において、燃料エネルギー資源の浪費する天然ガス専焼トラックを「エコトラッ
ク」と偽って?政府の補助金を受けながら1998年前後に販売を開始したいすゞ自動車は、2000年5月の時点で筆者 の発表したDDFトラックの論文によってディーゼルトラックに近い熱効率での運行が可能なDDFトラックの技術の存 在を十分に知っていた筈である。それにもかかわらす、これまでいすゞ自動車がディーゼルトラックよりも30%前後 も熱効率の悪い積載量2トン以上の天然ガス専焼エンジンを搭載した天然ガストラックを現在(=2015年7月の時 点)まで延々と市販し続けてきたことは、歴然たる事実である。そのような状況において、今般、自動車技術誌 2015年5月号(Vol.69、N0.5、2015)に掲載された「天然ガス自動車の最新動向」(著者:)の記事では、突 然、いすゞエンジニアリング梶@原 裕一 氏が「DDFトラックが脱石油に最適な将来型のトラック」との驚き の主張を行ったのである。その記事の内容について、筆者の疑問点を以下の表5にまとめたので御覧いただきた い。
(注:いすゞエンジニアリング鰍ヘ、いすゞ自動車鰍フ藤沢工場内にあるいすゞ自動車の設計・国内認証・図面管理等を担う100%子会社)
12−3.我が国における天然ガストラックの現状と将来動向の予測
浅学菲才のポンコツ元技術屋の筆者が纏めた我が国における天然ガストラックの現状と将来動向の予測を、以
下の表6にまとめたので、御覧いただきたい。
なお、本ホームページの12項の全体に亘る記載内容については多くの推測も含まれているため、一部には筆者
の事実誤認があるかも知れない。そこで、大学・研究機関の学者・専門家、および、いすゞ自動車等のトラックメーカ の専門家・技術者、または、いすゞエンジニアリング梶@原 裕一 氏の諸氏が本ページを閲覧された際に、明らか に誤りと気付かれた記述については、その旨を末尾の筆者のEメール宛てに御連絡をいただきたい。それを弊方で 検討した結果、誤った記述であることが納得できた場合には、即刻に訂正したいと考えている。
13.日本でも早急な実用化が望まれる大型DDFトラック
前述のように、ボルボは、トラックメーカとしては世界で始めて大型DDFトラックの市販を開始したが、残念なこと
に、このボルボの大型DDFトラック・トラクタに搭載されたエンジンは、旧式の技術とも云える吸気管内噴射式のDD Fエンジンである。一方、この旧式の吸気管内噴射式DDFエンジンの性能を更に向上できる新しい技術が既に世 の中に存在しており、それが天然ガスをシリンダ内に直接噴射する直噴式DDFエンジンである。この直噴式DDFエ ンジンは、吸気管内噴射式DDFエンジンに比べ、DDFエンジンにとって重要な要素である「排出ガス性能の向上」 や「天然ガス(LNG、CNG)の使用割合を向上」できることが特徴である。
したがって、仮に、日本で大型DDFトラックが開発されるのであれば、ボルボの吸気管内噴射式のDDFエ
ンジンを搭載した大型DDFトラックよりも優れた性能を持つ直噴式DDFエンジンを搭載した大型DDFトラッ ク・トラクタを是非とも早期に実用化して欲しいところだ。そして、この大型DDFトラック・トラクタには、筆者が提 案する直噴式DDFエンジン(特許公開2008-51121)の技術を採用して欲しいものだ。その場合には、大型DDFトラッ ク・トラクタは、直噴式DDFエンジンを搭載しているにもかかわらず、「DDF走行」と「ディーゼル走行」の切り替えが 可能なデュアル運転モードの機能・効果により、日本全国の全ての都道府県に亘る都市間の長距離貨物輸送が可 能となるのである。これによって、直噴式DDFエンジンを搭載した大型DDFトラック・トラクタは、従来の大型ディー ゼルトラックと同等の長距離貨物輸送が実現できるようになるのである。 何はともあれ、実用性のある大型DDFト ラック・トラクタが早期に実現されるためには、わが国のディーゼル関係の学者・専門家やトラックメーカの今後の健 闘が期待されるところである。
上記本文中で誤り等がございましたら、メール等にてご指摘下さいませ。また、疑問点、ご質問、御感想等、どの
ような事柄でも結構です。閑居人宛てにメールをお送りいただければ、出来る範囲で対応させていただきます。 ![]()
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