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日本の低炭素と脱石油に無効な技術を研究する交通安全環境研究所

【(独)交通安全環境研究所の「次世代低公害車開発・実用化促進事業(第3期)平成23年度〜平成26年度」の研究内容についての問題点】

最終更新日:2015年1月13日





1.交通安全環境研究所は、大型トラックでのCO2削減の効果がの少ない研究を実施

 2011年11月8〜9日に(独)交通安全環境研究所の「平成23年度 交通安全環境研究所フォーラム2011」が開催され
た。その際に配布された「講演概要」の中の表1に示した「1.新たな次世代大型低公車プロジェクトの取り組み」には、
(独)交通安全環境研究所は、「運輸部門のうち多くのCO2を排出する大型車(=大型トラック・トラクタ)分野において、
低炭素化に資する革新的技術の早期実現を図るため、自動車メーカと協働し、技術開発を促進しつつ必要な基準の
整備を行う」ことが明記されている。

 そして、(独)交通安全環境研究所が平成23年度〜平成26年度の期間で実施する、「次世代低害車開発・実用化促
進事業(第3期)」の研究開発として、表1に示した通り、以下の内容の研究が実施されているとのことである。

表1 交通安全環境研究所の「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」(平成23年度〜平成26年度)
項 目
内 容
講演会の名称

および

その主宰団体



論文の題目
「1.新たな次世代大型低公車プロジェクトの取り組み」
著 者
(独)交通安全環境研究所 環境研究領域

後藤 雄一、石井 素、河合英直、鈴木央一、川野大輔、新国哲也、奥井伸宣
本論文の
記載内容

・ 「運輸部門のうち多くのCO2を排出する大型車(=大型トラック・トラクタ)分野において、日本の低炭素化に資する
ために、平成23年度〜平成26年度に(独)交通安全環境研究所が実施する「次世代低公害車開発・実用化促進
事業の研究開発の内容は、以下の「図1 次世代プロジェクト(第3期)の概要」の通りである。


(出典:http://www.ntsel.go.jp/forum/forum2011.html

 したがって、(独)交通安全環境研究所は、平成23年度〜平成26年度の期間で「次世代低害車開発・実用化促進
事業(第3期)」の研究開発として、環境研究領域の後藤 雄一とそのグループの諸氏が実施している以下の4項目
の研究開発によって、日本における運輸部門の大型車(=大型トラック・トラクタ)分野における低炭素化(=CO2
削減)の実現を図ることを目標としているとのことだ。

  @ 高効率ハイブリッドトラック
  A 電気・プラグインハイブリッドトラック(小・中型)
  B 高性能電動路線バス
  C 次世代バイオディーゼルエンジン


 さて、日本の運輸部門の大型車(=大型トラック・トラクタ)分野における低炭素化(=CO2削減)を図るため、交通安
全環境研究所は、平成23年度〜平成26年度の期間で「高効率ハイブリッドトラック」、「電気・プラグインハイブリッドトラ
ック(小・中型)」、「高性能電動路線バス」および「次世代バイオディーゼルエンジン」の4項目の技術開を実施中とのこ
とである。(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一とそのグループの諸氏が実施中の「次世代低害車開発・実用化促
進事業(第3期)」における4項目の研究開発により、大型車(=大型トラック・トラクタ)分野における低炭素化(=CO2
削減)を実現すると主張されているが、筆者には疑問に思えて仕方がない。これについて、この筆者の胸に引っかかっ
て消えない疑問点を以下の表2にまとめた。

表2 「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」(平成23年度〜平成26年度)の研究における疑問点
項 目
「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」(平成23〜26年度)の研究の疑問点
高効率
ハイブリッドトラック
 最近のデフレ経済が深刻な状況を反映し、荷主は運送会社に対し、輸送費の削減を厳しく要求しているよう
だ。そこで都市間の長距離貨物を輸送する運送会社は、輸送貨物のコスト低減を図る必要があるため、トラック
の一台当たりの積載貨物をできるだけ多くする必要がある。ところが、わが国では、公道を自由に走行できる
単車の大型トラックは、GVW(車両総重量)が25トン以下とする規定が設けられている。そこで、運送会社は、
GVW(車両総重量)が25トンの大型トラックの保有台数の割合を増やし、都市間の長距離貨物を輸送場合には
GVW(車両総重量)が25トンの大型トラックで運送する体制を整えているようだ。その結果、下記に示したように、
最近ではGVW(車両総重量)が24トン超25トン以下の大型トラックの増加が著しいようだ。



 このように、現在のわが国におけるGVW(車両総重量)が25トン以下とする大型トラックの保安基準の制約
の下において、運送会社は輸送コスト削減のために一台当たりの積載貨物をできるだけ多くする体制の構築
に必至で努力しているのである。

 一方、大型トラック(GVWが25トン)をハイブリッド化した場合には、現状のGVW(車両総重量)が25トン以下と
する大型トラックの保安基準の制約の下では、ハイブリッド化による車両本体の重量増加を招くため、車両
本体の重量増加重量と等しい貨物積載の重量を減少せざるを得ない。そのため、ハイブリッド大型トラック
(GVWが25トン)が市販されたとしても、ハイブリッド大型トラック(GVWが25トン)の最大積載量は、現行の大型
トラック(GVW25トン)に比べて一台当たりの積載量を減らしたものとなる。このような積載量の少ないハイブ
リッド大型トラック(GVWが25トン)が仮に市販されたとしても、このハイブリッド大型トラック(GVWが25トン)を
輸送貨物に使用する運送会社は、皆無と予想される。

 なぜなら、ハイブリッド化による車両本体の重量増加した場合には、このハイブリッド大型トラック(GVW
25トン)における車両本体の重量増加による貨物積載量の減少割合は、その減少割合で貨物輸送のコスト
増加を引き起こしてしまうことになる。そのため、トラック運送業者は、高性能化による多少の燃費向上が得ら
れる場合でも、従来よりも車両本体の重量増加した大型トラック(GVW25トン)を厳しく嫌悪しているのが現状
だ。したがって、トラック運送業者が車両本体の重量増加した大型トラック(GVW25トン)を購入し、貨物輸送
の業務に使用する可能性は殆ど無いものと考えられる。

 そのため、トラック運送業者は、先進の技術を駆使した高性能な大型トラック(GVW25トン)が公表・発表され
ようとも、積載量が減少した大型トラック(GVW25トン)については、実際の貨物輸送に使用できないため、
何の興味も示さないのが普通である。トラックメーカは、そのことを熟知しているため、大型ハイブリッド
トラック(GVW25トン)を開発して10%程度の燃費向上が得られたとの最近の三菱ふそうの発表では、この
大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)におけるハイブリッド化による車両本体の重量増加は、公表していない
ようである。その理由は、ハイブリッド化による車両本体の重量増加よって、積載量の減少によるトラック運送
業者から「実用性に劣る!」との痛烈な批判を受け、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)での10%の燃費
向上の宣伝効果を毀損してしまうと、三菱ふそうが危惧したためではないかと推察される。

 既に実用化されている中・小型ハイブリッドトラックの例から類推すると、大型ハイブリッドトラック(GVW
25トン)では、長い下り坂を含む制動(ブレーキ)時の走行エネルギを電気エネルギに変換して貯蔵し、
加速時などに使うことで、十分に燃費を向上できるハイブリッドトラック化を図るためには、排気量10L以上で
400馬力程度のエンジンをアシストするためのかなり大きなモータ(100kW以上)が必要である。そして、その
電気エネルギを貯蔵しておくための十分な容量の蓄電池が必要となる。通常のGVW25トンの大型トラック
では15トン程度の貨物積載が可能であるが、ハイブリッドトラック化のための大出力のモータと大容量の
大型電池による重量増加が4〜5トン程度となると予想される。そのため、従来のディーゼル大型トラックの
積載量が15トン程度であるのに対し、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)の積載量は10〜11トン程度に
激減してしまうことになる。
 
 仮に優れた技術力を備えたトラックメーカが技術の粋を集めて大型トラックをハイブリッド化し、このハイブ
リッド化による車両本体の重量を通常の大型トラック(GVW25トン)より2トン程度の増加の抑えた高性能大型
ハイブリッドトラック(GVW25トン)を開発できたとした場合でも、通常の大型トラック(GVW25トン)の積載量が
15トンであるのに対し、この高性能大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)では、貨物の積載量が13トンに減少
してしまう欠点を持つことになる。この場合、この高性能大型ハイブリッドトラックの積載量は、通常の大型
トラックよりも13%も減少することになる。その結果、高性能大型ハイブリッドトラックでは、貨物輸送のコスト
が13%の増加となる不利益を被ってしまうことになる。ここで、高性能大型ハイブリッドトラックの燃費が仮に
10%程度の改善が得られたとしても、運転手の人件費を含む貨物輸送のコスト全体の中の一部である燃料
費の10%程度が削減できただけである。そのため、高性能大型ハイブリッドトラックにおける燃費改善は、
高性能大型ハイブリッドトラックにおける貨物輸送のコスト悪化の13%の中の数%が良化できるに過ぎ
ない。

 そして、高性能大型ハイブリッドトラックによって貨物を輸送した場合、仮に高性能大型ハイブリッドトラック
の輸送による輸送コストの増加分を荷主に請求したとしても、運送会社の都合で高性能大型ハイブリッド
トラックによる貨物輸送のコスト増加分を荷主が支払いに応じないことは間違いないと予測される。その
ため、高性能大型ハイブリッドトラックによる貨物輸送によるコスト増加分は、運送会社が負担することになる
と予想される。したがって、運送会社が高性能大型ハイブリッドトラックを導入した場合には、経営悪化の
元凶になることは、誰でも容易に予想されることである。そのため、仮に高性能大型ハイブリッドトラック
(GVW25トン)が開発できたとしても、積載量の減少を伴う高性能大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)は、
通常の大型トラック(GVW25トン)に比べて貨物輸送のコスト高の欠陥が存在するため、将来的な普及が全く
見込めない大型トラックと考えられる。

 このように、トラック運送業者が、将来、仮に通常の大型トラック(GVW25トン)よりも貨物積載量の
減量を確実に余儀なくされる大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)を導入した場合には、必然的に
貨物輸送のコスト増加を招くため、運送会社の経営に悪影響を及ぼすことは明白である。そのため、
殆どのトラック運送業者は、積載量の劣る大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)を実際の貨物輸送
に使用することが無いと考えられる。したがって、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の
後藤 雄一氏とそのグループの諸氏が、高効率の大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)の開発に成功した
としても、積載量の減少の欠陥を持つめに、トラック運送業者が実際の貨物輸送に使用しないものと考え
られる。そのため、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏
の狙いとする高効率大型ハイブリッドトラックの普及による低炭素社会(=低CO2社会)の実現を
図るとする目標は、実現することが不可能と思えるのだ。したがって、(独)交通安全環境研究所に
おける高効率ハイブリッドトラックの研究は、試験研究費の無駄使いのように思えるのである

 それとも、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、ハイブ
リッド化による車両本体の重量増加が皆無であり、通常の大型トラック(GVW25トン)と同等の積載量の大型
ハイブリッドトラック(GVW25トン)が実際に開発できるとの技術者・研究者らしからぬ非常識な考えを持たれ
ているのであろうか。そのようなことが仮に事実であれば、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の
後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、技術者・研究者としては失格のように思うが、如何なものであ
ろうか。
電気・プラグイン
ハイブリッドトラック
(小・中型)
 ガソリン乗用車の実走行において使用されるエンジン運転は、下図に示した通り、エンジン燃費の劣る低速回転
の低負荷の領域が多くしようされることが特徴である。



(出典:http://www.heat2power.net/downloads/EngineExpo2008/Heat2power%20-%20The%20potential%20of%
20CO2%20emission%20reduction%20with%20a%20downsized%20ICE%20and%20WHR%20system.pdf

これに対し、トラックの走行において使用されるエンジン運転は、下図に示した通り、ガソリン乗用車よりも
高速回転の高負荷の領域が多い。特に、積載量2トンの小型トラックの宅配便の実走行では、エンジン燃費
の良いエンジンの中負荷〜交負荷を使用されることが多いのである。



 このように、都市内の貨物集配等に多く使用される積載量2トン程度の小型トラックは、エンジン燃費の
良いエンジンの中負荷〜交負荷を多く使用されるが、ガソリン乗用車の実走行において使用されるエンジン
運転は、エンジン燃費の劣る低速回転の低負荷の領域が多く使用される。このように、小型トラックとガソ
リン乗用車は、実走行におけるエンジン運転の使用領域は、全く異なっている。

  ガソリン乗用車の実走行では、エンジン燃費の劣る低速回転の低負荷の領域が多く使用されることを改善
するために採用されたのが電動モータをアシストの動力源に用いたのがガソリンハイブリッド乗用車である。
これは低負荷走行時にはガソリンエンジンを停止してエンジンの熱効率の良い高負荷運転でバッテリーの
蓄電した電気で電動モータを駆動して走行させることにより乗用車の走行燃費を大幅に改善できるシステム
である。したがって、ガソリン乗用車では、ハイブリッド化によって燃費が2倍以上に向上できる効果が得ら
れる。

 しかし、市内の貨物集配等に多く使用される積載量2トン程度の小型トラックは、エンジン燃費の良いエンジン
の中負荷〜交負荷を多く使用されるため、乗用車と同様のハイブリッドシステムを小型トラックに採用しても
大きな燃費の改善が得られない。小型トラックにハイブリッドシステムを採用した場合には、制動エネルギー
の一部がバッテリーの蓄電されて電動モータのよる走行をアシストすることによって僅かに走行燃費の改善
が得られるだけである。したがって、積載量2トン程度の小型ハイブリッドトラックトラックは、通常の小型
トラックに対して10%程度の燃費改善が得られるだけである。これについては、小型ハイブリッド トラックはハイブ
リッド乗用車のような燃費改善が困難のページに詳述しているので、興味のある方は、御覧いただきたい。

 このように、積載量2トン程度の小型ハイブリッドトラックトラックは、通常の小型トラックに対して10%程度の
僅かな燃費改善しか得られないのである。このような、小型ハイブリッドトラックと異なり、ガソリン乗用車の
ハイブリッド自動車の場合には、ハイブリッド化によって燃費が2倍以上までの大幅な向上できる効果が得ら
れるのである。このように、ガソリン乗用車では、比較対象となる普通のガソリン乗用車での燃費(=熱効
率)が劣るため、ハイブリッド化によって燃費が大幅に向上できるのである。そのため、ディーゼルエンジン
よりも燃費の劣るガソリンエンジンを廃止して完全にバッテリーに蓄電した電気エネルギーによって電動
モータだけで走行するようにした電気自動車の乗用車では、普通のガソリン乗用車に比較して飛躍的に
燃費(=熱効率)の向上が可能となる。そのため、三菱自動車や日産自動車は電気自動車の乗用車の市販
を開始したのである。ただし、電気自動車では、バッテリー容量の増大に制限があるために走行距離が
少ない欠点があるため、この欠点を解消するための手段が電気・プラグインハイブリッド乗用車である。現在、
多くの乗用車メーカがこの電気・プラグインハイブリッド乗用車を開発中であり、近い将来、電気・プラグイン
ハイブリッド乗用車の数多くの車種が市販されるものと考えられる。

 以上のように、ハイブリッド乗用車はガソリン乗用車の2倍程度の走行燃費(=熱効率)の向上が可能で
あるが、電気・プラグインハイブリッド乗用車ではハイブリッド乗用車よりも更に飛躍的に向上走行燃費
(=熱効率)が向上できるのである。一方、小型ハイブリッドトラックは通常の小型トラックの10%程度の走行
燃費(=熱効率)の改善しか得られていないのが現状である。そのため、現状では小型トラックの総販売
数に占める小型ハイブリッドトラックの販売台数は、1%程度の極めて低い割合である。そして、現在の
ところ、小型ハイブリッドトラックの販売の比率は、1%程度から増加する傾向は見られないようだ。その
ため、小型トラックを購入するトラックユーザは、「物珍しさ」や「エコロジーに取り組む姿勢を対外的に宣伝」
したいがためのように思えるのである。そして、実用上の燃費向上のユーザメリットを享受することを目的に、
小型ハイブリッドトラックを購入しているのでは無いと推察される。このように、小型ハイブリッドトラックが通常
の小型トラックの走行燃費(=熱効率)に比べて僅かな燃費改善しか得られていないにもかかわらず、
(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、電気・プラグイン小型
ハイブリッドトラックの研究を実施されているようだ。果たして、(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏と
そのグループの諸氏が電気・プラグイン小型ハイブリッドトラックの研究を実施されていると云うことは、電気・
プラグイン小型ハイブリッドトラックの走行燃費(=熱効率)が小型ハイブリッドトラックよりも飛躍的に向上
できるとの確信を持たれるものと考えられる。電気・プラグイン小型ハイブリッドトラックの走行燃費(=熱効
率)が小型ハイブリッドトラックの走行燃費(=熱効率)よりも飛躍的に向上できるとの確信を導き出された
後藤 雄一氏とそのグループの諸氏の「根拠」や「考え方」の内容を、是非とも知りたいものである。

 因みに、筆者は、電気・プラグインハイブリッド乗用車の場合と異なり、電気・プラグイン小型ハイブリッド
トラックの走行燃費(=熱効率)が小型ハイブリッドトラックの場合よりも飛躍的に向上できるとは、とても思え
ないのである。したがって、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とその
グループの諸氏の狙いとする電気・プラグイン小型ハイブリッドトラックの普及による低炭素社会
(=低CO2社会)の実現を図ろうとする目標は、実現することが不可能と思えるのである。
高性能
電動路線バス
 下図に示したように、2010年末の普通トラックの保有台数は228万台であるのに対し、バスの保有台数は
23万台であるこのバスの台数には、マイクロバスや観光バスが含まれているが、小型バスを含めた路線
バスの全台数は、6万台である。(出典:http://www.mlit.go.jp/common/000017063.pdf したがって、路線
バスの台数は、普通トラックの保有台数はの2.6%に過ぎない。



 その上、路線バスの1日の走行距離は、トラックの1日の走行距離の3分の1程度である。このように、路線
バスは、普通トラックの2.6%の保有台数にしか過ぎず、しかも、トラックの1日の走行距離が普通トラックの
3分の1程度であるこから、路線バスで消費されている燃料量(=軽油量)は、わが国の普通トラックの分野
で消費されている石油(=軽油)の総消費量の1%程度以下の極く僅かである。

 したがって、将来、仮に路線バスの全てを電動路線バスに転換できたとしても、普通トラックの分野から
排出されるCO2の1%程度以下しか削減できないのである。要するに、電動路線バスは、普通トラックの分野
からのCO2排出量の測定誤差の程度しかCO2の削減ができないのだ。そのため、路線バスの全てを電動
路線バスに転換したとしても、わが国の脱石油と低炭素社会(=低CO2社会)の実現には殆ど貢献できない
ことは明らかである。したがって、電動路線バスの普及による低炭素社会(=低CO2社会)の実現を
図ろうとする(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏
研究は、研究者の自己満足のためだけであり、単なる試験研究費の浪費であると思えるが、如何な
ものであろうか。
次世代バイオ
ディーゼルエンジン
 そもそも食料自給率が40%(カロリーベース)の日本において、トラック貨物輸送分野に必要な量のバイオ
マス燃料を自給することが不可能なことは明らかだ。そして世界に目を向けても、地球上の世界全体での
人口増加や水資源の不足などで食料危機の到来が議論されている現在では、わが国の運輸分野での
脱石油と低炭素社会(=低CO2社会)の実現に貢献できる程度の量のバイオマス燃料を輸入することが困難
なことは明白である。

 このようなバイオマス燃料の状況については、専門家の(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の
後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、当然、理解されている筈である。それにもかかわらず、(独)交通
安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、わが国の脱石油と
低炭素社会(=低CO2社会)の実現を図ることを目的として、ディーゼルエンジンの燃料にバイオ
マス燃料を使用する研究を実施されてことは、試験研究費の浪費と考えられる。果たして、(独)交通
安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、現在の軽油消費量に相当する
膨大な量のバイオマス燃料を将来的に確保し、日本のディーゼルエンジンのトラック・バスの燃料として
バイオマス燃料が一般に広く用いられる時代が到来すると信じられているのであろうか。仮にそうである
ならば、筆者には非常識なように思えるが、如何なものであろうか。

 なお、バイオマス由来のDMEは、ディーゼルエンジンの燃料として失格である。その理由については、
バイオマス由来のDMEによる自動車の低炭素・脱石油は、不可能だ!のページに詳述しているので、興味の
ある方は御覧いただきたい。

 以上の表2に示したとおり、(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、日本の運輸部門の
中で多くのCO2を排出する大型車(=大型トラック・トラクタ・バス)分野における低炭素(=CO2削減)の社会を実現す
るために、平成23年度〜平成26年度の期間にて「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」として、「 高効率ハ
イブリッドトラック」、「電気・プラグインハイブリッドトラック(小・中型)」、「高性能電動路線バス」および「次世代バイオデ
ィーゼルエンジン」の研究を実施しているいるとのこと。しかし、、「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」の4
項目の研究は、上記の表2の中で説明したように、わが国における低炭素(=CO2削減)の社会を実現や脱石油の推
進に貢献できない内容と考えられる。したがって、(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏が
「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」の4項目の研究を仮に成功成功裏に終了させたとしても、日本の運輸
部門の大型車(=大型トラック・トラクタ・バス)分野における低炭素(=CO2削減)の社会を実現することが困難と考え
られる。

 しかし、筆者の考えとは異なり、交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、「次世代低害車開
発・実用化促進事業(第3期)」として実施されている4項目の試験研究によって本当に将来の日本の大型車(=大型ト
ラック・トラクタ・バス)分野における低炭素(=CO2削減)の実現ができると信じられているのであろうか。そうであるなら
ば、(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、是非とも筆者が表2に示した疑問点の誤り
についてのご指摘を、このページの末尾に示した筆者のEメール宛にお送りいただきたいものである。仮に表2に示し
た疑問点に誤りがあるならば、筆者は躊躇無く、即刻に誤りの訂正を行う所存である。

 しかし、仮に、表2に示した筆者の疑問点の誤りについてのご指摘を筆者にお送りいただけない場合には、(独)交通
安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」として実
施されている4項目の試験研究によって本当に将来の日本の大型車(=大型トラック・トラクタ・バス)分野における低
炭素(=CO2削減)の実現が困難なことを承知の上で、この試験研究を実施されているものと推測される。その場合、
(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、将来の日本の大型車(=大型トラック・トラクタ・
バス)分野における低炭素(=CO2削減)が実現できないことを承知していながら、それがあたかも実現できるかの如く
説明して試験研究費を獲得していたことになると考えられる。このようなことは、人間として恥ずべき詐欺的な行為のよ
うに思えるが、如何なもにであろうか。

 仮に、これが事実であれば、(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、特別会計とは云
え、貴重な税金の無駄使いを堂々と行っていることになる。このようなことは、近年の膨大な財政赤字のために消費税
の増税を強いられようとしている立場の一般国民にとっては、迷惑この上の無いことではないだろうか。そのため、会
計検査院は、日本の大型車(=大型トラック・トラクタ・バス)分野における低炭素(=CO2削減)の実現に貢献しない研
究である「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)【平成23年度〜平成26年度実施】」が税金の無駄使いである
ことを速やかに認定すべきと考えられる。そして、この後藤 雄一氏とそのグループの諸氏が実施している「次世代低
害車開発・実用化促進事業(第3期)」の研究プロジェクトを早期に中止する処置をとって欲しいものである。

−2.自動車用燃料として失格のバイオマス由来の燃料を研究する交通安全環境研究所

(1) DDF大型トラックの実用化だけが将来の脱石油の実現できる唯一の方法・手段

  図1は、世界の油田発見と石油生産の実績と将来の予想をに示したものである。この図1では、世界の石油生産の
ピークは、2008年頃の予想となっている。実際、図2に示した通り、2008年の世界の石油(=原油)生産はピークを迎え
ている。



図1は、世界の油田発見と石油生産の実績と将来の予想
(出典:http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/hajimeni.html



図2は、世界の石油生産の実績
(出典:http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/hajimeni.html

 何はともあれ、図1に示したように、現在の油田からの生産量の減少と新しい油田が発見・開発される数の先細りが
予想されるため、今後の世界の石油生産が減少の一途をたどることは間違いないと考えられる。このように、石油(=
原油)生産のピークの時代を迎えてしまった、今後の世界の石油生産量は確実に減少し続けると予想される。そのた
めため、近い将来には、石油不足の時代の到来が間違いなく到来するものと予想される。そのため、現在の世界の殆
ど全ての大型トラックには、燃料に軽油が使用されている状況である。そのため、世界中の組織・団体・研究機関等で
は、大型トラックの脱石油を可能にする技術の研究が盛んに実施されているようだ。

 一方 図3に示したように、現在では世界の人口は、70億人に近くまで増加してきており、今後、更に増加することが
予想されている。その一方、図4に示した資料によると、世界のエネルギーの全生産量は、2020年頃にピークになって
しまうようだ。そして、その後には人類が確保できるエネルギーの総量は、減少していくものと推測されている。したがっ
て、今後は更なる人口増加によるエネルギー需要が増大するにもかかわらず、地球上の利用可能なエネルギー資源
の枯渇が進行する時代に突入しようとしているのである。このような状況から、近い将来、エネルギー不足が顕在化す
ると危惧されている。このような現状から、将来の大型トラックには、省エネルギー資源を浪費する燃料の使用を避け
ることは、誰が考えても当然のことである。



図3 世界人口の増加予想
(出典:http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/index.html



図4 全世界の総エネルギーの生産量 (これまでの実績と将来の予想)
(出典:http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/index.html



図5 全世界の各エネルギーの生産量 (これまでの実績と将来の予想)
(出典:http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/energy2050rev1.html

 この全世界の各エネルギーの生産量 (これまでの実績と将来の予想)の図5を見ると、石油以外の主要なエネルギ
ー資源である天然ガスや石炭の生産は、2008年の石油生産のピークから20年程度の遅れた2025年付近において、ピ
ークを迎えそうである。このように、石油、天然ガスおよび石炭の地球上の主要なエネルギー資源は、現在若しくは近
い将来に生産量のピークを迎えてしまう状況である。したがって、エネルギー資源の枯渇が危惧される現在において
は、将来的に大型トラックの燃料を石油以外の脱石油燃料に転換するにしても、大型トラックにおける脱石油燃料の
Well-to-Wheelのエネルギー効率が現在の軽油ディーゼルトラックのWell-to-Wheelのエネルギー効率に比較して同等
以上のエネルギー効率を確保すべきことは、誰の目にも疑いの無いことだ。

 このように、全世界を見ると、今後の更なる人口増加によるエネルギー需要が増大するにもかかわらず、地球上の
利用可能なエネルギー資源の枯渇が進行する時代に突入しようしているのである。特に、石油は2008年頃に生産のピ
ークを迎えたため、生産量が減少し続けている。そのため、燃料のほとんどを石油に依存している大型トラックにおい
ては早急に燃料の脱石油を図らなければ、円滑なトラックによる円滑な物流に大きな支障を来たすことになる恐れが
ある。このように、地球上の利用可能なエネルギー資源の枯渇が進行する時代において大型トラックの脱石油を図る
ためには、現行の軽油ディーゼルの大型トラックと同等のWell-to-Wheelのエネルギー効率を確保しながら脱石油を可
能にする大型トラックを実用化する必要がある。

 前述の図3に示したような世界人口の更なる増加のため、今後の世界の石油需要は増大するものと予想される。そ
れにもかかわらず、図1、図2に示したように、既に2008年に石油ピーク迎えるてしまったている。このように、現在で
は「世界人口の更なる増加」と「石油資源の枯渇」の危機的な時代に突入しようとしているのである。不幸なことに、そ
のような時代に突入し始めたとしても、世界の経済活動や市民生活を維持・発展させていくためには、トラックによる円
滑な貨物輸送の維持が不可欠である。ためには、現時点でほぼ100%の燃料を石油に依存している大型トラックは、
早急に脱石油化を図る必要がある。その場合、近い将来には地球上の利用可能な石油資源の枯渇の時代の到来が
必至であることを考えると、早急なトラックの脱石油が必要であることは誰もが認めるところである。このトラックの脱石
油においては、前述の図4に示した如く、世界のエネルギーの全生産量が2020年頃にピークになってしまうことを考慮
すると、最悪の場合でも現行の軽油ディーゼルトラックと同等のWell-to-Wheelのエネルギー効率で運行が可能
な脱石油のトラックを選択する必要があることは明白である。そこで、天然ガスと石炭をエネルギー資源に用いて
各種の脱石油の大型トラックを運行した場合のWell-to-Tankの燃費の優劣(=ネルギー効率の優劣)を表3に示した。

表3 天然ガスと石炭をエネルギー資源に用いて各種方法により大型トラックを運行した場合のエネルギー効率
脱石油の
エネルギーの
資源
脱石油の
トラック
トラックを
駆動する燃料の
Well-to-Tankの
エネルギー効率
(注1参照)
トラックを
駆動する燃料の
Tank-to-Wheelの
エネルギー効率
軽油ディーゼル基準の
Well-to-Wheelの
燃費の優劣
(=エネルギー効率の優劣)
脱石油
大型トラックの
優劣評価
天然ガス
天然ガス
専焼トラック
 LNG=0.858
(都市ガス由来)CNG=0.848
軽油ディーゼルに比べ
30 %の悪化
(注2参照)
軽油ディーゼルに比べ
30 %の悪化
×
DDF トラック
LNG=0.858
(都市ガス由来)CNG=0.848
超低硫黄軽油= 0.883
軽油ディーゼルと 同等
(優劣は無し)
(注3参照)
軽油ディーゼルと 同等
(1〜2 %程度の悪化)
天然ガス
or
石炭
DME トラック
天然ガス由来の
DME= 0.671
(ジメチルエーテル)
軽油ディーゼルと同等
軽油ディーゼルに比べ
32 % の悪化
×
DME トラック
石炭由来の
DME= 0.565
(ジメチルエーテル)
軽油ディーゼルと同等
 軽油ディーゼルに比べ
 56 % の悪化 
×
GTL トラック
GTL= 0.638
(天然ガス由来の合成燃料)
軽油ディーゼルと同等

軽油ディーゼルに比べ
38 % の悪化
×
CTL トラック
CTL= 0.508 %
(石炭由来の合成燃料)
軽油ディーゼルと同等
軽油ディーゼルに比べ
74 % の悪化
  ×

 注1:出典は、「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心とした温室効果ガス排出量に関する
研究報告書】 平成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研

注2:出典は、天然ガス専焼のCNG大型トラックは、重量車燃費基準に不適合の欠陥トラックのページ

注3:出典は、ディーゼルに比べ15%のCO2削減が可能なDDFエンジン およびDDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック  
のページ

 この脱石油のエネルギー資源である天然ガスと石炭をエネルギー資源とした各種の新燃料(=天然ガス、DME、
CTL,GTL)をトラックに用いた場合のエネルギー効率を示した表3を見ると明らかなように、現行の軽油ディーゼルのト
ラックと同等のWell-to-Wheelのエネルギー効率のトラックは、DDFトラックだけである。天然ガス専焼トラック、天然ガス
由来DMEトラック、石炭由来DMEトラック、天然ガス由来GTLトラック、石炭由来GTLトラックのWell-to-Wheelのエネル
ギー効率は、軽油ディーゼルに比べて30%〜70%程度も劣っている。このことから、数年後には世界人口の更なる
増加によるエネルギー需要が増大するにもかかわらず、既に2008年に石油ピーク迎えると共に、地球上の利用可能な
エネルギー資源の枯渇のために全世界のエネルギー生産量が減少する時代に実用化すべき脱石油の大型トラック
は、DDF大型トラックを実用化し、これを普及していく方法・手段しか無いことが明らかだ。なお、DDFトラックの詳細につ
いては、DDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック およびDDF運転とディーゼル運転の選択が可能
なDDF大型トラック に記載しているので、興味のある場合には御覧いただきたい。

 しかしながら、日本の多くの会社・研究組織・研究団体等は、現時点ではDDFトラックの研究開発には本格的に着手
していないようだ。そして、現在でも従来と大きく変わること無く、惰性のようにトラックの燃料にDMEやGTL用いる研究
を熱心に行っているようだ。このようなDMEトラックやGTLトラックの研究は、筆者には試験研究費の無駄使いそのもの
と考えられる。近い将来、国の税収不足のために消費税の増税が実施されようとしているわが国において、将来的に
何の役にも立たないDMEトラックやGTLトラックの研究に多額の政府の試験研究予算が使われているとすれば、実に
嘆かわしいことだ。多くの国民にとっては、何とも遣り切れないことである。

(2) トラックの脱石油に無効なバイオマス由来の燃料を調査・研究する交通安全環境研究所

 木質系バイオマスを可燃性ガスに変え、そのガスを触媒等の反応させる手段を用いてガス化合成によって軽油(FT
ディーゼル)、ガソリン、DME等のトラック・バスの石油代替燃料を製造する基本的な技術は、ドイツが第二次世界大戦
当時から行っていたようであり、最近になって新しく見い出されたものでは無い。しかし、(独)交通安全環境研究所は、
図1に示した装置を用い、廃材などの木質系バイオマスを可燃性ガスに変え、そのガスからトラック・バスの石油代替
燃料の軽油(FTディーゼル)、ガソリン、DMEを合成する研究を現在でも熱心に実施しているようだ。その方法は、図1
に示したように、先ず最初に木質系バイオマスを800〜1000℃の高温による蒸し焼き状態を維持してガス化し、水素
(H2)と一酸化炭素(CO)を作る。そしてガス中のH2とCOの比を調整し、触媒の入った装置内でH2とCOを高圧・高温で
反応させるることによって液体炭化水素を生成することが可能とのことだ。その際、触媒の種類、反応圧力、温度を変
えることで、軽油(FTディーゼル)、ガソリン、ジメチルエーテルなど、さまざまな物質を作ることができるようである。



図1 木質系チップから液体炭化水素を生成するプロセス
【軽油(FTディーゼル)、ガソリン、混合アルコール、DME等の製造方法】
(出典:https://unit.aist.go.jp/btrc/research/BTLTotalSystemTeam/theme01.html

 ところで、バイオマスを高温による蒸し焼き状態を維持してガス化し、ガス中のH2とCOの比を調整し、触媒の入った
装置内でH2とCOを高圧・高温で反応させるることによって製造したバイオマス由来のFT合成油およびDME(=ジメチル
エーテル)を燃料に用いてトラックを運行させることが可能である。そこで、このバイオマス由来のFT合成油およびDME
は、原料がバイオマスであるために軽油に比べて低炭素燃料の特徴がある。そこで、これらバイオマス由来のFT合成
油とDMEと共に、従来から低炭素燃料として一部の地域で既に供給されている天然ガスについての燃料のWell-to-
Tankのエネルギー効率を表4に整理した。また、表4には、バイオマス由来のFT合成油とDME、および天然ガスをトラッ
クに使用した場合のTank-to-Wheelのエネルギー効率と、軽油ディーゼルトラックを基準とした場合のWell-to-Wheelの
燃費の優劣(=エネルギー効率の優劣)を記載した。更に、表4には、バイオマス由来のFT合成油とDME、および天然
ガスを大型トラックの燃料に使用した場合の脱石油の大型トラックを運行した場合の将来的な大型トラックとして実用
性の可否の評価も記載した。

表4 大型トラック等の自動車走行における軽油ディーゼル基準のWell-to-Wheelの燃費の優劣
脱石油の
エネルギーの
資源
脱石油の
トラック
トラックを
駆動する燃料の
Well-to-Tankの
エネルギー効率
(注1参照)
トラックを
駆動する燃料の
Tank-to-Wheelの
エネルギー効率
軽油ディーゼル基準の
Well-to-Wheelの
燃費の優劣
(=エネルギー効率の優
劣)
脱石油
大型トラックの
優劣評価
天然ガス
天然ガス
専焼トラック
 LNG=0.858
(都市ガス由来)CNG=0.848
軽油ディーゼルに比べ
30 %の悪化
(注2参照)
軽油ディーゼルに比べ
30 %の悪化
×
DDF トラック
LNG=0.858
(都市ガス由来)CNG=0.848
超低硫黄軽油= 0.883
軽油ディーゼルと 同等
(優劣は無し)
(注3参照)
軽油ディーゼルと 同等
(1〜2 %程度の悪化)
木質系
バイオマス
DMEトラック
木質系バイオマス由来の
DME= 0.536
(ジメチルエーテル)
軽油ディーゼルと同等
軽油ディーゼルに比べ
65 % の悪化
×
FT合成油トラック
木質系バイオマス由来の
FT合成油=0.460
(最良=0.489〜最悪=0.431)
(木質系バイオマス由来の合成燃料)
軽油ディーゼルと同等
軽油ディーゼルに比べ
92 % の悪化
  ×


注1:出典は、「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心とした温室効果ガス排出量に関する
研究報告書】 平成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研

注2:出典は、天然ガス専焼のCNG大型トラックは、重量車燃費基準に不適合の欠陥トラックのページ参照

注3:出典は、ディーゼルに比べ15%のCO2削減が可能なDDFエンジン およびDDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック  
のページ参照

 この上記の表4から明らかなように、軽油ディーゼルのトラックと比較した場合、天然ガス専焼トラックの運行では
30%も多くのWell-to-Wheelでのエネルギーを消費することになり、木質系バイオマス由来のDMEトラックの運行では
65%も多くのWell-to-Wheelでのエネルギーを消費することになり、木質系バイオマス由来のFT合成油トラックの運行
では92%も多くのWell-to-Wheelでのエネルギーを消費することになりる。そのため、殆んど全ての分野において、省エ
ネルギーが最も重要視される現在では、木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油は、「脱石油」や「バイオマスで有る
が故の低炭素(=CO2排出削減)」の燃料であるとしても、大型トラックの燃料としては失格であることが誰の目にも明
らかなことだ。一方、天然ガスと軽油を併用するDDFトラックは、軽油ディーゼルと 同等のエネルギーの消費で運行で
きるのである。

 このDDFトラックに搭載されているDDFエンジンは,各シリンダの吸気ポートに設けたガスインジェクタから吸気弁の開
弁期間中に主燃料の天然ガスをシリンダ内に向かって噴射して運転するするエンジンである.その燃焼形態は,シリン
ダ内に天然ガスの過濃領域と空気の多い領域に分けた不均一な混合気を形成させ,ディーゼルの高い圧縮比を変え
ずに全負荷時に多量の天然ガスを供給した場合でもノッキングを生じさせないようにしたものである。そして,燃焼室内
にパイロット噴射した軽油の予混合気が最初に自己着火して火炎を形成し,この火炎が天然ガスの希薄予混合気を
燃焼させるエンジンである。このDDFトラックは、燃料に軽油と天然ガスを併用するため、大型トラックの脱石油化に有
効であり、しかも、ディーゼルに比べ15%のCO2削減が可能なDDFエンジンおよびDDF運転とディーゼル運転の選択
が可能なDDF大型トラック に詳述しているように「大型トラックの低炭素(=CO2排出削減)」にも大きく貢献できる優れ
たトラックである。

 このように、大型トラックの「脱石油」と「低炭素(=CO2排出削減)」に有効であると共に軽油ディーゼルと同とのWell-
to-Wheelのエネルギー効率のDDFトラックの技術が既に存在している現在においては、Well-to-TankおよびWell-to-
Wheelの観点から大型トラックの燃料としては完全に失格の木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油を大型トラックの
燃料に使用した場合の「低炭素(=CO2排出削減)」の効果を調査・分析する研究を実施することは、「愚の骨頂」では
ないだろうか。何度も繰り返すが、Well-to-TankおよびWell-to-Wheelのエネルギー効率が軽油よりも大幅に劣
る木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油は、将来とも大型トラックの燃料に使用できない欠陥燃料であるこ
とが明らかだ

 そもそも、前述の表3に示した平成16年11月のトヨタ自動車梶Eみずほ情報総研鰍フ「輸送用燃料のWell-to-Wheel
評価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心とした温室効果ガス排出量に関する研究報告書】のデー
タを見た人は誰でも、木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油が大型トラックの燃料として失格の欠陥燃料であること
を容易に理解してしまう筈だ。そして(独)交通安全環境研究所の専門家と云われる人達は、当然、このトヨタ自動車
梶Eみずほ情報総研鰍フ報告書(平成16年11月)の内容を熟知しているものと考えられる。それにもかかわらず、(独)
交通安全環境研究所は、2012年11月6〜7日開催の「平成24年度 交通安全環境研究所フォーラム2012」で配布された
「講演概要」には、トラック・バス用の燃料として木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油を用いた場合の 「D 次世代
バイオマス燃料自動車のLCA−木質バイオマスを原料とするガス化合成燃料の事例分析ー」の論文を発表しているの
である。そして、この論文には、「将来的に有望なバイオマス燃料を選択していくためには、車両への適用性及び温室
効果ガス(GHG)排出量を含めた総合的な環境負荷を評価する手法を確立していく必要がある」とし、「本研究はそうし
た観点にたち、今回は、木質バイオマスを原料にしたガス化合成により製造される燃料を取り上げ、原料の前処理・輸
送から燃料製造そして車両走行の全体を通じてのCO2排出量についてLCA(life cycle assessmemt:ライフサイクルア
セスメント)を行った」と記載されている。しかし、この論文の内容については、筆者には多くの疑問点があるので、それ
を表5にまとめた。

表5 (独)交通安全環境研究所の自動車用のバイオマス燃料に関する論文
出典:「平成24年度 交通安全環境研究所フォーラム2012」(2012年11月6〜7日)で配布の「講演概要」
論文の記載の内容
左記の論文についての
筆者の疑問点または意見
論文発表の場所と日時

国際連合大学 ウ・タント国際会議場
2012年11月6〜7日
発表資料の掲載書物

「平成24年度 交通安全環境研究所フォーラム2012」の「講演概要」
← 
論文の題目

D 次世代バイオマス燃料自動車のLCA
−木質バイオマスを原料とするガス化合成燃料の事例分析ー
論文の著者

交通安全環境研究所 : 佐藤由雄氏、川野大輔氏、石井素氏
東京理科大学大学院 : 渡辺祐太郎氏              
東京理科大学大学 : 小井土賢二氏、堂脇清志氏 
論文の内容(1) 

「1.はじめに」 の項 
 
 左記の「1.はじめに」 の項を拝見したところ、この論文で論
じられているバイオマスから製造される燃料は、木質バイオマ
スを原料としてガス化合成によって製造するとのことである。し
たがって、この論文で扱われているバイオマスから製造される
燃料とは、バイオマス由来のDME(=ジメチルエーテル)やバ
イオマス由来のFT合成油燃料等であることは、間違いないと
考えられる。

 また、左記の項を読むと、交通安全環境研究所の佐藤由雄
氏と他の6名の共著者は、「バイオマスから製造される燃料
は、製造時に多量のエネルギーを消費する」ことを十分に認識
しているようだ。(左記の赤線部を参照方) しかしながら、将
来のバイオマスから製造される燃料をトラック・バスに使用でき
る必要条件として、バイオマスから製造される燃料のLCA(=
ライフサイクルセスメント)に基づいたエネルギー効率が軽油の
LCAに基づいたエネルギー効率と同等以上のLCAに基づいた
エネルギー効率であるべきとの記載は全く見当たらない。つま
り、佐藤由雄氏と他の6名の共著者は、トラック・バスの将来
燃料の選択基準からLCAに基づいたエネルギー効率の評価を
最重要視する必要がなく、「副次的な燃料選択の評価基準」
や「無視すべき燃料選択の評価基準」との見解・主張・信念の
ようだ。

 そもそも、前述の表3に示した平成16年11月のトヨタ自動車
梶Eみずほ情報総研鰍フ「輸送用燃料のWell-to-Wheel評
価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を中心と
した温室効果ガス排出量に関する研究報告書】のデータから、
バイオマスからガス化合成によって製造されるDMEやFT合成
油等の燃料のWell-to-Tankのエネルギー効率が軽油のWell
-to-Tankのエネルギー効率よりも格段に劣っているために、
木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油が大型トラック
の燃料として失格の欠陥燃料であることは既に確認でき
ている事実である。しかし、佐藤由雄氏と他の6名の著者諸
氏は、この事実を完全に無視し、バイオマスからガス化合成に
よって製造されるDMEやFT合成油等の燃料のWell-to-Tank
のエネルギー効率が軽油のWell-to-Tankのエネルギー効率
よりも格段に劣っているとしても、このDMEやFT合成油等をトラ
ック・バスの燃料として用いることに何の問題も無いとの判断・
認識のもとに、この論文を執筆しているような印象がある。

 そのため、佐藤由雄氏と他の6名の著者諸氏は、バイオマス
からガス化合成によって製造されるDMEやFT合成油等の燃料
の温室効果ガス(=GHG=CO2等)の排出量についてのLCA
(=ライフサイクルセスメント)での優劣の評価を行う必要があ
ることを左記の「1.はじめに」に淡々と記載している。これを読
むと、佐藤由雄氏と他の6名の著者諸氏は、トラック・バスの
将来燃料を選択する最重要な評価基準が「低炭素(=CO2排
出削減)」であるとの主張・信念のように思える。そして、佐藤
由雄氏と他の6名の著者諸氏は、Well-to-Tankのエネルギー
効率が軽油のWell-to-Tankのエネルギー効率よりも劣ってい
る場合でも、Well-to-Tankの「低炭素(=CO2排出削減)」が
優れている燃料であれば、トラック・バスの将来燃料として有
望であると、非常識な誤った見解・主張・信念の人達のよう
だ。

 このことから、佐藤由雄氏と他の6名の著者諸氏は、前述の
表3に示した「トヨタ自動車梶Eみずほ情報総研鰍フ研究報告
書のデータ」から明らかなバイオマスからガス化合成によって
製造されるDMEやFT合成油等の燃料がの大型トラックの燃料
として失格の欠陥燃料であることを認識していない可能性があ
る。そのため、佐藤由雄氏と他の6名の著者諸氏は、性懲りも
無く、トラック・バスの燃料に木質系バイオマス由来のDMEと
FT合成油を使用した場合の「低炭素(=CO2排出削減)」の効
果を試算する研究」の論文を発表しているように考えられる。
何はともあれ、バイオマスからガス化合成によって製造される
DMEやFT合成油等のトラック・バスの将来燃料に失格のた
め、このDMEやFT合成油に関するCO2排出のLCA(=ライフサ
イクルセスメント)での優劣の評価を行う(独)交通安全環境研
究所の研究は、完全に無意味であり、試験研究費の浪費であ
ることは確かなようだ。
論文の内容(2)

4.分析結果
そもそも、エネルギー収支比(EPR : Energy Profit Ratio)と
は、エネルギーを生産する設備の性能を示す指標とのこと。そ
の施設に対して直接的・間接的に投入したエネルギー量に対
して、その設備が生産(または節約)するエネルギーの大きさ
を比にしたものである。

 仮に、或るエネルギー資源から燃料を製造する場合に、10
のエネルギーを設備に投下したものとして、その設備が生み
出した燃料のエネルギーの総和が100だった場合、Well-to-
Tankのエネルギー収支比(EPR)は100÷10=10ということに
なる。

 例えば、平成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研
の「輸送用燃料のWell-to-Wheel評価」のデータを用いると、
超低硫黄軽油のWell-to-Tankのエネルギー収支比は(1.0)
÷(0.118)=8.5となる。

 ところが、左記の論文の図2には軽油のWell-to-Tankのエ
ネルギー収支比は、約0.12と記載されている。この数値は、平
成16年11月 トヨタ自動車梶@みずほ情報総研鰍フ「輸送用
燃料のWell-to-Wheel評価」の報告書のデータから求めた超
低硫黄軽油のWell-to-Tankのエネルギー収支比=8.5の逆
数のようだ。

 このことから、左記の論文の著者である交通安全環境研究
所の佐藤由雄氏と他の6名の共著者の学者・専門家は、一般
的なエネルギー収支比(EPR : Energy Profit Ratio)の逆数を
エネルギー収支比と勘違いされているようだ。これは、左記の
論文を読む多くの読者を当惑させることである。このように、エ
ネルギー収支比のような一般的な係数を勝手気ままに定義し
て論文を執筆することは、常識ある学者・専門家としては、厳
に謹んでいただきたいものである。一般的な広く用いているエ
ネルギー収支比に詳しい専門家が左記の論文の図2だけを拾
い読みした場合、その専門家はバイオマス由来のDMEやFTD
(=FT合成油)のエネルギー効率が軽油よりも優れている(=
高い効率である)と誤って認識する可能性がある。なぜなら、
左記の論文の拾い読みの際には、図2の縦軸がWell-to-
Tankのエネルギー収支比の逆数であることに気付かない恐れ
が多分にあるためだ。

 また、左記の論文の赤線部には「各バイオマス燃料は、製
造に必要な投入エネルギー量に比べて得られるエネルギー量
の方が少ない」と記載されている。このように、製造に必要な
投入エネルギー量に比べて得られるエネルギー量の方が少
ない各バイオマス燃料は、前述の図5に示したような近い将来
において全世界の各エネルギー資源の枯渇の危機を迎えた
現在ににおいてのトラック用燃料(=自動車用燃料)としては
失格であることが明らかだ。

 しかし、左記の論文では、「各バイオマス燃料は、製造に必
要な投入エネルギー量に比べて得られるエネルギー量の方
が少ない」との測定結果を記載しているだけであり、これにつ
いての交通安全環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名の共著
者の意見・評価・考察は、何も記載されていない。これを見る
と、良心的な学者・専門家であれば、バイオマス由来のDME
やFT合成油が将来のトラック用燃料(=自動車用燃料)として
は失格であることを理解し、その旨を論文に強調して記載する
筈であると考えられる。

 しかし、交通安全環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名の共
著者は、「各バイオマス燃料は、製造に必要な投入エネルギ
ー量に比べて得られるエネルギー量の方が少ない」との測定
結果を記載しながら、バイオマス由来のDMEやFT合成油が将
来のトラック用燃料(=自動車用燃料)として重大な欠陥のあ
ることを左記の論文の中に何も記載していないのである。

 このことは、交通安全環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名
の共著者は、バイオマス由来のDMEやFT合成油が将来のトラ
ック用燃料(=自動車用燃料)として重大な欠陥のあることを
隠蔽する意図があるのか、それとも、バイオマス由来のDMEや
FT合成油が将来のトラック用燃料(=自動車用燃料)としては
失格であることを全く理解していないことが原因であろうか。

 左記の論文の記載内容を見る限り、交通安全環境研究所の
佐藤由雄氏と他の6名の共著者は、バイオマス由来のDMEや
FT合成油等の試験を実施し、思考回路の欠如したロボットの
如く、その試験結果だけ論文にを記載しただけのようである。
そのため、まともな論文として最も重要な試験結果に対する著
者の考察が欠落していることは明らかだ。したがって、交通安
全環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名の共著者が発表した
左記の論文は、論文としての体を成していないと考えられる
が、如何なものであろうか。
論文の内容(3)

5.まとめ
 そもそも、前述の表3に示した平成16年11月のトヨタ自動
車梶Eみずほ情報総研鰍フ「輸送用燃料のWell-to-Wheel
評価」【日本における輸送用燃料製造(Well-to-Wheel)を
中心とした温室効果ガス排出量に関する研究報告書】の
データから、重量車(=GVW3.5トン以上のトラック・バス等)
の現行の燃料である軽油のWell-to-Tankのエネルギー
効率に比較し、木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油の
Well-to-Tankのエネルギー効率が大幅に劣ることが明白
だ。したがって、地球上のエネルギー資源の枯渇が危惧
されている現在では、エネルギー資源の浪費を招くWell-to-Tankの
エネルギー効率が大幅に劣る木質系バイオマス
由来のDMEとFT合成油は、重量車(=GVW3.5トン以上の
トラック・バス等)の燃料としては明らかに失格である。その
ため、木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油等は、将来
とも大型トラックの燃料に用いられる可能性が皆無と言って
も過言ではない。

 このように、将来とも木質系バイオマス由来のDMEとFT
合成油が大型トラックの燃料に可能性が無いにもかかわら
ず、左記の「5.まとめ」の赤い下線を追加した記述では、
交通安全環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名の共著者
は、木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油を重量車
(=GVW3.5トン以上のトラック・バス等)の燃料に用いた場合
のライフサイクルでのCO2排出量等についての優劣の評価
等についての分析を行ったとのことである。交通安全環境
研究所の佐藤由雄氏と他の6名の学者・専門家は、木質系
バイオマス由来のDMEとFT合成油等の燃料が将来とも大型
トラックの燃料に用いられる可能性が皆無にもかかわらず、
このDMEとFT合成油等を大型トラックの燃料に使用した
場合のCO2排出量の事例分析を行うことは全く無駄な
調査・研究を実施したことになる。したがって、交通安全
環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名の学者・専門家は、
単に試験研究費の無駄使いをしているに過ぎないと考えら
れる。

 また、左記の「5.まとめ」の青い下線を追加した記述
では、前述の通り、一般的なエネルギー収支比(EPR :
Energy Profit Ratio)の逆数をエネルギー収支比と誤って
表示していることは、左記の論文を読む多くの読者を当惑
させることである。そして、「各バイオマス燃料は、製造に
必要な投入エネルギー量に比べて得られるエネルギー量の
方が少ない」との測定結果を記載しているだけであり、
これについての交通安全環境研究所の佐藤由雄氏と他の
名の共著者の意見・評価・考察は、何も記載されていない。
これを見ると、良心的な学者・専門家であれば、バイオマス
由来のDMEやFT合成油が将来のトラック用燃料(=自動車
用燃料)として重大な欠陥のあることを左記の論文の中に
何も記載していないのである。

 そして、左記の「5.まとめ」の緑の下線を追加した記述
では、木質系バイオマス由来のDMEとFT合成油等の燃料
が将来とも大型トラックの燃料に用いられる可能性が皆無
にもかかわらず、このDMEとFT合成油等を大型トラックの
燃料に使用した場合のCO2排出量の事例分析の調査・研究
を継続して実施すると、堂々と宣言しているのである。
もっとも、この無駄な調査・研究には、政府の貴重な予算が
使われているように推測される。仮に、これが事実で
あれば、この無駄な調査・研究を実施している交通安全
環境研究所の佐藤由雄氏と他の6名の学者・専門家は、
国民の貴重な税金に巣食うシロアリのように思えるが、
如何なものであろうか。

    このように、表5に疑問点等をまとめた「D 次世代バイオマス燃料自動車のLCA−木質バイオマスを原料とするガ
ス化合成燃料の事例分析ー」の論文を拝見すると、(独)交通安全環境研究所の佐藤由雄氏、川野大輔氏、石井素
氏、東京理科大学大学院の渡辺祐太郎氏、東京理科大学大学の小井土賢二氏、堂脇清志氏は、バイオマス由来の
DMEやFT合成油等が将来のトラック用燃料(=自動車用燃料)として重大な欠陥のあるにもかかわらず、将来の将来
のトラック用燃料自としてこれらバイオマス由来のDMEやFT合成油等が普及する時代が来るとの誤った見通し・予想・
先入観を持っているようだ。そして、佐藤由雄氏とそのグループの人達は、大型トラック等の燃料として重大な欠陥の
あるバイオマス由来のDMEやFT合成油等の無駄な調査・研究をこれからも継続して実施する意向であることを論文の
中で堂々と述べている。このことは、佐藤由雄氏とそのグループの人達が政府予算の無駄使いによる赤字国債の上
乗せし、更なる国の負債の増加に大きく貢献しようとしていることを自ら宣言しているようなものだ。そして、困ったこと
に、DMEやFT合成油等に関する佐藤由雄氏とそのグループの人達の知識・認識が完全に誤っていることに、彼ら自身
が何も気付いていないようにも感じられることである。哀れとしか言いようが無いと思うが、如何なものであろうか。

 また、下記の表4に示したように、2012年5月の自動車技術会・春季大会では、(独)交通安全環境研究所の佐藤由
雄氏は、バイオマス燃料関係のセッションにおいて、「DME過給エンジンの燃費改善に関する研究」の共著者に名を連
ねているようだ。これを見ると、(独)交通安全環境研究所の佐藤由雄氏は、バイオマス由来のDMEのWell-to-Tankの
エネルギー効率が軽油よりも大幅に劣る欠陥があるにもかかわらず、バイオマス由来のDMEをトラックの将来の燃料
として普及させるための技術情報の発信に一生懸命のようだ。このように、トラック用燃料として重大な欠陥のあるバイ
オマス由来のDMEをトラックの将来燃料に推奨する(独)交通安全環境研究所の佐藤由雄氏の厚顔無恥とも思える活
動は、筆者には不可解なことであり、信じられないことだ。

表6 2012年5月の自動車技術会・春季大会でのDME燃料関係の発表論文


 何はともあれ、(独)交通安全環境研究所の学者・専門家は、如何なる理由で日本のWell-to-Wheelの「脱石油」と「低
炭素(=CO2削減)」に無効と考えられる技術の調査・研究のテーマを好き好んで選択し、この調査・研究を熱心に実施
しているようである。このことは、筆者には全く理解できないことだ。因みに、筆者の意見としては、近い将来、わが国に
おける大型トラックの「脱石油」と「低炭素(=CO2削減)」を本当に実現するならば、大型トラック等の燃料として重大な
欠陥のあるバイオマス由来のDMEやFT合成油等の無駄な調査・研究を即刻に中止し、ディーゼルに比べ15%のCO
2削減が可能なDDFエンジンDDF運転とディーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック のページに詳述いている
ような、DDFエンジンを搭載したDDF大型トラックの研究開発を早急に開始すべきと考えている。

2.軽油に比べて熱効率が30%も劣るDMEの自動車燃料の規格を作成する愚かな人達

 以上のように、バイオマスから合成したDMEを燃料とするDMEトラックは、軽油を燃料とするディーゼルエンジンよりも
Well-to-Wheelの燃費(=熱効率)が65 % も劣る重大な欠陥がある。そのため、将来、軽油の代替の燃料として自動
車用燃料にバイオマスから合成したDMEを広く普及させた場合、地球上の自動車分野のエネルギーの消費を無駄に
増加させることになることが明らかである。そのようなエネルギー資源の浪費を招く軽油に代替してバイオマスから合成
したDMEを自動車用燃料として広く一般化する可能性は、常識的に考えれば、皆無と考えられる。しかし、世の中に
は、バイオマスから合成したDMEが自動車用燃料として広く普及するとの常識の無い学者・専門家が存在するようだ。
その学者・専門家は、将来的な自動車用燃料にDMEが普及することに備えて、以下の表7に示したように、バイオマス
から合成したDMEの自動車用燃料の規格作成に懸命に取り組んでいるようである。ポンコツ元技術屋の筆者から見れ
ば、荒唐無稽な行為のように見えるが、如何なものであろうか。


表7 (独)産業技術総合研究所の「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」の業務推進
(出典:https://unit.aist.go.jp/energy/groups/cert-ngv.htm







 以上うのことから、最近の(独)産業技術総合研究所の研究計画では、小熊 光晴氏、鳥羽 誠氏、小渕 存氏、佐々
木 基氏、後藤 新一氏を含む学者・専門家は、政府予算を使ってトラック用燃料に使用不能な欠陥のあるバイオマス
から合成したDMEについて、「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」と云う業務を熱心に推進しているいるようで
ある。これを見ると、(独)産業技術総合研究所の小熊 光晴氏、鳥羽 誠氏、小渕 存氏、佐々木 基氏、後藤 新一氏を
含む学者・専門家は、ディーゼルエンジンの燃料の観点からの評価では、バイオマスから合成したDMEが軽油よりも燃
費(=Well-to-Wheelの熱効率)が30%程度も劣る重大な欠陥があるとの認識が欠けているように見受けられるのであ
る。

 そのため、(独)産業技術総合研究所の光晴氏、鳥羽 誠氏、小渕 存氏、佐々木 基氏、後藤 新一氏を含む学者・専
門家は、「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」が適切な業務を実施中との認識であるかも知れない。 しかし、
ンコツ元技術屋の筆者から見れば、バイオマスから合成したDMEが将来とも自動車用燃料として普及する可能性が将
来とも皆無なために、「自動車用DME燃料品質の国内外標準化」が不必要と考えられる。したがって、「自動車用DM
E燃料品質の国内外標準化」は、日本では将来とも何の役には立たないことが明らかであり、「愚の骨頂」・「荒唐無稽
な行為」と思えるのである。そのため、トラック用燃料に使用不能なDMEの燃料品質の標準作成は、バイオマスから合
成したDMEの燃料品質の標準を作成する(独)産業技術総合研究所の政府予算の執行は、会計検査院の適切な検査
によって中止されることを切に望むところである。

3.天然ガス併用のDDFトラックは、大型トラックのCO2削減と脱石油の実現が可能

 ところで、欧米の一部の天然ガスの安価な地域に限定されてはいるが、、軽油着火型の天然ガスエンジンであるディ
ーゼルデュアルフュエル(DDF)エンジンを搭載したDDFトラック、限られたユーザによってかなり以前から使用されて
いる。このDDFトラックに搭載されているDDFエンジンは,各シリンダの吸気ポートに設けたガスインジェクタから吸気弁
の開弁期間中に主燃料の天然ガスをシリンダ内に向かって噴射して運転するするエンジンである.その燃焼形態は,
シリンダ内に天然ガスの過濃領域と空気の多い領域に分けた不均一な混合気を形成させ,ディーゼルの高い圧縮比
を変えずに全負荷時に多量の天然ガスを供給した場合でもノッキングを生じさせないようにしたものである。そして,燃
焼室内にパイロット噴射した軽油の予混合気が最初に自己着火して火炎を形成し,この火炎が天然ガスの希薄予混
合気を燃焼させるエンジンである。

 このように、DDFエンジンでは燃料として単位発熱量当たりのCO2発生量が51g/MJと、単位発熱量当たりのCO2発
生量が69g/MJの軽油の両方を使用することがDDFエンジンの特徴である。そして、このDDFエンジンを搭載したDDF
トラックが実際の貨物輸送で消費する燃料は、50%が天然ガス、50%が軽油である。このように、DDFトラックでは使用
燃料の約半分が天然ガスによってが運行されるため、このDDFトラックのCO2排出量は、ディーゼルトラックのCO2排
出量よりも15%前後の削減が可能となる。このような、「CO2削減」や「50%程度の脱石油」が可能なDDFエンジンや
DDFトラックについて興味のある方は、ディーゼルに比べ15%のCO2削減が可能なDDFエンジンおよびDDF運転とデ
ィーゼル運転の選択が可能なDDF大型トラック に詳述しているので、御覧いただきたい。

 以上ように、DDFエンジンやDDFトラックの技術を実用化すれば、わが国の大型トラックの「CO2削減」や脱石油」が
容易に実現できるである。そして筆者はこのDDF技術について、日本自動車技術会の講演論文(著者:石田明男 他,
323 中型トラック用ECOS-DDF天然ガスエンジンの開発,学術講演会前刷集No.71-00,社団法人 日本自動車技術
会)を発表し、2006年には筆者のホームページでも詳細に説明しているのである。それにもかかわらず、(独)交通安全
環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、DDFエンジンやDDFトラックの技術を完全に黙殺される一方、
平成23年度〜平成26年度の期間に「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」のプロジェクトとして、大型車(=
大型トラック・トラクタ・バス)分野における低炭素(=CO2削減)の効果が期待できない「 高効率ハイブリッドトラック」、
「電気・プラグインハイブリッドトラック(小・中型)」、「高性能電動路線バス」および「次世代バイオディーゼルエンジン」
の無駄な研究を実施されているのである。(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏が本当に
日本の大型車(=大型トラック・トラクタ・バス)分野における「低炭素(=CO2削減)」や「脱石油」を推進する意思がある
のであれば、「次世代低害車開発・実用化促進事業(第3期)」(平成23年度〜平成26年度)の「 高効率ハイブリッドトラ
ック」、「電気・プラグインハイブリッドトラック(小・中型)」、「高性能電動路線バス」および「次世代バイオディーゼルエン
ジン」の無駄な研究を即刻に中止し、DDFエンジンを搭載した大型DDFトラックの開発研究に着手すべきと考える。

 このように、交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、「低炭素(=CO2削減)」や「脱石油」に
有効な「DDFエンジン」や「DDFトラック」の技術を無視しているが、スウェーデンのボルボ・トラックスは、2011年5月31日
に長距離輸送向けに大型DDFトラック(写真1参照)を発売(出典:http://www.volvotrucks.com/trucks/global/en-gb/
newsmedia/pressreleases/Pages/pressreleases.aspx?pubid=10743した。その発表によると、エンジンは13リットル、最
高出力は440HP(338kW)、最大トルクは2300Nmである。天然ガス(LNG)の利用率は75%であり、エンジンの熱効率
は、スパークプラグ式天然ガスエンジンに比べて、30〜40%高く、CO2排出量はディーゼルトラックに比べて10%削減
することができるとのこと。また、筆者がこれまで説明してきたように、走行中に天然ガス(LNG)を使い果たした場合に
は、軽油のみで走行することも可能である。2011年には100台程度をオランダ、イギリス、スウェーデンで販売する予定
で、8月から生産が開始されるとのことだ。今後、2年程度で、欧州の6〜8カ国で年間400台程度の販売が予定されて
いるようだ。

写真1 ボルボ・トラックスの大型DDFトラクタ

 このボルボの大型DDFトラックの発売情報を知った(独)交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸
氏は、さぞかし驚かれたのではないだろうか。このボルボの大型DDFトラックの発売によって、交通安全環境研究所の
後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、大型DDFトラックを無視する心の拠りどころを失い、戸惑いを感じているので
はないかと推察される。ボルボが天然ガスを燃料とするDDFトラックの市販を開始したことによって、数年前の金融危
機のリーマンショックならぬ「ボルボ ショック」とも呼べそうな衝撃を受けたものと推察される。果たして、交通安全環境
研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、これからも頑なに「CO2削減」や「脱石油」に有効なDDFトラックを無
視し続ける一方、わが国の脱石油と低炭素社会(=低CO2社会)の実現には殆ど貢献できない「次世代低害車開発・
実用化促進事業(第3期)」の「 高効率ハイブリッドトラック」、「電気・プラグインハイブリッドトラック(小・中型)」、「高性
能電動路線バス」および「次世代バイオディーゼルエンジン」の無駄な研究をこれからも熱心に継続して実施し続ける
のであろうか。

 筆者のような一般国民からすれば、欧州でボルボが「CO2削減」や「脱石油」に有効なDDFトラックの販売に踏み切
ったことを受け、交通安全環境研究所の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、世の中の流れを率直に受け入れて
これまでの交通安全環境研究所の研究方針を変更し、積極的に大型DDFトラックを開発する方向に大きく舵を切って
欲しいものだ。万が一でも、仮にそうなった場合には、わが国の大型トラックの分野において、大型DDFトラックによる
「CO2削減」と「脱石油」が推進できることになり、大いに好ましいことではないかと思っている。
 
 ところで、ボルボは、トラックメーカとしては世界で始めて「CO2削減」や「脱石油」に有効な大型DDFトラックの市販を
開始したが、残念なことに、このボルボの大型DDFトラック・トラクタに搭載されたエンジンは、旧式の技術とも云える吸
気管内噴射式のDDFエンジンである。一方、この旧式の吸気管内噴射式DDFエンジンの性能を更に向上できる新し
い技術が既に世の中に存在しており、それが天然ガスをシリンダ内に直接噴射する直噴式DDFエンジンである。この
直噴式DDFエンジンは、吸気管内噴射式DDFエンジンに比べ、DDFエンジンにとって重要な要素である「排出ガス性
能の向上」や「天然ガス(LNG、CNG)の使用割合を向上」できることが特徴である。

 したがって、仮に、日本で大型DDFトラックが開発されるのであれば、ボルボの吸気管内噴射式のDDFエンジ
ンを搭載した大型DDFトラックよりも優れた性能を持つ直噴式DDFエンジンを搭載した大型DDFトラック・トラ
クタを是非とも早期に実用化して欲しいところだ。そして、この大型DDFトラック・トラクタには、筆者が提案する直噴
式DDFエンジン(特許公開2008-51121)の技術を採用して欲しいものだ。その場合には、大型DDFトラック・トラクタは、
直噴式DDFエンジンを搭載しているにもかかわらず、「ディーゼル走行」と「DDF走行」との任意の走行モードを選択し
て運行できるようになるのである。 何はともあれ、わが国のディーゼル関係の学者・専門家やトラックメーカの大いな
る健闘が期待されるところである。

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