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最終更新日:2012年6 月17日
1.各社の小型ハイブリッドトラック(積載量2トンクラス)のシステム
ハイブリッドトラックでは、低い駆動力が必要な際にはモーター駆動にして熱効率の低いエンジン運転を削減し、
制動時に得た蓄電エネルギーを走行エネルギーに回生することによってトラックの燃費を改善することができる。そ の効果は都市内走行において顕著であるとのことから、各トラックメーカでは小型ハイブリッドトラックを商品化して いる。各社の小型ハイブリッドトラックは、細部においては多少の相違はあるものの、全社ともパラレル方式を採用 している。一例として図1に日野のデュトロハイブリッドトラック(積載量2トンクラス)のハイブリッドシステムを示す。 ![]()
2.トラックメーカ各社が過去に発表しているハイブリッドトラックの燃費改善
トラックメーカ各社が自社のハイブリッドトラックの燃費改善について、これまで発表・宣伝している記事を以下の
表1にまとめた。その内容を見ると、各トラックメーカがホームページ等で発表しているハイブリッドトラックの走行燃 費は、10〜50%の削減できるとのことである。
2007年頃のいすゞ自動車の発表記事によると、エルフディーゼルハイブリッドトラックは『通常の市街地走行でも約
10〜20% (*) 向上』と記載されている。しかし、注記には『* アイドリングストップによる燃費向上分(市街地走行で5〜 10%程度)を含む為、アイドルストップを行なわない場合、燃費向上率が少なくなる。』と付記されている。また、三菱 ふそうのハイブリッド小型トラックキャンターの発表記事にも同様の記載がある。これら2007年頃の記事を総合する と、2007年頃のトラックメーカが自ら発表して宣伝する小型ハイブリッドトラックの燃費改善の実力は、アイド ルストップの燃費改善を除くと『市街地走行で5〜10%程度』と推定される。
なお、UDトラックス(日産ディーゼル)は、キャパシタに蓄電する中型ハイブリッドトラックの燃費向上は50%と宣伝
しているが、燃費向上の実力はどのようなものであろうか。UDトラックス(日産ディーゼル)のキャパシタに蓄電する 中型ハイブリッドトラックを使用するユーザの意見を聞いてみたいものである。因みに、ホンダは、ある時期にキャ パシタに蓄電するハイブリッド乗用車を懸命に研究していた時期があったとの情報(出典:http://www.toyo-keizai. co.jp/news/opinion/2009/post_3183.php)がある。しかし、実際にホンダから市販されたハイブリッド乗用車は、バッ テリーに蓄電するタイプであった。ホンダが過去にキャパシタに蓄電するタイプのハイブリッドシステムの開発を中止 した理由、知りたいものだ。
3.トラック各社の小型ハイブリッドトラックの仕様と重量車モード燃費値
前述の表1に示したように、トラックメーカ各社がハイブリッドトラックに関する燃費改善の発表・宣伝している記事
では、ハイブリッドシステムによりトラックの走行燃費は10〜50%の削減が可能とのことである。しかし、以下の表3 を見る限り、小型ハイブリッドトラック(積載量2トンクラス)の重量車モード燃費値は小型デーゼルトラック(積 載量2トンクラス)重量車モード燃費値よりも10パーセント以下の程度しか改善されていないのである。
因みに、重量車モード燃費の計測や算出の際に、DPF装置の手動再生や強制再生のためにポスト噴射される燃
料の消費は全く算入されないことに注意すべきである。したがって、、DPFを搭載した通常の小型トラックにおいて は、実際の走行燃費はDPF装置の手動再生や強制再生のためのポスト噴射に多量の燃料が浪費されるため、重 量車モード燃費よりも大幅な低下を招いてしまうことになる。これに対し、小型ハイブリッドトラックの場合は、エンジ ン出力を増大させて排気ガス温度を上昇させて手動再生や強制再生を行い、過剰なエンジン出力を電動モータで バッテリーを充電するシステムとすることによってDPF装置の再生での燃料浪費を回避できるのである。したがっ て、小型ハイブリッドトラックの実際の走行燃費は、重量車モード燃費値からの低下は少ないのである。
表2 三菱ふそう・キャンター
表3 日野・デュトロ(データを調査中)
表4 いすゞ・エルフ(データを調査中)
以上のデータから明らかなように、トラックメーカ各社の小型ハイブリッドトラック(積載量2トンクラス)の重量車モ
ード燃費値は12.00〜12.80(km/リットル)であり、小型デーゼルトラック(積載量2トンクラス)重量車モード燃費値11. 00(km/リットル)よりも最大でも16%強の程度しか改善されているに過ぎない。このように、現在の小型ハイブリッド トラックは価格が100万円程度も高価であるにもかかかわらず、重量車モード燃費値の改善は16%程度に過ぎな いのである。
このように、通常の小型ディーゼルトラックの重量車モード燃費値に比べて、小型ディーゼルハイブリッドトラックの
重量車モード燃費値が最大の場合でも16%程度しか向上していないのだ。それにもかかわらず、前述の表2に示し たように IATSS ReviewのVol.33、No.3(2008年10月発行)の「自動車の環境・エネルギー技術に関わる将来展望」 において、大聖 早稲田大学教授は「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善が可能」とする記述されている のである。大聖 教授は如何なる資料・報告・試験データを根拠に「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善 が可能」と記述されているのであろうか。
また、前述の表1に示したように、トラックメーカ各社はハイブリッドトラックの燃費改善の向上について「ハイブリッ
ドシステムによりトラックの走行燃費は10〜50%の削減が可能」と発表し、宣伝している。このように、トラックメーカ 各社が発表しているハイブリッドトラックの燃費向上の割合は、小型ディーゼルハイブリッドトラックの重量車モード 燃費値の向上である16%強の程度を大きく上回っているようだ。筆者には不思議に思えて仕方がない。これらの理 由を御存じの方には、是非ともお教えいただきたいものである。
ところで、ハイブリッド乗用車のプリウスは10・15モード燃費が38(km/L)であるが、プリウスと同クラスの通
常の乗用車の10・15モード燃費が17〜18(km/L)となっている。このように、ハイブリッド乗用車の燃費は従 来の乗用車の燃費の2倍以上のレベルまでも改善されているようだ。しかし、小型ハイブリッドトラックの重 量車モード燃費値は、通常の小型トラックの重量車モード燃費値よりも16%強の改善に留まっているのが 現状だ。このように、小型ハイブリッドトラックの重量車モード燃費値の改善は、ハイブリッド乗用車の1/6程度に 過ぎない。このことから、小型ハイブリッドトラックのコストパーフォーマンスは、ハイブリッド乗用車よりも大きく劣っ ていることが明らかだ。
因みに、重量車モード燃費の計測や算出の際に、DPF装置の手動再生や強制再生のためにポスト噴射される燃
料の消費は全く算入されないことに注意すべきである。したがって、、DPFを搭載した通常の小型トラックにおいて は、実際の走行燃費はDPF装置の手動再生や強制再生のためのポスト噴射に多量の燃料が浪費されるため、重 量車モード燃費よりも大幅な低下を招いてしまうことになる。これに対し、小型ハイブリッドトラックの場合は、エンジ ン出力を増大させて排気ガス温度を上昇させて手動再生や強制再生を行い、過剰なエンジン出力を電動モータで バッテリーに蓄電し、その蓄電された電気エネルギーを電動モーターを駆動して走行のために消費することにより、 DPF装置の再生時に排気ガス温度の上昇のために消費された燃料は、小型ハイブリッドトラックの走行のために有 効に使われる。したがって、小型ハイブリッドトラックにおけるDPF装置の手動再生や強制再生では、燃料の浪費は 極めて少ないと考えられる。
したがって、小型ハイブリッドトラックにおいては、実際の走行燃費は重量車モード燃費値からの低下することが
少ないのである。そのため、DPF装置を搭載した最近の排出ガス規制に適合したトラックでは、小型ハイブリッドトラ ックの走行燃費は、通常の小型トラックの走行燃費よりも30%程度も燃費が良いデータが計測されているかもしれ ない。しかし、この場合は、通常の小型トラックがDPF装置での強制再生や手動再生による燃料浪費による走行燃 費の悪化を起こしているだけである。このことを根拠にして、小型ハイブリッドトラックの走行燃費が、通常の小型ト ラックの走行燃費よりも30%程度も向上していると考えるのは大きな間違いである。小型ハイブリッドトラックに比 較して通常の小型トラックにおける走行燃費の大幅な悪化は、ポスト噴射再生式のDPF装置の欠陥による燃料浪 費が原因であることを肝に銘じるべきである。
何はともあれ、現在、トラックメーカ各社から販売されている小型ハイブリッドトラック(積載量2トンクラス)の重量車
モード燃費値は12.00〜12.80(km/リットル)であり、通常の小型デーゼルトラック(積載量2トンクラス)重量車モード 燃費値11.00(km/リットル)よりも最大でも16%強の程度しか改善されているに過ぎないのである。このような燃費向 上の少ない小型ハイブリッドトラックを「低燃費」や「エコロジー」と声高に宣伝して販売していることについて、トラック メーカの人達は、責任のある社会人として恥ずかしさを感じていないのであろううか。
4.ハイブリッド乗用車に比較して小型ハイブリッドトラックの燃費改善が劣る理由
積載量2トンクラスの小型トラックにおけるハイブリッド仕様での重量車モード燃費の向上が通常の小型トラックに
比べて最大でも16%程度に止まっていることについて、筆者が推察した理由は以下の通りである。
【理由1】
小型トラックのハイブリッド仕様では従来のディーゼル仕よりも重量増加が著しいため、重量増加による走行燃費
の低下を招き、ハイブリッド仕様によるエンジン運転領域の制御による燃費改善のかなりの部分が相殺されること になる。(キャンターハイブリッドの重量は通常のキャンターより600kg程度(約17%)の増加である。)
【理由2】
都市内走行の乗用車は、図2に示したように中低速の燃料消費率の悪い30%以下のエンジン負荷の領域で運行
されることがほとんどである。ガソリンエンジンでは30%以下のエンジン負荷ではスロットル弁の絞り損失の影響も あってディーゼルよりも格段に熱効率が悪化する。しかし、ハイブリッドシステムでは熱効率の劣る乗用車のガソリ ンエンジンの運転領域をハイブリッドシステムによってモーター駆動で代替し、都市内走行での乗用車の燃費の劣 るエンジンの低負荷運転領域を削減することが可能となる。これのようにハイブリッド乗用車ではモーター駆動の併 用でエンジンの低負荷運転領域を削減して大幅な燃費改善が可能となる。その結果、ハイブリッド乗用車のプリウ ス10・15モード燃費は、同クラスの通常のガソリン乗用車の10・15モード燃費の2倍以上である38km/Lを達成してい るのである。
一方、小型トラックの多くは都市内での貨物集配の業務に使われている。その場合の小型トラックの運行は発進・
停止が多く、発進時の加速頻度が高いという特徴がある。これをエンジン運転領域における燃料消費率頻度分布 でみると、図3のように中低速の1/2負荷から全負荷の高負荷域での燃料消費量の多く、燃料消費率の劣る低負 荷運転の頻度が少ないのが特長である。小型トラックが乗用車よりも高負荷域で運行されるのは、乗用車よりもパ ワーウエイトレシオ(エンジン出力当たりのGVW[車両総重量])が数倍も大きいことも原因である。
燃料消費率の劣る低負荷運転の頻度が少ない小型トラックでは、低負荷のエンジンの運転領域をモーター駆動で
代替するハイブリッドシステムを装着してもモーター駆動を駆使できる機会が少ないため、ハイブリッドシステムによ る燃費改善の効果が十分に発揮できないことになる。このように、乗用車の都市内走行ではハイブリッドシステムに よる十分な燃費改善が可能であるが、小型トラックでは都市内走行においても低負荷でエンジンを運転する頻度が 少ないためにハイブリッドシステムによる燃費改善が得られ難い。以上の結果、減速以外の走行状態ではハイブリ ッドシステムは、燃費改善に寄与できる機会が極めて少なく、小型トラックでは無用の長物と見ることもできそうだ。
【理由3】
市内バスはバス停などで停車する必要があるため、都市内走行の小型トラック以上に発信と停止の頻度が多い
走行状態を呈している。このように加速と減速の多い市内バスでは燃料の殆どがバスの加速に消費され、ブレーキ による制動でエネルギーを消費しているものと見られる。そのような市内バスにおいて、仮に制動時のエネルギー が100%の効率で回収できたとすれば、市内バスの燃費は30%程度が改善できると聞いたことがある。逆に言え ば、発信・停止の頻度が多く、発信と停止の頻度が多い市内バスにおいても、例え制動エネルギーの100%が回収 できた場合でも、燃費は30%程度しか改善できないと言うことである。したがって市内バスよりも発信・停止の頻度 が少ない小型トラックの場合には、走行に消費するエネルギーに占める制動の頻度が減少するため、仮に制動エ ネルギーの100%が回収できたとしても燃費は市内バスの約半分の15%程度しか改善できないのではないかと推 測される。そして、実際のハイブリッドシステムの場合には、制動エネルギーの100%の回収が不可能なため、制動 による実走行時の燃費削減は、かなり少ない割合しか確保できないのが実情ではないだろうか。これについて正確 なデータをお持ちの方が居られれば、是非ともお教え頂きたいと願っている。
このようにハイブリッドシステムは、車両減速時の制動エネルギーを電動モーターで電気的に回収し、再走行や加
速時に使うことで、燃費を向上させることが目的である。その際、実際の発電機による制動エネルギーの回収率の 比率や電動モーターの効率およびバッテリーの充放電の効率を考慮すれば、都市内走行における小型トラックの 制動エネルギーの回生による燃費改善は、余り多くを期待しても無理と考えられる。実際に回生したエネルギーの 一部は理由1に示したハイブリッドシステムの重量増加による燃費悪化と相殺されてしまうため、ハイブリッド小型ト ラックの燃費改善はそれほど多くないことは確かなようだ。
5.実際の運行では燃費が削減されていない小型ハイブリッドトラックの実態
5−1.小型ハイブリッドトラックでは、燃費改善が皆無との生協流通新聞の記事
生協流通新聞(バックナンバー2006年6月20日号)(出典:http://www.seikyo-net.co.jp/backnumber/back-
no060620.html)にトヨタと日野が開発した小型ハイブリッドトラックの実用燃費の報告記事を表5示した。この報告記 事によると小型ハイブリッドトラックとディーゼルトラックの実用燃費はほぼ同等とのことである。
以上の2006年6月20日の新聞記事によると、当時のトヨタと日野の小型ハイブリッドトラックの実用燃費は、通常
の小型ディーゼルトラックと同等であったとのこと。なお、この記事の実用燃費の比較に用いられた当時の通常の 小型ディーゼルトラックは、都市内走行での走行燃費を30%も悪化させるポスト噴射再生式または排気管噴射再 生式のDPF装置が未装着の車両であったと推定して間違いは無いと考えられる。
さて、従来よりハイブリッドトラックは、低い駆動力が必要な際にはモーター駆動して熱効率の低いエンジン運転を
削減したり、制動時に得た蓄電エネルギーを走行エネルギーに回生することによってトラックの燃費が改善できると 盛んに宣伝されている。しかし、実際には小型ディーゼルトラックの負荷頻度は図3に示したように『中低速の1/2負 荷から全負荷の高負荷域での燃料消費量の多いこと』や『ディーゼルエンジンでは部分負荷時の燃費がガソリンエ ンジンに比較して顕著に悪化しないこと』および『トラックの制動時に得た蓄電エネルギーを走行エネルギーに回生 できるエネルギーが多くないこと』が原因で上記の新聞記事のように小型ハイブリッドトラックの実用燃費が改善さ れなかったと推察される。
トヨタと日野の小型ハイブリッドトラックの実用燃費は、その後の改良によりどの程度の改善されたのであろうか。
是非とも知りたいものである。そうは云っても2006年6月当時と現在のトヨタと日野の小型ハイブリッドトラックは改良 によって仕様が多少とも変更されているとしてもハイブリッドの基本形態は同一であることから、画期的に燃費が改 善されているとは考え難い。現時点で小型ハイブリッドトラックの販売シェアは数パーセントとのことであることから 考え、現行の小型ハイブリッドトラックにおいては大きな燃費改善が得られていないと考えても大ききな間違いは無 いのではないだろうか。小型ディーゼルトラックよりも100万円程度も高価なためにコストメリットの劣る小型ハ イブリッドトラックを購入するユーザが少ないことは当たり前であり、小型ハイブリッドトラックの販売シェアが 1%程度に留まっているのは至極、当然のことと考えられる。
昔、筆者が総合電機会社の商品企画の人から『世の中には3%の変わり者がおり、どのような変な商品を発売し
ても必ず売れる』との話を聞いたことがある。『小型ハイブリッドトラックでは燃費が改善する』とのメーカやマスコミ の宣伝を安易に信じたユーザが、、実用走行での燃費向上が得られなくても「エコの姿勢の宣伝道具」や「物珍し さ」で小型ハイブリッドトラックを購入しているのではないかと思っている。したがって、今後、小型ハイブリッドトラック の販売台数が飛躍的に増加することは無いものと予想される。
5−2.これまでの小型ハイブリッドトラックでは、燃費改善が皆無とのユーザ意見を認めた日野自動車
下記の表6に示したように、2011年8月14日16:00版のMSN産経ニュース(出典:http://sankei.jp.msn.com/
economy/news/110814/biz11081416010003-n1.htm)では、日野自動車のHV技術の開発を担当した山口公一 チ ーフエンジニア は、日野自動車がこれまで発表・宣伝していた30%の燃費改善を発表・宣伝していた小型ハイブリ ッドトラック・デュトロの顧客のヒアリング調査を実施した結果、『小型ハイブリッドトラックがディーゼル車より燃費が 悪い』との意見のあることを認めているのである。つまり、30%の燃費改善を発表・宣伝していた日野自動車のトラ ックを実際に購入したユーザがそのトラックを実際に運行・使用した場合、燃費改善が皆無であったとのことであ る。 ![]()
このことは、表5に示した2006年6月20日の生協流通新聞の記事(出典:http://www.seikyo-net.co.jp/
backnumber/back-no060620.html)に「トヨタと日野が開発した小型ハイブリッドトラック・デュトロの実用燃 費は、通常の小型ディーゼルトラック・デュトロの実用燃費とほぼ同等であり、ハイブリッドシステムによる燃 費改善は皆無である」ことの事実を、日野自動車は2011年8月になって初めて認めたことになる。これは、日 野自動車が小型ハイブリッドトラック・デュトロでの実用燃費の改善が皆無であるとのユーザの指摘を5年近くも無 視していた計算だ。そして、日野自動車は、表6に示した生協流通新聞の記事のようなユーザから燃費改善不良の 指摘を5年も前から受けていながら、その後も相変わらず30%もの実用燃費が改善できるトラックと宣伝し、小型 ハイブリッドトラック・デュトロを販売し続けていたのである。
この、表5に示した2006年6月20日の生協流通新聞の記事(出典:http://www.seikyo-net.co.jp/backnumber/
back-no060620.html)に「トヨタと日野が開発した小型ハイブリッドトラック・デュトロの実用燃費は、通常の小型ディ ーゼルトラック・デュトロの実用燃費とほぼ同等であり、ハイブリッドシステムによる燃費改善は皆無である」ことの事 実を、日野自動車は2011年8月になって表7に示した通りに初めて認めたにである。このことは、トヨタと日野が開発 した小型ハイブリッドトラック・デュトロの実用燃費が通常の小型ディーゼルトラック・デュトロの実用燃費の改善が皆 無であることを、日野自動車が認めている事柄である。
このように、トヨタと日野が開発した小型ハイブリッドトラック・デュトロは、従来の小型ディーゼルトラックに比べて
ハイブリッドシステムによる燃費改善が皆無であることを日野自動車が認めているのである。それにもかかわらず、 表2−1および表2−2に示した大聖 早稲田大学教授の論文には、小型ハイブリッドトラックについて、ハイブリッ ドトラックの燃費向上が20〜30%と述されている。
また、日野自動車は、表6に示した2011年8月14日16:00版のMSN産経ニュースでは、「日野自動車は小型トラッ
ク「デュトロ」を12年ぶりに全面改良し、「アトキンソンサイクル」と「モーターとエンジンの間にクラッチを配置」等の 対策により、街中などでの実燃費を50%以上改善できたと発表している。因みに、この中の「モーターとエンジンの 間にクラッチを配置」の技術は、三菱ふそうの小型ハイブリッドトラック・キャンターでは2006年7月の発売当初より採 用している技術である。しかし、この技術を発売当初から採用している小型ハイブリッドトラック・キャンターの重量車 モード燃費は、表3に示したように、普通のキャンターに比べて16%程度の燃費しか改善できていないのである。
果たして、2011年7月に発売された新型の小型ハイブリッドトラック・デュトロは、表7に示したMSN産経ニュース
の記事のように、街中などでの実燃費を50%以上も改善することが本当に実現できているのであろうか。これまで の30%の燃費改善を発表・宣伝していた小型ハイブリッドトラック・デュトロの燃費改善が皆無であったことを考える と、今回の日野自動車が発表した新型ハイブリッドトラック・デュトロの50%以上の燃費改善については、筆者なら ずとも、多くの人は疑問に思っているのではないだろうか。特に、筆者の常識では、小型ハイブリッドトラックにおけ る「アトキンソンサイクル」と「モーターとエンジンの間にクラッチを配置」等の技術を新たに採用しているとしても、街 中などでの実燃費をこれまで小型ハイブリッドトラック・デュトロの燃費を更に数十パーセントも上乗せした燃費改善 が実現できているとは、とても考えられないのである。
何はともあれ、現在の小型ハイブリッドトラックのデュトロのユーザの中には、小型ハイブリッドトラックでの燃費改
善が「皆無」若しくは「不十分」であることについて、数多くのユーザが日野自動車に対して強い不満・クレームを表 明しているものと推察される。このようなことから、トラックメーカが小型ハイブリッドトラックでの低燃費の宣伝を行っ ているとしても、普通の小型ディーゼルトラックに比較し、現在の小型ハイブリッドトラックのハイブリッドシステムで の燃費向上が極めて少ないことは、事実のようである。このように、多くの燃費改善が得られていない現行の小型 ハイブリッドトラックにもかかわらずついて、従来と同様に、これからもトラックメーカが燃費改善の誇大広告と思しき 宣伝を続けて行くようであれば、トラックユーザの信頼を失ってしまうのではないだろうか。
6.論文で発表されているハイブリッドトラックの燃費改善
表7に示したように、財団法人 国際交通安全学会から刊行されているIATSS ReviewのVol.33、No.3(2008年10
月発行)に掲載されている論文「自動車の環境・エネルギー技術に関わる将来展望」では、著者の大聖泰弘 早稲 田大学教授は、「ディーゼルトラックのパラレルハイブリッド車が登場しており、20%から30%の燃費改善を可能に している」と記述されている。
前述の表1に示したように、トラックメーカが自ら発表し、宣伝している情報を総合すると、小型ハイブリッドトラック
の走行燃費の向上は、10〜50%とのことである。一方、表7−1のIATSS ReviewのVol.33、No.3(2008年10月発 行)の「自動車の環境・エネルギー技術に関わる将来展望」(著者:大聖泰弘 早稲田大学教授)、および表7−2の 自動車技術(Vol.65,No.9,2011) 2011年9月1日発行)の「自動車用エンジン技術開発の現状と将来において」におい て、大聖教授は「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善が可能」と記述されている。このことから、大聖教 授がハイブリッドトラックの燃費向上が20〜30%と記述されている燃費改善の根拠が、トラックメーカの小型ハイ ブリッドトラックの燃費削減の発表・宣伝の記事であると推測できなくもない。しかし、正確度や信頼性の劣るトラック メーカの燃費削減の宣伝記事をハイブリッドトラックの燃費改善のデータとして大聖教授が論文に記述されている可 能性は皆無であろう。
これら表7−1および表7−2に示した大聖教授に論文では、ハイブリッドトラックの燃費向上が20〜30%と記述
されている。しかし、大聖教授は、このハイブリッドトラックにおける20〜30%の燃費改善の根拠が何も示されてい ない。そのため、ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善が可能とする記述は、大聖教授の第六感による個 人的な主張であろうか。そうでなければ、その主張の根拠とされた資料・出典等を是非とも御開示いただきたいもの だ。なぜならば、表2の小型ハイブリッドトラックと普通に小型ディーゼルトラックとの重量車モード燃費値の比較で は、ハイブリッドトラックの燃費向上が16%程度に過ぎないからである。また、5−1項の生協流通新聞(バックナン バー2006年6月20日号)(出典:http://www.seikyo-net.co.jp/backnumber/back-no060620.html)の小型ハイブリ ッドトラックに関する生協流通新聞の記事では、ハイブリッドトラックの燃費向上が皆無とのことである。そして、5− 2項の表6に示したように、2011年8月14日16:00版のMSN産経ニュース(出典:http://sankei.jp.msn.com/economy /news/110814/biz11081416010003-n1.htm)では、最近、日野自動車のHV技術の開発を担当している山口公一 チーフエンジニア は、日野自動車がこれまで発表・宣伝していた30%の燃費改善を発表・宣伝していた小型ハイブ リッドトラック・デュトロでの燃費改善が皆無とのユーザ意見を正直に認めているのである。それにもかかわらず、表 7−1および表7−2に示した大聖教授の論文では、ハイブリッドトラックは燃費が20〜30%の向上が可能と述べ られている。この「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費の向上が可能」との大聖教授のご意見・主張が、筆者 には不思議に思えて仕方の無いことであり、どうしても理解できないのである。
ところで、話は変わるが、DPF装置を装着した小型ハイブリッドトラックでは、DPF装置の強制再生や手動再生の
際にはポスト噴射や排気管内噴射で排気温度を上昇させるため、DPF装置の再生時にはポスト噴射や排気管内噴 射による多量の燃料を浪費してしまう欠点がある。そのため、このページの「7.ハイブリッドシステムの唯一の効能 は燃料を浪費しないDPFの再生機能」の項に詳述しているように、新長期規制(H17年)適合以降のDPF装置を装着 した小型トラックが発進・停止が多い都市内走行では、DPF装置を装着していない新短期規制(H15年)適合の小型 トラックに比べ、30%前後も燃費が悪化してしまうのである。
しかし、DPF装置を装着した小型ハイブリッドトラックでは、DPF装置の強制再生や手動再生の際にはポスト噴射
または排気管内噴射で排気温度を上昇させるのでは無く、エンジン出力を増大させて排気温度を上昇させることが 可能である。このように、小型ハイブリッドトラックでは、DPF装置の強制再生や手動再生の際にエンジン出力を増 大させて排気温度を上昇させることにより、余分なエンジン出力で発電機を駆動し、この発電機で発電した電気エ ネルギーをバッテリーに蓄電するのである。そして、この小型ハイブリッドトラックでのDPF装置の強制再生や手動 再生の際の発電した電気エネルギーは小型ハイブリッドトラックの走行に消費することができるため、小型ハイブリ ッドトラックでのDPF装置の手動再生や強制再生の際の燃料浪費を無くすことができるのである。
このように、DPF装置を装着した小型ハイブリッドトラックは、燃費悪化の原因となるポスト噴射または排気管内噴
射によってDPF装置を再生する必要が無い。したがって、「小型トラックにおけるハイブリッドシステムでは、仮に DPF装置の強制再生や手動再生を頻繁に行ったとしても、ポスト噴射または排気管内噴射に起因する30%の燃費 悪化を引き起こすことは無いのである。そのため、新長期規制(H17年)以降の排出ガス規制に適合したDPF装置 を装着した小型トラックの範疇において、小型ハイブリッドトラックと通常の小型ディーゼルトラックの走行燃費を比 較した場合、小型ハイブリッドトラックは通常の小型ディーゼルトラックよりも走行燃費が30%程度も向上している ように見えるのだ。 る30%の燃費悪化を防止できる機能」を備えていると見なすことが可能なため、表7-1(IATSS ReviewのVol.33、 No.3(2008年10月発行)の「自動車の環境・エネルギー技術に関わる将来展望」)や表7-2(自動車技術のVol.65,No. 9,2011(2011年9月1日発行)「自動車用エンジン技術開発の現状と将来」)の論文において、大聖教授は「ハイブリッ ドトラックの走行燃費は、20〜30%の削減できる」と主張されているのであろうか。このように、ハイブリッドトラック がDPF装置の再生によって生じる30%の燃費悪化をリカバリーできることを捉えて、ハイブリッドトラックでは20〜 30%の燃費改善が可能と称賛することは不適切ではないかと考えられる。本来は、新長期規制(H17年)やその後 のポスト新長期規制に採用されて「30%前後の実走行燃費の悪化」を引き起こしているポスト噴射再生式または排 気管内噴射式のDPF装置が再生の際に小型トラックの走行燃費を30%も悪化させている欠陥が厳しく指弾される べきである。したがって、このような機械工学的に見て明らかに不合理な事象を根拠に、大聖教授が「ハイブリッドト ラックでは20〜30%の燃費改善が可能」と当該論文に記述されることは、常識的に考えて有り得ないと考えられ る。
以上のように、筆者の乏しい知識を総動員し、表7-1の「IATSS Review」誌や表7-2の「自動車技術」誌において、
大聖教授が「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善が可能」と記述されている根拠を推察した。しかし、何 れの推定も「的外れ」のように考えられる。このように、表5 生協流通新聞(2006年6月20日号)に掲載された小 型ハイブリッドトラックの実用燃費が報告や、表6 2011年8月14日16:00版のMSN産経ニュースの記事において、 通常の小型ディーゼルトラックに比べて小型ハイブリッドトラックの燃費が全く向上できていないとの記事・情報があ るにもかかわらず、大聖教授が「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善が可能」との記述の根拠とされた 文献や情報源が明示されていない。大聖教授が「ハイブリッドトラックでは20〜30%の燃費改善が可能」と主張さ れている根拠を、是非ともお教えいただきたいと思っている。
7.ハイブリッドシステムの唯一の効能は、燃料を浪費しないDPFの再生機能
このホームページの他のページ「各社の新長期排出ガス規制(2005年)対応技術」に示したように、新長期規制
(H17年)適合の小型ディーゼルトラックには全社ともトラックにポスト噴射再生式DPF装置を採用している。ところ が、このポスト噴射再生式DPF装置は燃料を浪費するコモンレールのポスト噴射によってフィルタを再生する構造の ため、走行中の自動再生や停車中の手動再生による燃費悪化の欠陥があるようだ。そのため、表8に示したよう に、ポスト噴射再生式DPF装置が装着されていない新短期規制(H15年)の小型トラッックの実走行燃費が7〜8q/ リットル程度であったのに対し、新たにポスト噴射再生式DPF装置が装着された新長期規制(H17年)適合の小型デ ィーゼルトラックの実走行燃費は5〜6q/リットル程度まで悪化している。新長期規制(H17年)適合の小型ディ ーゼルトラックでは都市内走行での発進・停止が多いためにポスト噴射によるDPF装置の再生頻度が増加 して燃料の浪費が増大し、それ以前のDPF装置が無くてポスト噴射の不要な新短期規制(H15年)適合の小 型ディーゼルトラックに比べて実走行燃費が30%前後も悪化しているのである。
一方、小型ハイブリッドトラックは、低い駆動力が必要な際にはモーター駆動として熱効率の低いエンジン運転を
削減したり、トラックの制動時に得た蓄電エネルギーを走行エネルギーに回生することによってトラックの燃費が改 善できると盛んに宣伝されている。しかし、前述の通り、小型トラックにおいてはハイブリッドシステムによる燃費改 善は微々たるもののようだ。小型ハイブリッドトラックにおけるハイブリッドシステムのメリットは、DPF装置のフィルタ 再生の機能と考えられる。小型ハイブリッドトラックではDPF装置のフィルタ再生時にはコモンレールのメイン噴射を 増加させてエンジン出力を増大させ、排気ガス温度を高温化してDPF装置のフィルタ再生を行うことが可能である。 そして、この時の余分なエンジン出力はハイブリッドシステムの発電機で電気エネルギーに変換してバッテリーに蓄 電される。このようして排気ガス温度を高温化するための増加したコモンレールのメイン噴射の燃料は電気エネル ギーとして蓄電されるため、小型ハイブリッドトラックでは、燃料を浪費することなくDPF装置のフィルタ再生が可能と なる。つまり、小型トラックにおけるハイブリッドシステムは、走行時の燃費を改善する機能は劣るが、コモンレール のポスト噴射を使用しないでDPF装置のフィルタ再生ができるために燃費悪化が防止できることが最大のメリットと 考えられる。そのため、小型トラックにおけるハイブリッドシステムの主な機能は、燃費の増加が防止できる DPFの再生装置と考えても間違いではないように考えられる。
ところで、燃費悪化のポスト噴射を止め、気筒休止でDPFを再生する新技術のページで詳述しているが、通常の
新長期規制(H17年)適合の小型ディーゼルトラックのポスト噴射再生式DPF装置では、コモンレールによるポスト噴 射を行うことによって走行中の自動再生や停車中の手動再生が行われるため、実走行燃費約が30%前後も悪化 する問題を抱えている。しかし、小型ハイブリッドトラックではコモンレールのポスト噴射を使用せずにハイブリッドシ ステムを有効に使うことによってDPF装置の再生が可能であり、この再生による実走行燃費の悪化は全く無いと考 えられる。言い換えれば、DPF付き小型ディーゼルトラックではポスト噴射再生式DPF装置のフィルタ再生のために コモンレールによるポスト噴射で燃費を悪化させているが、小型ハイブリッドトラックではポスト噴射による燃料を浪 費することなくDPF装置のフィルタ再生が可能である。その結果、2009年現在では、新長期規制(H17年)適合の 小型ハイブリッドトラックでは7q/リットル程度の実走行燃費となり、新長期規制(H17年)適合の小型トラック30% 前後もの燃費改善が実現できているのではないかと予想される。このことは、前述のハイブリッドシステムによる3 0%前後もの燃費改善の宣伝文句が正しいこととなるが、ハイブリッドシステムのメリットがDPF装置の燃料浪 費の防止だけでは、高価な小型ハイブリッドトラックのユーザにとっては納得のできないことである。
前述の通り、コモンレールによるポスト噴射による再生機能のポスト噴射再生式DPF装置の装着した新長期規制
(H17年)適合の小型ディーゼルトラックは、それ以前のポスト噴射再生式DPF装置が未装着の新短期規制(H15年) 適合の小型ディーゼルトラックに比べて実走行燃費が30%前後も悪化していることに注目すべきである。新長期規 制(H17年)適合の小型ディーゼルトラックの実走行燃費が5〜6q/リットルであることを基準とし、新長期規制(H17 年)適合の小型ハイブリッドトラックの実走行燃費が7〜8q/リットル(筆者の推測値)程度であることを比較し、小 型ハイブリッドトラックの実走行燃費が30%も改善していると宣伝することは問題があるのではないだろうか。なぜ ならば、新長期規制(H17年)適合の小型ハイブリッドトラックの7〜8q/リットルの実走行燃費は、以前の新短期規 制(H15年)のDPF装置が装着されていない小型ディーゼルトラッックの実走行燃費と同等レベルであり、実走行燃 費が少しも改善されていないと見られるためである。
8.大型ハイブリッドトラックは、積載量減少の欠陥により、将来の普及の可能性が皆無
国内では公道を自由に走行できる単車の大型トラックは、GVW(車両総重量)が25トン以下とする規定が設けられ
ている。そのため、ハイブリッド化による車両本体の重量増加した場合には、車両本体の重量増加重量と等しい貨 物積載の重量を減少せざるを得ないのが現状である。ところが、この大型トラック(GVW25トン)における車両本体 の重量増加による貨物積載量の減少割合は、その減少割合で貨物輸送のコスト増加を引き起こしてしまうことにな る。そのため、トラック運送業者は、高性能化による多少の燃費向上が得られる場合でも、従来よりも車両本体の 重量増加した大型トラック(GVW25トン)を厳しく嫌悪しているのが現状だ。したがって、トラック運送業者が車両本体 の重量増加した大型トラック(GVW25トン)を購入し、貨物輸送の業務に使用する可能性は殆ど無いものと考えられ る。
そのため、トラック運送業者は、先進の技術を駆使した高性能な大型トラック(GVW25トン)が公表・発表されようと
も、積載量が減少した大型トラック(GVW25トン)については、実際の貨物輸送に使用できないため、何の興味も示 さないのが普通である。トラックメーカは、そのことを熟知しているため、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)を開 発して10%程度の燃費向上が得られたとの最近の三菱ふそうの発表では、この大型ハイブリッドトラック(GVW25ト ン)におけるハイブリッド化による車両本体の重量増加は、公表していないようである。その理由は、ハイブリッド化 による車両本体の重量増加よって、積載量の減少によるトラック運送業者から「実用性に劣る!」との痛烈な批判 を受け、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)での10%の燃費向上の宣伝効果を毀損してしまうと、三菱ふそうが 危惧したためではないかと推察される。
既に実用化されている中・小型ハイブリッドトラックの例から類推すると、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)で
は、長い下り坂を含む制動(ブレーキ)時の走行エネルギを電気エネルギに変換して貯蔵し、加速時などに使うこと で、十分に燃費を向上できるハイブリッドトラック化を図るためには、排気量10L以上で400馬力程度のエンジンをア シストするためのかなり大きなモータ(100kW以上)が必要である。そして、その電気エネルギを貯蔵しておくための 十分な容量の蓄電池が必要となる。通常のGVW25トンの大型トラックでは15トン程度の貨物積載が可能であるが、 ハイブリッドトラック化のための大出力のモータと大容量の大型電池による重量増加が4〜5トン程度となると予想さ れる。そのため、従来のディーゼル大型トラックラックの積載量が15トン程度であるのに対し、大型ハイブリッドトラッ ク(GVW25トン)の積載量は10〜11トン程度に激減してしまうことになる。
仮に優れた技術力を備えたトラックメーカが技術の粋を集めて大型トラックをハイブリッド化し、このハイブリッド化
による車両本体の重量を通常の大型トラック(GVW25トン)より2トン程度の増加の抑えた高性能大型ハイブリッドト ラック(GVW25トン)を開発できたとした場合でも、通常の大型トラック(GVW25トン)の積載量が15トンであるのに対 し、この高性能大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)では、貨物の積載量が13トンに減少してしまう欠点を持つこと になる。この場合、この高性能大型ハイブリッドトラックの積載量は、通常の大型トラックよりも13%も減少すること になる。その結果、高性能大型ハイブリッドトラックでは、貨物輸送のコストが13%の増加となる不利益を被ってしま うことになる。ここで、高性能大型ハイブリッドトラックの燃費が仮に10%程度の改善が得られたとしても、運転手の 人件費を含む貨物輸送のコスト全体の中の一部である燃料費の10%程度が削減できただけである。そのため、高 性能大型ハイブリッドトラックにおける燃費改善は、高性能大型ハイブリッドトラックにおける貨物輸送のコスト悪化 の13%の中の数%が良化できるに過ぎない。
そして、高性能大型ハイブリッドトラックによって貨物を輸送した場合、仮に高性能大型ハイブリッドトラックの輸送
による輸送コストの増加分を荷主に請求したとしても、運送会社の都合で高性能大型ハイブリッドトラックによる貨 物輸送のコスト増加分を荷主が支払いに応じないことは間違いないと予測される。そのため、高性能大型ハイブリ ッドトラックによる貨物輸送によるコスト増加分は、運送会社が負担することになるよ予想される。したがって、運送 会社が高性能大型ハイブリッドトラックを導入した場合には、経営悪化の元凶になることは、誰でも容易に予想され ることである。そのため、仮に高性能大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)が開発できたとしても、積載量の減少を 伴う高性能大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)は、通常の大型トラック(GVW25トン)に比べて貨物輸送のコスト高 の欠陥が存在するため、将来的な普及が全く見込めない大型トラックと考えられる。
このように、トラック運送業者が、将来、仮に通常の大型トラック(GVW25トン)よりも貨物積載量の減量を確実に
余儀なくされる大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)を導入した場合には、必然的に貨物輸送のコスト増加を招くた め、運送会社の経営に悪影響を及ぼすことは明白である。そのため、殆どのトラック運送業者は、積載量の劣る大 型ハイブリッドトラック(GVW25トン)を実際の貨物輸送に使用することが無いと考えられる。
ところで、日本の低炭素と脱石油に無効な技術を研究する交通安全環境研究所のページに詳述しているように、
(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏が、高効率の大型ハイブリッドト ラック(GVW25トン)の研究開発を実施しているようだ。しかし、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)の開発が成功 したとしても、積載量の減少の欠陥を持つめに、トラック運送業者が実際の貨物輸送に使用しないものと考えられ る。そのため、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏の狙いとする高効 率大型ハイブリッドトラックの普及による低炭素社会(=低CO2社会)の実現を図るとする目標は、実現することが 不可能と思えるのだ。したがって、(独)交通安全環境研究所における高効率ハイブリッドトラックの研究は、試験研 究費の無駄使いのように思えるのである
それとも、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、ハイブリッド化に
よる車両本体の重量増加が皆無であり、通常の大型トラック(GVW25トン)と同等の積載量の大型ハイブリッドトラッ ク(GVW25トン)が実際に開発できるとの技術者・研究者らしからぬ非常識な思考回路の人達であろうか。そのよう なことが仮に事実であれば、(独)交通安全環境研究所 環境研究領域の後藤 雄一氏とそのグループの諸氏は、 技術者・研究者としては失格のように思うが、如何なものであろうか。
9.気筒休止は小型ハイブリッドトラックの燃費削減に有効な技術
前述のように、ハイブリッド乗用車については、プリウスの10・15モード燃費値が 38 km/リットルであるのに対し、
プリウスと同クラスの通常の乗用車の10・15モード燃費値は 17〜18 km/リットルである。このように、プリウスは、 同クラスの通常の乗用車の2倍以上(=100%以上)も10・15モード燃費値が向上できているのである。そのた め、プリウスの人気は極めて高く、世界中で販売台数を伸ばしている。
これに対し、小型ハイブリッドトラックについては、表1に示した三菱ふそうの積載量2トンの小型トラック・キャンタ
ーの例ではハイブリッドトラックの重量車モード燃費は 12.80 km/リットルであり、通常のキャンターの重量車モード 燃費は 11.00 km/リットルだ。このように、小型ハイブリッドトラックは、同クラスの通常の小型トラックよりも1 6%程度の燃費しか改善できていないのである。
しかも、三菱ふそうの小型ハイブリッドトラック(キャンター)は、通常の小型トラック(キャンター)よりも重量
車モード燃費が僅か16%の燃費しか削減できていないにもかかわらず、車両価格が通常の小型トラックよ りも100万円程度も高価だ。そして、ハイブリッドキャンターの車両総重量は通常のキャンターよりも約600 kg もの重量増加となっているのである。この小型ハイブリッドトラックのキャンターについて、三菱ふそうは「小型トラッ クで国内最高の燃費性能を実現」と説明し、「燃費性能をより一層高めました。同時にそれぞれのCO2排出量も大 幅に減らし、高い次元の燃費性能と環境性能を合わせもった『ハイブリッドトラック』として更なる進化を遂げまし た。」と宣伝しているのである。何はともあれ、16%強の程度の僅かな燃費向上にもかかわらず、100万円も 高価な小型ハイブリッドトラックのキャンターは、コストパーフォーマンスが大幅に劣っている小型トラックであ ることだけは間違いないだろう。
したがって、小型トラックのユーザは、現状の燃費性能の小型ハイブリッドトラック(キャンター)を購入する意欲が
湧いてこないのは当然のことと考えられる。他のトラックメーカの小型ハイブリッドトラックの燃費性能と車両価格も 三菱ふそうのハイブリッド・キャンターの場合と似たようなもにである。そのため、国内での小型トラックの販売に占 める小型ハイブリッドトラックの販売シェアは、1%程度に留まっているようだ。小型ハイブリッドトラックの燃費が1 6%程度しか向上できていない現状では、今後、トラックメーカが小型ハイブリッドトラックを「低燃費」であると声高 に宣伝したとしても、今後とも、100万円も高価な小型ハイブリッドトラックの販売倍数が増加することは、極めて困 難なことではないかと予想される。
以上のように、現在、ハイブリッド乗用車の場合には通常の乗用車の燃費の2倍まで燃費が向上(100%の燃費
向上)できているが、小型ハイブリッドトラックの場合には通常の小型トラックの16%強の程度の燃費向上しか得ら れていないのである。したがって、小型ハイブリッドトラックの燃費を向上するためには、新たなアイデア・技術の導 入が必要なことは明らかだ。この小型ハイブリッドトラックの燃費の向上のために、筆者が提案する方法は、小型ハ イブリッドトラックのエンジンに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を搭載することだ。
既に、ホンダのハイブリッド乗用車「インサイト」は、気筒休止エンジンを採用して燃費削減を図っており、「軽量」で
「低コスト」のハイブリッド乗用車として数年前から市販されている。気筒休止エンジンを採用したホンダのハイブリッ ド乗用車「インサイト」と、従来のエンジンを採用したトヨタのハイブリッド乗用車「プリウス」の仕様の比較を表9に示 した。
この表8を見ると、トヨタのハイブリッド乗用車「プリウス」は、ホンダのハイブリッド乗用車「インサイト」に比較して6
倍のモーター最高出力(プリウス:82kW、インサイト14kW)、4倍のニッケル水素バッテリー(プリウス28個、インサイト 7個)が搭載されている。このことからも、トヨタの「プリウス」は、ホンダの「インサイト」に比べ、車両重量の重い高価 なハイブリッドシステムであることが明らかだ。このような大容量のバッテリーと高出力モーターを搭載したことによ り、トヨタの「プリウス」は、ホンダの「インサイト」に比較して都市内走行に相当する燃費である10・15モード燃費(km/ L) が27%優れ、JC08モード燃費(km/L)が25%も勝ったモード燃費を実現しているようだ。しかし、この燃費は、あく までもエンジン制御を駆使したモード燃費であり、実際の走行燃費と異なることを肝に銘じておくべきだろう。
このように、大出力のモータと大容量のバッテリーを搭載した高価で車重の重いハイブリッドシステムのトヨタのハ
イブリッド乗用車「プリウス」は、ホンダの「インサイト」に比べて都市内走行の場合の燃費が大きく改善できているの である。一方、ホンダのハイブリッド「インサイト」は、気筒休止エンジンを採用しているため、トヨタのハイブリッド乗 用車「プリウス」と異なり、気筒休止エンジンによる高速道路の走行の場合の低燃費化が可能である。そのため、ホ ンダのハイブリッド「インサイト」の高速道路走行の燃費は、トヨタの「プリウス」に比べ、低燃費となる可能性が高い と考えられる。このように、トヨタのハイブリッド乗用車「プリウス」ではモード燃費計測と同様の都市内走行では低燃 費化に優れいているが、気筒休止エンジンのホンダのハイブリッド乗用車「インサイト」は、高速道路の走行では低 燃費で走行できるのである。したがって、都市内走行の多いユーザにはプリウスが好ましく、高速道路の走行が多 いユーザは「インサイト」が好ましいのではないかと考えられる。
因みに、インターネットの掲示板に、プリウスとインサイトにおける実際の走行燃費について、以下の表10に示し
たような書き込みがあった。
勿論、ホンダの低コストで軽量級のハイブリッド「インサイト」の気筒休止システムは、従来の普通の乗用車に比べ
れば、都市内走行と高速道路走行のいずれにおいても、走行燃費の大幅な向上が実現されていることには疑いの 余地は無い。そこで、車両重量の増加に伴う貨物積載量の減少を避けたいトラックにおいては、このホンダのハイ ブリッド乗用車と同様の軽量級のハイブリッドシステムは、トラック用としては最適であると考えられる。したがって、 ハイブリッドトラックに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を採用した場合には、現行のハイブリッドト ラックに対しての大幅な車両重量の軽減が可能であり、この車両重量の軽減によって積載量の増加を実現できる 上に、車両コスト も大きく削減させることも可能だ。
そのため、通常の小型トラックに比べて最大でも16%程度の重量車モード燃費の向上に過ぎない現在の
小型ハイブリッドトラックは、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を新たに追加してエンジン燃 費の改善を図ることにより、5〜10%の燃費向上を上乗せすることが可能となる。したがって、小型ハイブリ ッドトラックに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を採用した場合には、通常の小型トラックに比べて 「20%〜25%」の重量車モード燃費の向上ができるのだ。このように気筒休止エンジン(特許公開2005- 54771)の技術は、小型ハイブリッドトラックの燃費向上に極めて有効であるにもかかわらず、トラックメーカがこの気 筒休止の技術を小型ハイブリッドトラックに採用する意向を示していないのは、如何なる理由があるのであろうか。 筆者には、理解し難いことである。なお気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)における燃費削減に関する機能・ 効果の詳細については、気筒休止エンジンによる大型トラックの低燃費化若しくは気筒休止は、燃費削減と尿素 SCRのNOx削減率の向上に有効だ!のページを御覧いただきたい。
以上のように、わが国における最近のハイブリッド乗用車が普及したきたことから、世間ではハイブリッドトラック
による燃費向上を期待する意見・主張が多くなったようだ。しかし、小型ハイブリッド トラックはハイブリッド乗用車の ような燃費改善が困難である。そして、現行の小型ハイブリッドトラックの燃費を少し向上するための唯一の方法 は、本ページで詳述したように、小型ハイブリッドトラックの筆者が提案している気筒休止エンジン(特許公開2005- 54771)の技術を採用することだ。
ところが、小型ハイブリッドトラックと異なり、大型ディーゼルトラックハイブリッド化した大型トラック(GVW25トン)に
おける貨物輸送の場合には、単位貨物輸送重量当りの燃料消費量を増加させる重大な問題を引き起こしてしまう 欠陥がある。その最大の原因は、ハイブリッド化の駆動モータや大容量のバッテリー搭載による車両重量の増加に 付随する貨物積載量の減少を余儀なくされるためだ。このように、貨物積載量の減少を余儀なくされて大型ハイブ リッドトラック(GVW25トン)での貨物輸送は、通常の大型ディーゼルトラック(GVW25トン)の貨物輸送の場合に比べ てコスト高となる。そのため、貨物積載量の少ない大型ハイブリッドトラック(GVW25トン)は、大型トラックの本来の 機能である貨物輸送の能力を著しく低下してしまうことになる。したがって、大型ハイブリッドトラック(GVW25トン) は、将来的な普及が見込めないことが明らかである。このように、わが国において、将来とも大型ハイブリッドトラッ ク(GVW25トン)の普及が極めて困難であると推察される原因については、日本の低炭素と脱石油に無効な技術を 研究する交通安全環境研究所のページ(特に表2に詳述)にも記載しているので、御覧いただければ幸いである。
上記本文中で誤り等がございましたら、メール等にてご指摘下さいませ。また、疑問点、ご質問、御感想等、どの
ような事柄でも結構です。閑居人宛てにメールをお送りいただければ、出来る範囲で対応させていただきます。 ![]()
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