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最終更新日:2015年4月3日
1.今後の大型トラックの新たな低燃費の基準について
現在、自動車燃費性能評価・公表制度(「自動車の燃費性能の評価及び公表に関する実施要領」)により、ディーゼ
ル乗用車等の平成17年度燃費基準と、ガソリン乗用車等の平成22年度燃費基準には、各燃費基準に対して+5%、 +10%および+20%を達成したそれぞれの車種に対し、国土交通省は燃費向上の効果を認定しているのである。そし て、それぞれの燃費向上のレベルに対応した燃費基準よりも優れていることを国土交通省が公に認定し、下記の4段 階に区分けした表1のステッカの貼付を認めている。 ![]()
しかし、乗用車の燃費基準とは異なり、大型トラック・トラクタ等の重量車については、国土交通省は、「2015年度重量
車燃費基準」を達成しているか否かの判断ができる燃費向上のステッカの貼付を認めているだけである。そして、トラッ クメーカが「2015年度重量車燃費基準」よりも+5% や+10%の燃費向上を達成した大型トラック・トラクタを市販でき たとしても、それらの大型トラック・トラクタに+5% や+10%の燃費向上を実現できている旨を表示できるステッカは、 現時点では国土交通省が何も設定していないのである。つまり、トラックメーカは、仮に「2015年度重量車燃費基準」よ りも+5% や+10%の燃費向上を達成した大型トラック・トラクタが市販できたとしても、そのトラックやトラクタには、表 2に示した「2015年度重量車燃費基準」のステッカしか貼付できにないのである。 ![]()
このように、現在の時点では、トラックメーカが渾身の燃費改善の技術開発を行い、仮に2015年度(平成27年度)重
量車燃費基準に対し、+5% や、更に+10%を達成したトラック・トラクタを市販できたしたとしても、そのトラック・トラク タの燃費向上を正しく評価したことを証明するステッカを貼付することが現状ではできないのだ。そのため、このトラッ ク・トラクタの「燃費向上」と「CO2削減」をトラックメーカがユーザにアピールしても、従来からの単なる宣伝文句のように 見なされ、トラックユーザにその真意が伝わり難いと考えられる。そのため、現時点では、2015年度重量車燃費基準に 対して+5% or +10%を達成したトラック・トラクタを開発しても、コストアップを招くだけである。このように、2015年度 重量車燃費基準を超えた低燃費の大型トラック・トラクタを開発できたとしても、その販売においては、2015年度重量車 燃費基準からの燃費向上の割合が一目瞭然でトラックユーザに理解して貰える宣伝ができないのである。そして、仮に 2015年度重量車燃費基準から5%の燃費向上を実現した大型トラックが市販できたとしても、その大型トラックは2015 年度重量車燃費基準に適合の大型トラックトラックと同等の税金の優遇しか受けらないのが現状である。このようなこ とから、現状の不十分な重量車の燃費基準の制度においては、多少のコストアップを伴ってっても、2015年度重量車 燃費基準に対して+5% や+10%を達成したトラック・トラクタ開発を強力に推進しようとするトラックメーカは、出現し ない可能性が極めて高い。なぜなら、2015年度重量車燃費基準に対して+5% や+10%の燃費向上を実現したトラッ ク・トラクタは、多少とも価格の上昇を伴うため、取得税等の税制の優遇が無い場合にはトラックユーザが率先して購 入してくれる保障が無いためだ。
このように、大型トラック・トラクタでの2015年度重量車燃費基準を超えた低燃費の基準が未だに設定されていないの
は、2015年度重量車燃費基準の+5%や+10%の燃費向上が現状では技術的に困難と考える国土交通省の現状認 識がある可能性も考えられる。そうは言っても、この 2015年度(平成27年度)重量車燃費基準は、施行後、既に5年以 上の歳月が経過しているのである。そのため、2015年度(平成27年度)重量車燃費基準に適合した自動車が数多く市 販されるようになり、2015年度(平成27年度)重量車燃費基準も自動車の低燃費基準としての役目を実質的に終えつ つあることは事実であり、現在では既に陳腐化の様相を呈してしまっていことは間違いないだろう。
従来、国土交通省は、ディーゼル乗用車等の平成17年度燃費基準と、ガソリン乗用車等の平成22年度燃費基準に
ついては、それぞれの基準に対して+5%、+10%および+20%の燃費向上を認定した低燃費基準を設定していた のである。しかし、重量車(=大型トラック・トラクタ等)の2015年度(平成27年度)重量車燃費基準に対して+5%、+ 10%および+20%の燃費向上を達成した大型トラック・トラクタを低燃費トラック・トラクタと認定する低燃費基準を、国 土交通省は未だに設定していないのである。現状のように、政府が重量車の低燃費の基準を早急に設定しない状況 を今後も継続し続ければ、「人は易きに流れる」との諺の通り、トラックメーカは大型トラックの燃費向上の研究開発の 努力を怠る可能性があるものと考えられる。
この現状を打破するため、筆者が先ず提案したいことは、早急に大型トラックの低燃費自動車の新たな燃費基準とし
ては、例えば以下の表3に示すレベルが適切と考えている。この表3のような新たな燃費基準の導入し、燃費改善の程 度に応じて税金を優遇する制度を導入すべきではないかと考えている。これによって、トラックメーカが競い合って低燃 費のトラックを開発することになることは確実であり、わが国の大型トラックの低燃費化が促進されるものと考えられ る。
以上、大型トラックにおける燃費規制の理想的な「在るべき姿」を述べたが、わが国における大型トラックの燃費基準
の告示は、乗用車に比べて大幅に遅れているのが現状のようだ。それは、以下の表4に示したように、乗用車関係の 2015年度乗用自動車燃費基準を強化した2020年度乗用自動車燃費基準が2011年に早々と提示されている が、大型トラック関係の2015年度重量車燃費基準は2013年の時点でも未だに提示されていないことは、紛れも 無い事実だ。このように、大型トラックの2015年度重量車燃費基準の強化予定が未だに提示されていない原因は、日 本の自動車メーカ(=トラックメーカ)や研究機関が、現時点で大型トラックの燃費向上の技術が開発でlきていないと主 張しているためと推測される。 ![]()
果たして、日本の自動車メーカ(=トラックメーカ)や研究機関が主張しているように、現時点で大型トラックの燃費向
上の技術的な見通しが本当に皆無であるのだろうか。これについては、筆者は大いに疑問に思っている。なぜならば、 気筒休止エンジンによる大型トラックの低燃費化や、以下の項にに詳述しているように、気筒休止エンジン(特許公開 2005-54771)の技術を実用化し、その技術を大型トラックに採用した場合には、大型トラックの重量車モード燃費を5〜 10%も向上することが可能と考えられるためだ。
2.今後の大型トラックの新たな低NOxの基準について
今後の排出ガス規制の強化について、2010年に7月28日に中央環境審議会から環境省に第十次答申が行われた。こ
の第十次答申によると、GVW7.5トン超えの大型トラック・バスのNOx規制の強化は、以下の表5に示した通り、次期の NOx規制値 = 0.4 g/kWh であり、2016年に実施が予定されているとのことである。
この次期のNOx規制値(2016年の実施予定)の排出ガス試験では、以下に示した試験法の変更が行われるとのこと
である。
@ 技術開発コストの軽減等に資するため、現行の排出ガス試験サイクル(JE05 モード)を、我が国も参画のもと国連
欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(以下「UN-ECE/WP29」という。)において策定された世界統一試験 サイクルであるWHTC(World Harmonized Transient Cycle)に変更する。
A 排出ガス後処理装置の浄化率が低いエンジン冷間時の排出ガスの低減を図るため、従来のエンジン暖機時(ホッ
トスタート)排出ガス試験に加え、エンジン冷間時(コールドスタート)排出ガス試験を導入し、コールドスタート排出ガス 試験による測定値を14%の比率で、また、ホットスタート排出ガス試験による測定値を86%の比率で、それぞれ重み付 けして合計した値を排出ガス測定値とする。
特に、コールドスタート排出ガス試験については、これまでの排出ガス規制の強化により、ホットスタート時の排出ガ
ス量は、非常に低いレベルとなりつつあり、今後、コールドスタート時の排出ガス量が相対的に大きくなると考えられと のこと。したがって、ホットスタート時の排出ガス測定値のみによる規制では、排出ガスを有効に低減できないと考えら れるため、次期排出ガス規制においては、コールドスタート時の排出ガス試験を導入することが適当との理由である。
さて、表2の次期のNOx規制値は、2005年の第八次答申にNOxの挑戦目標として示されていた 0.7 g/kWhの 1/3
程度(= 0.23 g/kWh)から0.4 g/kWhまでに大幅に緩和されたようである。この大幅なNOx規制値の緩和に関して「今 後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十次答申)」に添付されている(第十次報告)の「2.5.2 第八次 答申における挑戦目標値との比較」には、以下のように記載されている。
『第八次答申においては、ディーゼル重量車のNOx排出量を09年規制(0.7g/kWh)の1/3程度とする挑戦目標値を提示
した。これは、JE05モードに基づくホットスタート時の排出量を前提とした数値である。次期排出ガス規制では、ホットス タート時よりも排出量が増加するコールドスタート時の排出ガス試験を導入することとした。したがって、第八次答申に おける挑戦目標値と次期目標値(0.4g/kWh)を単純に比較することはできない。このような状況ではあるが、09年規制 向けの研究開発用のエンジンのデータをもとに、次期目標値をJE05モードに基づくホットスタート時の排出量に換算し てみたところ、十分なデータ数ではないため、あくまで目安としてとらえるべきものであるが、0.26g/kWhとなった(ただ し、入手できたデータの内、09年規制のNOx規制値0.7g/kWhを上回っているものは除外している。除外しなかった場合 は、0.31g/kWh)。さらに、オフサイクル対策、高度なOBDシステムの導入、第八次答申当時には策定されていなかった 平成27年度重量車燃費基準にも対応することも考慮すれば、次期のNOx目標値(規制値)は、第八次答申における挑 戦目標値のレベルに達していると考えられる。』
このように、自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十次報告)によると、第八次答申において提示されてい
たディーゼル重量車のJE05モードに基づくホットスタート時のNOx排出量を2009年規制(0.7g/kWh)の1/3程度とする挑 戦目標値は、JE05モードに基づくホットスタートとコールドスタートのNOx排出量に換算した場合には、次期のNOx目標 値(規制値)に近いNOx排出値に相当するとのこと。したがって、中央環境審議会は、第十次答申の次期NOx目標値 (規制値)は、実質的には、第八次答申のNOx挑戦目標値を殆どそのまま具現化したものとの見解である。,しかしなが ら、この「2009年規制(0.7g/kWh)の1/3程度とする中央環境審議会の第八次答申のNOx挑戦目標値が、2016年末まで に実施予定である第十次答申のNOx目標値(次期NOx規制値)= 0.4 g/kWhとほぼ等価」とする第十次報告に記載さ れている中央環境審議会の見解について、筆者は大いに疑問があると思っている。
何はともあれ、わが国では、2010年7月の中央環境審議会の第十次答申において、大型トラックに対して2016年に
NOx = 0.4 g/kWhの規制強化を実施されることが発表されている。しかし、図1に示した日本、米国、欧州の商用車(車 両総重量3.5t超)のNOxとPMの規制強化の変遷を見ると明らかなように、米国では、既に2010年にNOx = 0.27 g/kWh に規制強化が実施されているのだ。しかし、日本では、2016年にやっとNOx= 0.4 g/kWhにNOx規制が強化されるに過 ぎないことが、中央環境審議会の第十次答申で発表されたのである。そのため、大型トラック(=重量車)の分野では、 日本において2016年にNOx = 0.4 g/kWhの規制強化が実施された時点でも、日本でのNOx規制は、2010年のNOx = 0.27 g/kWhの米国NOx規制よりも相当に緩いNOx規制が実施さることになる。
以下の図1を見ると明らかなように、少し以前までは、日本のNOx規制値は、米国のNOx規制値より少し厳しいか、
それとも同等のレベルであった。しかし、何故か最近では、米国のNOx規制よりも緩いNOx規制を日本で実施する方 針に大きく舵を切られたようだ。このように、環境省・国土交通省が環境行政の大きく方針を変更し、米国のNOx規制 値に比較して、日本のNOx規制値を緩いレベルに設定した理由は、一体、何なのであろうか。2016年に実施される日 本のNOx規制値が米国のNOx規制値よりも大きく緩和されることによって利益を得るのは、NOx低減の研究開発の投 資を削減できるトッラックメーカだけと考えられる。そして、犠牲を被るのは、劣った大気環境の中で日常の生活を送ら ざるを得ない多くの一般市民であることは確かだ。信じられないことではあるが、環境省・国土交通省の人達は、米国 人に比べて日本人の方が生命力があるとの考えから、日本の大気環境が米国よりも、多少、劣っていても良いと判断 されているのであろうか。信じられないことでだ。 ![]()
因みに、この中央環境審議会が2010年7月の第十次答申で発表した2016年に実施予定のNOx = 0.4 g/kWhの規制
強化は、2005年に発表された第八次答申に記載されている将来のNOx削減の目安としてのNOx削減の挑戦目標であ る0.7 g/kWhの 1/3程度(= 0.23 g/kWhレベル)を完全に無視しているである。そして、第十次答申には、第八次答申 に明記された将来のNOx削減の目安としてNOx削減の挑戦目標(NOx=0.23g/kWh)を反故にした屁理屈とも思える理 由が堂々と羅列されているのである。このように、第八次答申に明記された将来のNOx削減の挑戦目標(NOx=0.23g/ kWh)から大幅に緩和されているのである。その結果、図2に示した通り、日本の次期のNOx規制は、2016年の実 施予定でもNOx = 0.4 g/kWh)であり、2010年の米国のNOx規制(NOx = 0.27 g/kWh)よりも相当に緩いN Ox規制が実施され続けられる予定である。そして、この大きく緩和された日本の2016年の次期NOx規制が中央環 境審議会の第十次答申で答申された根拠について、本当の理由を知りたいところである。 ![]()
以上のように、現在の日本では、米国よりも緩いの大型トラックのNOx規制が施行され、そして、これから当分の間、
日本では米国よりも緩い大型トラックのNOx規制が継続される状況に陥っているようだ。しかし、筆者が提案している気 筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を大型トラックに採用することによって米国よりも厳しい日本のNOx規 制をNOx規制に強化(NOx = 0.23 g/kWh )(WHTC排出ガス試験法)を容易に実現することが可能である。そのことに ついては、米国よりも緩い大型トラックのNOx規制を施行し続ける日本政府の怠慢のページにも詳述しているので、御 覧いただきたい。
3.日本の次期のNOx規制(2016年実施)が現行の米国のNOx規制よりも緩い理由
以下の表6に示したように、2011年9月発行の「自動車技術」誌(Vol.65,No.9,2011)の「自動車用エンジン技術開発の
現状と将来」と題した論文の「3.2. 重量車の燃費改善」の項において、著者の早稲田大学の大聖教授は、重量車(= ディーゼルトラック・バス)における『2016年の排出ガス規制への適合』と『2015年度重量車燃費基準への適合』の トレードオフの克服が必要であると述べられている。
この表5に示した「自動車技術」誌の内容を見ると、 早稲田大学の大聖教授は、ディーゼル大型トラックにおいては
「NOxの削減」と「燃費の改善」にはトレードオフの関係があるため、「NOxの削減」と「燃費の改善」を同時に実現する技 術が現時点では不明と認識されているものと推察される。そのため、早稲田大学の大聖教授は、大型トラックにおい て、日本のトラックメーカでは「2015年度重量車燃費基準の達成」と、「2016年のNOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモー ド)の排出ガス規制への適合」のトレードオフの克服が技術的に限界であり、日本ではこれ以上のレベルの「NOx規制 の強化」と「燃費基準の強化」が困難との意見を持たれているように推測される。逆な言い方をすれば、中央環境審議 会の大聖教授を含む自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、「2015年度重量車燃費基準を十分に超える燃費 向上」と、「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)以上のレベルまでのNOx削減」の両方を同時に実現できる技術の 知見や情報を何も保有されていないものと推測される。そのため、2010年7月の中央環境審議会の第10次答申では、 2016年に実施する日本の次期のNOx規制値は、2010年の米国のNOx規制(NOx = 0.27 g/kWh)よりも相当に緩くした 「NOx= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」を答申せざるを得なかったものと推測される。
特に、この論文に中では、大聖教授は、大型トラックの燃費改善技術として、「ターボ過給の多段化」、「ターボコンパ
ウンド」、「ランキンサイクル」および「熱電素子」の技術を挙げられている。しかし、ターボコンパウンドによるディーゼル トラックの十分な燃費改善は困難だ!や気筒休止は、ディーゼルのNOx削減と燃費向上の一挙両得の技術だ!に詳 述した通り、「ターボ過給の多段化」と「ターボコンパウンド」の何れの技術もディーゼルエンジンの部分負荷の燃費を十 分に改善することが困難であり、「ターボ過給の多段化」と「ターボコンパウンド」の技術を採用しても大型トラックの重 量車モード燃費を十分に向上することは困難である。
また、大聖教授が大型トラックの燃費改善技術として推挙されている「ランキンサイクル」および「熱電素子」の技術
は、「ターボコンパウンド」と同様にエンジン高負荷運転における排気ガス温度の高温時に排気ガスの温度エネルギー をエンジン出力軸に回生するシステムである。そのため、大型トラックのエンジンに「ランキンサイクル」および「熱電素 子」の技術を搭載した場合には、排気ガス温度が高温となるエンジンの全負荷出力運転時に、或る程度の高い効率で 排気ガスの温度エネルギーをエンジン出力軸に回生することができるため、エンジン燃費の改善を図ることが可能だ。 しかし、大型トラックの実走行では、排気ガス温度の低いエンジン部分負荷運転が主体となるため、大型トラックの実 走行における「ランキンサイクル」および「熱電素子」による排気ガスの温度エネルギーをエンジン出力軸に回生する時 の効率は、大幅に低下することになる。このように、大型トラックの実走行や重量車モード燃費の計測(=シュミレーシ ョン計算)では、気筒休止エンジンによる大型トラックの低燃費化や気筒休止は、ディーゼルのNOx削減と燃費向上の 一挙両得の技術だ!のページに詳述しているように、排気ガス温度の低いエンジン部分負荷の運転が大部分を占め るため、大型トラックのディーゼルエンジンに「ランキンサイクル」および「熱電素子」の技術を採用したとしても、大型ト ラックの実走行燃費や重量車モード燃費は、極、僅かな改善に留まるものと考えられる。
このように、「ターボ過給の多段化」、「ターボコンパウンド」、「ランキンサイクル」および「熱電素子」の技術は、エンジ
ン部分負荷時の燃費改善の機能が劣る技術である。そのため、これらの技術を大型トラックに採用したとしても、大型 トラックの実走行燃費や重量車モード燃費を十分に向上することは、困難である。それにもかかわらず、2011年9月発 行の「自動車技術」誌(Vol.65,No.9,2011)の「自動車用エンジン技術開発の現状と将来」(表5参照)と題した論文の「3.2. 重量車の燃費改善」の項において、著者の早稲田大学の大聖教授は、大型トディーゼルトラック・バス(=重量車)に おける燃費向上の手段として、大型トラックの実走行燃費や重量車モード燃費を十分に改善できる機能これら「ターボ 過給の多段化」、「ターボコンパウンド」、「ランキンサイクル」および「熱電素子」の技術を推挙されていることについて、 筆者には疑問に思えて仕方がないのである。
そして、「メカニカルターボコンパウンド」、「エレクトリックターボコンパウンド」、「ランキンサイクル」、「熱電素子」およ
び「スターリングエンジン」等のディーゼルエンジンの排気ガスのエネルギーを回生する装置を用いて大型トラックの実 走行燃費を向上できるようにするためには、気筒休止は、ディーゼル排気ガスのエネルギー回生装置の効率を向上に 詳述しているように、大型トラックの実走行時の排気ガス温度を高温に制御できる技術を併用することが必須である。 そして、この大型トラックの実走行時の排気ガス温度を高温に制御できる技術が筆者推奨の気筒休止エンジン(特許 公開2005-54771)である。現在のところ、この気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術以外に、大型トラックの 実走行時の排気ガス温度を高温に制御できる技術は、世の中に見当たらない。
ところで、いすゞ自動車は、ディーゼル4トントラック「フォワード」において、平成22年の排出ガス規制(ポスト新長期
規制)の適合車では、2段シーケンシャルターボシステムを採用している。しかし、気筒休止エンジンによる大型トラック の低燃費化に詳述しているように、この「フォワード」では走行燃費が不良なことが原因と推測されるが、有ろう事か、 いすゞ自動車は、市販した「フォワード」の4HK1-TCSエンジンに違法なエンジン制御を行ってNOxを垂れ流して走行燃 費の改善を図った不正なエンジン制御を搭載していたのである。ところが、この不正な行為をが露呈し、いすゞ自動車 が平成23年5月に東京都によって国土交通省に道路運送車両法違反を通報されたのだ。このことから、2段シーケン シャルターボシステムのエンジン低速のトルクアップに寄与するが、燃費削減のメリットは極めて少ないものであること が原因の一つではないかと推察される。
このように、2011年9月発行の「自動車技術」誌(Vol.65,No.9,2011)の「自動車用エンジン技術開発の現状と将来」と題
した論文では、2.2 (2)の「(ガソリンエンジンの)高性能化と燃費改善技術」の項では、大聖教授は、「・・・各種可変機構 の利用、直接噴射を含む燃料供給系制御に精緻化、・・・・・・、過給システムによるエンジンのダウンサイジング、各運 動部の摩擦や補記類損失の低減など・・・・・」と記載され、ガソリンエンジンの燃費改善に関する多くの技術が列挙され ているが、しかし、「3.2. 重量車の燃費改善」の項では、大聖教授は、大型トラックの実走行燃費や重量車モード燃費 を十分に改善できる機能・効果の期待できない「ターボ過給の多段化」、「ターボコンパウンド」、「ランキンサイクル」お よび「熱電素子」のような技術が淋しく推挙されているのだ。したがって、この論文を拝見すると、大聖教授は、今後の 更なる大型トラックの重量車モード燃費の向上が極めて実現の困難なことを深く認識されているのではないかと推察さ れる。
また、飯田訓正 慶大教授は、「自動車技術」誌Vol.64、No.1、2010(2010年1月1日発行)に掲載の論文「ディーゼル
エンジンこの10年」(著者:と他3名)の「5 おわりに」には、以下の表7ように記述されている。
このように、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会のメンバーである飯田教授は、ディーゼルエンジンのCO
2削減(=燃費改善)が「大きな挑戦課題」と断定されており、この「課題達成」には「従来のディーゼルエンジンの要素 システムに加え、燃料、燃焼、触媒の研究、システム制御の統合化技術が求められている」と記載されているのみであ る。そして、ディーゼルエンジンのCO2削減(=燃費改善)に有効な技術が一つも具体的に記述されていないのであ る。このように、飯田教授は、大型ディーゼルトラックの燃費を2015年度重量車燃費基準以上に改善できる具体的な 技術アイテムを何一つ示すこと無く、ディーゼルエンジンのCO2削減(=燃費改善)は「大きな挑戦課題」と、「自動車技 術」誌の読者を単に叱咤激励されているだけだ。このことから、飯田教授は、大聖教授と同様に、今後の更なる大型ト ラックの重量車モード燃費の向上が極めて実現の困難なことを深く認識されているものと推察される。そして、このこと は多くのディーゼルエンジン関係の学者・専門家での共通した認識とも考えられる。そして、この共通認識のもとに、大 聖教授を含む中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、トラックメーカが大型トラックにおけ る「2015年度重量車燃費基準以上の燃費向上」と、「2016年のNOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)の排出ガス規制 値以上のNOx削減」を実現することが近い将来に実現可能な技術開発の限界と判断し、2010年7月の中央環境審議 会の第10次答申をまとめたのではないかと考えられる。
このような大型トラックの緩い次期NOx規制とする中央環境審議会の第10次答申(2010年7月)が決定された背景・原
因は、大型トラック用ディーゼルエンジンにおいて「NOx排出と燃費性能のトレードオフ関係を克服できる技術が不 明」との中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家の現状認識によるものと推察される。大型トラ ック用ディーゼルエンジンにおいて、仮に「2015年度重量車燃費基準」とほぼ同じ時期の2016年にNOx = 0.4 g/kWh」 より厳しいNOx規制の強化を課したならば、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、「NOx 排出と燃費性能のトレードオフ関係を克服できる技術が不明」な日本のトラックメーカが技術的に対応できないため、 日本でのディーゼルトラックが生産・販売が困難となり、大きな混乱を招くことは間違いないとの結論に至ったものと推 測される。そして、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、2016年にNOx = 0.4 g/kWhより も厳しいNOx規制の強化した場合には、日本でのディーゼルトラックが生産・販売の中止となる不測の事態を招くとの 誤った認識のために、2010年7月の中央環境審議会の第十次答申において、大型トラック(=重量車)の2016年に実 施される次期のNOx規制値として、2010年の米国のNOx規制(NOx = 0.27 g/kWh)よりも相当に緩いNOx = 0.4 g/ kWhの規制がに決定した可能性があるものと筆者には思えるのである。
その結果、前述の図2に示した日本、米国、欧州の商用車(車両総重量3.5t超)のNOxとPMの規制強化の変遷を見る
と明らかなように、米国では、既に2010年にNOx = 0.27 g/kWhに規制強化が実施されているのだ。しかし、日本では、 2016年にやっとNOx= 0.4 g/kWhにNOx規制が強化されるに過ぎないことが、中央環境審議会の第十次答申で発表さ れたのである。そのため、大型トラック(=重量車)の分野では、米国のNOx規制が2010年でNOx = 0.27 g/kWhであ るにもかかわらず、日本においては2016年に規制強化が実施された時点でもNOx = 0.4 g/kWhの相当に緩いNOx規 制が実施されることになる。
ところで、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、次期のNOx規制強化を検討された際、2015年度重量車燃
費基準の施行を考慮しながら2016年実施に実施できそうなNOx規制値の強化レベルを議論されたものと考えられる。 このように、次期のNOx規制を実施される2016年には、2015年度重量車燃費基準が施行されているため、トラックメー カは、次期のNOx規制強化に対応する大型ディーゼルトラックでは、NOxの削減と燃費の向上を図ることが必要とな る。しかし、ディーゼルエンジンでは、昔からNOx削減と燃費改善がトレードオフの関係であることが良く知られており、 NOx削減と燃費改善を同時に実現することは、技術的に困難と考えるのがディーゼル関係者のこれまでの常識・認識 であり、現在も同じ常識・認識を持たれている学者・専門家は、極めて多いと考えられる。
仮に、2016年に実施される次期の大型トラックのNOx規制として「2005年の第八次答申のNOx挑戦目標= 0.23 g/
kWhまでのNOx削減」を規定した場合には、次期の大型トラックは、当然、2015年度重量車燃費基準を達成しているこ とが必要である。そのため、次期(=2016年)のNOx規制適合の大型トラックは、技術的に困難なNOx削減と燃費改 善のトレードオフを克服することが必須となる。しかし、前述の表5に示したように、現在、NOx削減と燃費改善のトレー ドオフを克服できる技術は、未だに存在しないと多くの学者・専門家が認識されていることも事実のようだ。そして、自 動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が他の多くの学者・専門家と同様に、NOx削減と燃費改善のトレードオフを 克服できる技術を何も承知されていないと仮定した場合には、2015年度重量車燃費基準が施行されている日本の特 殊事情を考えて、米国の2010年のNOx規制(NOx = 0.27 g/kWh)よりも大幅に緩くし、自動車排出ガス専門委員会が NOx = 0.4 g/kWhのNOx規制値を2016年に実施することの決定をされたことは、仕方が無いように思える。
しかし、これは飽くまでも、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が他の多くの学者・専門家と同様に、「NOx排
出と燃費性能のトレードオフ関係を解消できる技術が不明」との誤った現状認識に基づいて導き出した結論であると筆 者は考えている。しかし、現在、大型トラック用ディーゼルエンジンのNOx削減と燃費改善の新しい技術としては、気筒 休止は、ディーゼルのNOx削減と燃費向上の一挙両得の技術だ!に詳述しているように、2006年4月7日に開設した 筆者のホームページでは、「NOx排出と燃費性能のトレードオフ関係を克服できる技術」として、気筒休止エンジン(特 許公開2005-54771)の技術を提案しているのである。しかし、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家や他の多く の学者・専門家は、大型トラック用ディーゼルエンジンのNOx排出と燃費性能のトレードオフ関係を解消できる筆者提 案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を頑なに無視・黙殺しているのである。その一方で、自動車排出 ガス専門委員会の学者・専門家が「NOx排出と燃費性能のトレードオフ関係を克服できる技術が不明」との現状認識に 基づいて米国の2010年のNOx規制(NOx = 0.27 g/kWh)よりも大幅に緩くし、自動車排出ガス専門委員会がNOx = 0.4 g/kWhのNOx規制値を2016年に実施することの決定したことは、日本の国民に対しての背信行為とも考えられる。
なぜならば、ディーゼルエンジンの専門家であれば、長年にわたって誰もが喉から手が出るほど渇望していた「NOx
排出と燃費性能のトレードオフ関係を克服できる技術」が、「気筒休止ディーゼルエンジン」である。そのような「気筒休 止ディーゼルエンジン」の技術が、インターネットに公開されされており、誰でも簡単に手に入るのである。そのことを考 えると、自動車排出ガス専門委員会が2016年に実施される次期のNOx規制値の議論されている課程において、自動 車排出ガス専門委員会の少なくとも一部の人達は、ディーゼルエンジンの部分負荷時のNOx削減と燃費向上に有効 な気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術が話題になっていた可能性は、十分に考えられる。これは飽くまで も仮の話であるが、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が、ディーゼルエンジンの「重量車モード燃費の向上」 と「NOx削減」の同時削減に極めて有効な「気筒休止」の技術を承知されたいたにもかかわらず、日本の次期のNOx 規制として、米国よりも大幅に緩和されたNOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)の排出ガス規制を2016年に実施する ことを決定されたいたとすれば、大いに問題があると思うが、如何なものであろうか。この場合には、ディーゼルエンジ ンの部分負荷時のNOx削減と燃費向上に有効な「気筒休止」の技術の採用によるコスト増加を嫌ったトラックメーカの 強い拒絶の意向によって、、自動車排出ガス専門委員会が米国よりも大幅に緩和されたNOx規制値= 0.4 g/kWh (WHTCモード)の排出ガス規制を2016年に実施することを決定されたことが仮に事実であれば、大いに問題があると 言わざるを得ない。
なお、現在、考えられているディーゼルエンジンにおける「気筒休止」の方法としては、表8の「各種の気筒休止エンジ
ンのシステム」に示した2種類が提案されている。
2ターボ方式の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)に比較し、「気筒休止が運転できる負荷の領域が狭 いこと」、「部分負荷時の燃費削減とSCR触媒の活性化によるNOx削減の機能が大幅に劣ること」および「吸・ 排気弁のリフト制御が必要なために大きなコスト高となること」等の欠点がある。ボルボと同様に、いすゞ自動車 も、気筒休止エンジンでは吸・排気弁を弁閉制御が必要と考えているようだ。その証拠に、いすゞ自動車の子会社で技 術開発が主要業務の株式会社いすゞセラミックス研究所が特開2000−145423(気筒制御式エンジンの弁休止機 構および気筒制御式エンジン)の特許を出願していることから明らかだ。どうも、トラックメーカのディーゼルエンジン の専門家は、ディーゼルエンジンの気筒休止においても、ガソリンエンジンと同様の吸・排気弁の休止機構が 必要との先入観があるように思えるのである。 そもそも、ガソリンエンジンでは、予混合燃焼のためにシリンダ内のNOxは、拡散燃焼のディーゼルエンジンよりも十 倍以上も多く発生する。しかし、このガソリンエンジンでは、燃焼で生じた多量のNOxを三元触媒によって還元し、NOx の排出量を大幅に削減を実現しているのだ。したがって、アイドリング運転を含めて三元触媒で大幅にNOxの排出を 削減できなければ、現在の排出ガス規制には適合できないのである。そのため、アイドリング運転を含めて、仮に休止 気筒運転から稼動気筒(=燃焼気筒)に切り替わった場合には高濃度のNOxの排気ガスが三元触媒に流入すること になるが、その場合にも確実にNOxを還元するために、エンジンの運転中は常に三元触媒の温度を高温に維持し続 けている必要がある。何故ならば、ガソリン自動車の走行速度が変わる場合、気筒休止エンジンの負荷変動に応じて 休止する気筒から低い温度の排気ガスが三元触媒に流入した場合には、触媒温度の低下によって三元触媒でのNO x等の排出ガス削減の機能が著しく低下する不具合が生じてしまうためだ。この休止気筒からの低温の排気ガスが三 元触媒に流入することによる三元触媒での排出ガス削減の機能低下を防止するため、気筒休止ガソリンエンジンでは 吸・排気弁の弁動作の休止機構(=弁閉機構)が必須となる。 しかし、ディーゼルエンジンでは、三元触媒によるNOx等の排出ガスの削減の技術が用いられていないため、休止気 筒から吸入空気がそのまま温度の低い排気ガスとしてエンジンから排気管に接続した排出ガス後処理装置(=尿素S CR触媒やDPF装置)に流入しても、大きな問題を生じることはない。その証拠に、現在の通常のディーゼルエンジンの アイドル運転時における排気ガス温度は、100℃以下の低温となっているのが現状である。したがって、ディーゼルエン ジンの気筒休止では、ガソリンエンジンの気筒休止で採用されている吸・排気弁の弁動作の休止機構(=弁閉機構)を 用いない場合でも、ディーゼルエンジンの燃費向上の機能が立派に果たせるのである。 もっと判り易く説明すれば、筆者が提案している2ターボ方式の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)は、部分負 荷時の燃費削減とSCR触媒の活性化によるNOx削減が大幅に優れている上に、吸・排気弁のリフト制御が不要な低コ ストの気筒休止システムと云うことである。したがって、将来の大型トラックの気筒休止の技術としては、筆者提案の2 ターボ方式の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)が相応しいことは明らかだ。もっとも、筆者の提案するディーゼ ルの気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)において、休止気筒に高価な吸・排気弁の休止機構を付加した場合に は、休止気筒の吸気弁部と排気弁部の気体流れの抵抗による損失が減少できることになる。そのため、この吸・排気 弁部の流れの抵抗による若干の燃費悪化を防止できるメリットがある。しかし、吸排気のポンピング損失がガソリンエ ンジンに比べて大幅に少ないディーゼルエンジンにおいては、ディーゼルの気筒休止エンジン(特許公開2005-54771) に吸・排気弁の休止機構を付加した場合の燃費向上は、微々たるものと推察される。したがって、気筒休止エンジン (特許公開2005-54771)には、吸・排気弁の休止機構は、コスト増加のデメリットを考慮すると、採用しない方が賢明と 考えられる。
そして、過給6気筒ディーゼルの気筒休止エンジンにおいて、日野自動車の「全気筒連結の過給機を備えた吸・排気弁
停止式の気筒休止システム」では、3気筒を休止するエンジン運転の領域は殆ど存在しない。しかし、筆者提案の2タ ーボ方式の気筒休止システム(=気筒休止エンジン(特許公開2005-54771))では、エンジンの1/2負荷以下におい て、3気筒の気筒群だけを稼動する気筒休止運転が可能である。
そして、大型トラックの実際の走行においては、エンジン運転の1/2負荷以下の軽負荷が多用されるため、
軽負荷において3気筒を休止するエンジン運転が可能な筆者提案の2ターボ方式の気筒休止システム(=気筒 休止エンジン(特許公開2005-54771))は、大型トラックの十分な走行燃費の向上が可能である。
表9 日野提案と筆者提案の気筒休止システムの過給6気筒エンジンにおける稼動気筒数のマップと燃費の比較
以上のことから、将来的に大型トラックの燃費向上を図る技術としては、著者が提案している気筒休止エンジ
ン(特許公開2005-54771)が我が国で広く実用化される可能性は、ほぼ間違いないと考えられる。なお、日野自 動車提案の「全気筒連結の過給機を備えた吸・排気弁停止式の気筒休止システム」の技術に比較した場合、筆者提 案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)は、大型トラックの燃費を格段に改善できる機能・効能を持つ特許技術 である。このことについては、日野自動車が論文発表した燃費改善機能の劣る気筒休止システムのページに詳述して いるので、興味のある方はご覧いただきたい。
ところで、最近、筆者が疑問に思ったことは、環境省・中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門
家は、「2015年度重量車燃費基準」が施行される日本ではNOxの大幅な削減が困難と断定し、日本の次期のNOx規 制として、米国よりも大幅に緩和されたNOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)(図2参照)の排出ガス規制を2016年に 実施することを決定したことだ。これは、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、「NOxの削減」と「燃費の向 上」が可能なディーゼルエンジン技術が現時点で存在しないとの判断から、日本の次期のNOx規制として、米国よりも 大幅に緩和されたNOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)の排出ガス規制を2016年に実施することにしたものと推測さ れる。ところが、「NOxの削減」と「燃費の向上」が可能なディーゼルエンジン技術は、既に世の中に存在しているのであ る。それは、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術だ。この2ターボ方式の気筒休止エンジン(特許公開 2005-54771)の技術は、重量車モード燃費の削減に有効なことに加え、部分負荷時のSCR触媒の活性化による十分 なNOx削減が可能である。このような、大型トラックの「NOxの削減」と「燃費の向上」に有効な技術を環境省・中央環境 審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が黙殺し、そして、中央環境審議会が米国よりも大幅に緩和さ れた2016年に実施のNOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)(図2参照)の排出ガス規制値を環境省に答申したこと は、全く納得のできないことである。
このように、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)と云う大型トラックの「NOxの削減」と「燃費の向上」が可能な技
術が既に存在しているにもかかわらず、日本の政府官僚や自動車排出ガス専門委員会の人達は、如何なる理由によ って、この「気筒休止」の技術を黙殺しているのであろうか。この「気筒休止」の技術を黙殺した結果、日本の政府官僚 や自動車排出ガス専門委員会の人達は、日本の次期のNOx規制として、米国よりも緩いレベルのNOx規制値= 0.4 g /kWh(WHTCモード)の排出ガス規制を2016年に実施することを決定せざるを得なかったのではないかと推察される。 ふと思うことは、米国人に比較し、日本人の方が劣悪なNOx濃度の大気環境の下でも健康を害すること無く、逞しく生 存できる特別な生命力を備えているとの根拠となる「劣悪なNOx濃度の大気環境における健康被害についての米国人 と日本人の疫学的な比較調査の結果」のデータを、日本の政府官僚や自動車排出ガス専門委員会の人達が保有され ているのであろうか。常識的に考えれば、日本人が劣悪な大気環境でも米国人よりも健康被害を受けないような生命 力を保有しているとは考え難い。そのため、自動車排出ガス専門委員会が「NOxの削減」と「燃費の向上」が可能な気 筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を無視して、米国よりも大幅に緩いNOxのレベルに抑えた日本の次期 のNOx規制を決定したことについては、筆者には理解し難いことである。
3.大型トラックにおける走行燃費や重量車モード燃費の改善の過去・現在・未来
そもそも、大型トラックにおいては、NOx削減に比較し、走行燃費や重量車モード燃費の改善は極めて困難である。し
かし、それでもトラックメーカは、1970年代前半の第1次オイルショック以来、激しい燃費競争に打ち勝つために懸命に 大型トラックの走行燃費や重量車モード燃費の改善に努めてきたのである。その不断の努力の結果、現在の大型ディ ーゼルトラックでの走行燃費が達成されている。そこで、以下の表10には、第1次オイルショックを契機として燃費改善 の市場ニーズが高まった1970年頃以降について、大型トラックにおける+5% 程度以上の走行燃費や重量車モード燃 費の改善が実際に実現されてきた技術を、年代順に整理した。また、この表10には、仮に近い将来に国土交通省が 2015年度重量車燃費基準から+10% 程度の燃費基準のを強化が実施された場合において、各トラックメーカが不本 意にも採用せざるを得ない大型トラックの重量車モード燃費の改善技術についても付記したので、ご覧いただきたい。
以上のように、1970年代前半の第1次オイルショック後の大型トラックにおいて、 走行燃費や重量車モード燃費を
5% 程度の改善を実現するために採用されてきた技術は、以下の5項目である。
@ 「直噴式ディーゼル」
A 「インタークラ過給ディーゼル」
B 「アイドルリングストップ」
C 「12段機械式自動トランスミッション」
D 「電子制御オートクールファンカップリング」と「電子制御可変流量ウォーターポンプ」の組合せ
以上の諸技術の中のDの 「電子制御オートクールファンカップリング」と「電子制御可変流量ウォーターポンプ」の組
合せは、最近(=2014年6月)、三菱ふそうの大型トラックに初めて採用された技術である。もっとも、「電子制御オート クールファンカップリング」は数十年も昔から普及したFF駆動乗用車(=フロントエンジン・フロントドライブの乗用車)に 採用されている「電動冷却ファン」と機能・効能が似た技術であり、「電子制御可変流量ウォーターポンプ」は最近のハ イブリッド乗用車に採用されている「電動ウォーターポンプ」と機能・効能が似た技術である。したがって、 「電子制御 オートクールファンカップリング」と「電子制御可変流量ウォーターポンプ」は、既に乗用車に採用済みの燃費改 善の機能・効能を有した類似技術を大型ディーゼルトラックに流用したと見ることができる。
このように、 「電子制御オートクールファンカップリング」と「電子制御可変流量ウォーターポンプ」は、乗用車での燃
費改善の機能・効能を応用した技術であるため、大型トラックの分野で新たに独自に開発された新規の燃費改善技術 と呼ぶことには少し躊躇されると考えられる。しかしながら「電子制御オートクールファンカップリング」は水温に応じて 可変制御して効率的なエンジン冷却を実現するために必要に応じて冷却ファンを回すことで駆動損失を低減し、「電子 制御可変流量ウォーターポンプ」は、電動冷却ファンと同様にで必要に応じて冷却水量を循環させてエンジンを効率的 に冷却してウォーターポンプの余分な駆動損失を低減することにより、「大型トラックにおける+5% 程度の重量車 モード燃費の、改善が可能」となる。これによって、2014年の時点において、大型トラックは、2015年度重量車燃費基 準の+5%の低燃費化が実現できたようである。
以上のように、長い年月にわたる技術者・専門家の地道な努力によって、大型トラックにおける+5%程度の走行燃
費の向上を可能にする技術が実用化されてきたのである。このような燃費改善の技術開発の経緯・実績を見ると、大 型トラックの走行燃費や重量車モード燃費の+5% 程度を改善することが如何に難しいことが判る筈である。したがっ て、近い将来に大型トラックの実走行燃費や重量車モード燃費が+5%程度以上 の改善を実現できる新しい燃費向 上の技術を特定することは、極めて難しいことである。これについて、筆者が考えるところでは、現時点において大型ト ラックの実走行燃費や重量車モード燃費が+5%程度以上 の改善を可能にする技術は、今のところ、気筒休止エンジ ン(特許公開2005-54771)の他には存在しないと考えている。つまり、ポスト新長期排出ガス規制(=2009年規制) 適合の仕様に「電子制御オートクールファンカップリング」と「電子制御可変流量ウォーターポンプ」を採用した 大型トラック(=2015年度重量車燃費基準+5%の達成の大型トラック)に、新たに気筒休止エンジン(特許公 開2005-54771)の特許技術を組合せることにより、2015年度重量車燃費基準から+10%以上の燃費向上を 達成した大型トラックが実現できると云うことである。
4.日本の大型トラックに相応しい将来のNOx規制強化のレベル
不幸なことに、中央環境審議会の答申に基づいた従来のNOx規制の手順にしたがって次期NOx規制の強化が実施
された場合には、将来とも米国よりも大幅に緩いNOx規制が継続実施されることが明らかだ。これにより、日本のトラッ クメーカは米国のトラックメーカよりもNOx削減の技術開発費を節約できることになると推察される。このNOx削減の研 究投資の削減によって捻出される資金は全て利益として計上できるため、日本のトラックメーカは米国のトラックメーカ よりも利益率を容易に向上させることが可能な経営環境を手に入れたことになる。そのため、2010年7月に中央環境 審議会が2016年にNOx = 0.4 g/kWhに規制強化する第十次答申の発表を知った日本のトラックメーカの経営幹部 は、政府や中央環境審議会からNOx削減の技術開発費の節約による利益増大の贈り物を貰ったとして、狂喜乱舞し て喜んだのではないだろうか。これに対し、一般国民は、将来にわたって米国よりもNOx規制が緩いためにNOx濃度の 高い大気環境に曝され続ける迷惑を被ることになる。このように、米国よりも緩い次期のNOx規制を日本で実施する排 出ガス規制は、日本のトラックメーカの経営幹部からは大いに感謝されるかもしれない。しかし、この日本におけるNOx 規制の施策は、わが国の大気環境の改善を何年も先送りにする犠牲を伴うことは明らかである。
ところで、筆者は、今から遡ると5年以上も以前となる2006年4月7日に、初めてホームページを開設した。そこでは、
NOx削減と同時に重量車モード燃費も向上が可能な気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を公開してい る。そして、この気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を大型トラック用ディーゼルエンジンに採用した場合 には、アクセペダルの踏込み量50%以下の低負荷時において尿素SCR触媒の入口の排気ガス温度を2倍近くに高温 化できるため、「尿素SCR触媒の浄化率をホットスタート時、コールドスタート時の平均(コールドスタート比率14%)で8 5%程度とする」ことが可能である技術を公表した。この気筒休止の技術を用いれば、次期のNOx低減の目標値は、 次の(2)式で算出される値まで低減することが可能となる。
(エンジン出口の排出量を1.5g/kWh程度)×(尿素SCR触媒等で85%の削減)=0.225g/kWh ・・・・・(2)
このように、今後、大型トラックに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を採用した場合には、上記の(2)式で算
出された0.225g/kWhから、将来の大型トラックのNOx排出値は「0.23g/kWh」(WHTC排出ガス試験法)まで容易に削減 することが可能であり、重量車モード燃費を5〜10%も向上できるのである。このように、2010年7月28日発表の中 央環境審議会・大気環境部会の「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十次答申)」に記載さ れている各種技術に、新たに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を追加することによって、将来 の大型トラックにおいては「NOx排出値=0.23g/kWhまでの削減」と「重量車モード燃費の5〜10%の向上」が 可能となる。
したがって、将来、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術が実用化できる目処が立った時点で、中央環境
審議会は、第十次答申での2016年の次期NOx規制(NOx=0.4g/kWh)(WHTC排出ガス試験法)に続いて、早い時期に NOx規制の強化(NOx = 0.23 g/kWh )(WHTC排出ガス試験法)の答申を出すことが可能となる。これによって、大型ト ラック分野における「低NOx」と「低燃費(=低CO2)」を進展させ、我が国における大気環境の改善を飛躍的に増進さ せることができると考えられる。これを実現する唯一の方法は、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を搭 載した大型トラックがトラックメーカから早期に市販化されることが必要だ。そのためには、環境省や国土交通省を主 体とした政府が強力なリーダーシップを発揮して気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の研究開発を促進し、この 技術を早期に実用化することである。
そこで、筆者は、表11に示したように、2010年に7月28日に中央環境審議会から環境省に第十次答申の次期のNO
x規制値 = 0.4 g/kWh (2016年に実施予定)の他に、第八次答申のNOx挑戦目標値であるNOx規制値 = 0.23 g /kWhを低排出ガストラックのNOx基準値として新たに設けることを提案したい。これによって、第八次答申で求められ ていた低NOxの排出ガスのトラックが実用化され、普及していく足掛かりができるのである。
5 新たな大型トラックの低NOx・低燃費トラック・バスの基準(新たなエコトラック基準)【案】
2010年7月28日付の環境省の中央環境審議会・大気環境部会の「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方につい
て(第十次答申)」においては、大型トラックを対象とした2016年に実施される「NOx規制値= 0.4 g/kWh (WHTCモード)のNOx規制強化」が発表された。そして、この中央環境審議会の第十次答申の根拠を詳細に説 明した第十次報告(http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16034&hou_id=12768)では、2016年に 大型トラックを「NOx規制値= 0.4 g/kWh」(WHTCモード)に適合させると共に「燃費の伸びしろを確保」を実現 させる技術として、ポスト新長期排出ガス規制適合の技術に「2段過給」、「EGR率の向上(一部にはLP-EGR採 用)」、「燃料噴射圧力の向上とPCI燃焼」、「一部車種にはターボコンパウンド」の多くの技術を新たに追加する ことが必要との見解が記載されている。(表12参照)
上記の表7に示した第十次報告の記述内容を見ると、この答申を実際に作成された中央環境審議会・大気環境部
会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、ポスト新長期排出ガス規制適合のディーゼルエンジンに最近の 自動車技術会や日本機械学会の講演会等で数多く取り上げられている技術を片っぱしから採用した満艦飾とも云える ディーゼルエンジンを開発することにより、「NOx排出値= 0.40 g/kWh(WHTCモード)」までのNOxの削減と、「燃費の 伸びしろを確保」が達成できるとの見解が述べられている。しかし、この「燃費の伸びしろを確保」の記述は、各読者に よって受け取り方が異なると思うが、常識的に判断すると「2015年度重量車燃費基準から数パーセント程度を上回る 燃費向上」のような印象を受ける。しかし、この第十次報告を読んだ読者が「数パーセント程度の燃費向上」と考えたと しても、それは読者の勝手な想像に過ぎないのである。そして、確かなことは、この中央環境審議会の第十次報告で は、「燃費の伸びしろを確保」と記述されている燃費改善に関しては、2015年度重量車燃費基準から何パーセント程度 の改善を目標としているかについて、具体的な数値がに全く記載されていないのだ。このように、第十次報告では、燃 費向上については、読者を惑わす不明確な内容の記述に留められているのである。
この第十次報告では、「2段過給」、「EGR率の向上(一部にはLP-EGR採用)」、「燃料噴射圧力の向上とPCI燃焼」、
「一部車種にはターボコンパウンド」の技術による燃費向上の目標が第十次報告に記載されていないことから判断する と、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、これらの技術を総動員しても、2015年度重量車燃費基準からの燃 費向上が余り期待できないと判断されているものと考えられる。そのために、自動車排出ガス専門委員会の学者・専 門家は、第十次報告に「燃費の伸びしろを確保」との通常の技術報告では通常では殆んど目にしないような、極めて曖 昧な文学的表現が使われているのである。つまり、これは、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が第十次報告 に2015年度重量車燃費基準からの燃費向上が少ないことを体裁よく隠すために考えられた揚句の記述ではないかと 推測される。なぜならば、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が第十次報告に燃費向上について正確な情報 を記載する意思があったならば、「2015年度重量車燃費基準から「何%」の「燃費の伸びしろを確保」と燃費の伸びしろ の割合(=%)を具体的に記載すれば良い筈である。しかし、環境省に提出された自動車排出ガス専門委員会の学 者・専門家は、第十次報告では「何%」の記述を省き、「燃費の伸びしろを確保」だけを記載しているのだ。これは、第 十次報告に提示されている寄せ集め技術では実際には燃費の改善が期待できないこと顕在化することを防ぐため、あ たかも一定レベルの燃費向上も実現できるかのような印象を読者(=国民)に与えようとするための知恵を絞った結果 の小細工ではないかと筆者には思えるのである。
さて、中央環境審議会が環境省に第十次報告を提出する前に、自動車排出ガス専門委員会が各トラックメーカに大
型トラックのNOx削減の技術のヒアリングを必ず行っている筈であるが、その際、各トラックメーカにおけるCO2削減に 関連して燃費向上の技術についてのヒアリング調査が実施されているものと推測される。このことから判断すると、各ト ラックメーカが大型トラックにおける2015年度重量車燃費基準からの十分に燃費向上に有効な技術が未だに開発でき ていないものと推定される。そのために止むに止まれず、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、第十次報告 では燃費向上に関して「燃費の伸びしろを確保」だけの単なるリップサービスを記載し、技術報告らしからぬ記述にせ ざるを得なかったのではないかと推測される。
以上の結果、中央環境審議会の第十次報告を見ると、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、最近の自動
車技術会や日本機械学会の講演会等で話題の「2段過給」、「EGR率の向上(一部にはLP-EGR採用)」、「燃料噴射圧 力の向上とPCI燃焼」、「一部車種にはターボコンパウンド」の技術を組合せることによって、2016年実施のNOx排出値 = 0.40 g/kWh(WHTCモード)のNOx削減は達成可能と判断されているようである。しかし、燃費向上に関しては「燃費 の伸びしろを確保」と曖昧な記述となっていることから、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、第十次報告に 列挙された技術を総動員しても、2015年度重量車燃費基準からの十分な燃費改善が困難との見解を持たれているも のと推測される。
以上のように、第十次答申の次期のNOx規制強化(2016年実施)に大型トラックを適合させるためには必要な技術が
単独でも燃費改善とNOx削減の両方に十分な効果を発揮できる技術である場合や、若しくは燃費改善とNOx削減の何 れか一方に十分に有効な技術である場合には、ポスト新長期排出ガス規制適合技術に1〜2種類の技術の追加で良 い筈である。しかし、第十次報告ではポスト新長期排出ガス規制適合の技術に新たに追加が必要な技術として、多数 の技術が列挙されていることから判断すると、上記の表7に記載されている追加技術は、何れの技術も単独の採用で は僅かな燃費改善やNOx削減の機能しか有していない劣等な技術であることが原因と推定される。
このことは、この第十次報告の原案作成を担ったと推測される環境省・中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員
会の学者・専門家は、大型トラックのNOx削減と燃費向上に十分な効果を上げる技術を未だに見い出していない証拠 と見て間違いないのではないだろうか。それにしても、既に退職したポンコツの元技術屋の筆者でさえ、最初に中央環 境審議会の第十報告を拝見した際、「大型トラックにおける次期NOx規制への適合技術と燃費向上の技術」として、最 近話題の新しい技術が数多く列挙されていることに、唖然としてしまったのである。特に、この中央環境審議会の第十 次報告に列挙された表5の技術を組合せた技術だけでは、大型トラックの重量車モード燃費を十分に向上させること が極めて困難であることは、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家も十分に承知されているのではないだろう か。したがって、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は次期のNOx規制強化(2016年実施)において、第十次 報告に列挙した技術を採用しても燃費向上が「お手上げ」の状態であることを、第十次報告の記述の中で正直に吐露 されているように思えるのである。
ところで、2005年4月8日の環境省・中央環境審議会の第八次答申では、ポスト新長期排出ガス規制(2005年規制)の
NOx= 0.7 g/kWhの 1/3程度のNOx= 0.23 g/kWhのNOx挑戦目標が明示されていた。この2005年の第八次答申によ って、筆者を含めて多くの国民やトラックメーカは、ポスト新長期排出ガス規制(2005年規制)に続く次のNOx規制強化 では、当然、NOx規制値= 0.23 g/kWhになるものと予想されていた。ところが、2010年7月に発表された中央環境審議 会の第十次答申では、ポスト新長期排出ガス規制(2005年規制)の次のNOx規制強化は、2016年に実施される「NOx 規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」と発表され、これまで予想されていたNOx値= 0.23 g/kWhからNOx値= 0.4 g/ kWhに大幅に緩和されたたことが明らかとなった。これについて、中央環境審議会の第十次報告では、次期NOx規制 値を当初予定のNOx値= 0.23 g/kWhからNOx値= 0.4 g/kWhに大幅に変更されたのは、排出ガス試験モードをJE05 モードからWHTCモードに変更したこととコールドスタート試験を新たな追加したためであり、「第八次答申のNOx値= 0. 23 g/kWh(JE05モード)」と「第十次答申のNOx値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」とはエンジンからのNOx排出は、同一の レベルであると強引に説明されている。この第十次報告の説明には多少の無理があり、「第八次答申のNOx値= 0. 23 g/kWh(JE05モード)」から「第十次答申のNOx値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」への変更は、筆者には明ら かにNOx規制の緩和と見えるのである。
そもそも、2016年実施されるNOx規制強化に大型トラックを適合させるための重要な技術開発の課題は、排出ガス
試験モード運転における軽負荷運転中の排気ガス温度の低いエンジン運転領域において、尿素SCR触媒のNOx削減 率を向上させる技術を開発することであり、このことはディーゼルエンジン関係者であれば誰もが知っていることであ る。しかしながら、中央環境審議会の第十次報告には、2016年の次期NOx規制強化への適合のために、ポスト新長期 排出ガス規制適合の技術に新たに追加する技術として、表7に示したように「2段過給」、「EGR率の向上(一部にはLP- EGR採用)」、「燃料噴射圧力の向上とPCI燃焼」、「一部車種にはターボコンパウンド」の技術が列挙されているが、排 気ガス温度の低いエンジン運転領域での尿素SCR触媒のNOx削減率を向上させる技術が何一つ提示されていない。
このことから、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、軽負荷運転中の排気ガス温度の低いエンジン運転領
域での尿素SCR触媒のNOx削減率を向上できる技術が不明なために大幅なNOx削減が困難と認識し、過去のNOx値 = 0.23 g/kWh(JE05モード)の第八次答申の方針を変更し、第十次答申において「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモ ード)」への大幅な緩和することを決断されたと推測される。つまり、、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、 現状では大型トラック用ディーゼルエンジンの大幅なNOx削減が「八方塞がり」の状態であるとの認識で意見が一致し ているように考えられる。
このように、排気ガス温度の低いエンジン運転領域での尿素SCR触媒のNOx削減率を向上させる技術が現時点で不
明であるとは云え、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が次期NOx規制値が当初予定のNOx値= 0.23 g/kWh からNOx値= 0.4 g/kWhにNOx規制値が大幅に緩和されたことは、トラックメーカはNOx削減の技術開発の投資削減が 可能となるため、トラックメーカにとっては収益の向上の機会を得たことになり、トラックメーカとしては笑いが止らないと 考えられる。「棚からぼた餅」とは、このようなことを指すのではないだろうか。そして、自動車排出ガス専門委員会の学 者・専門家は、トラックメーカから感謝されることは間違いないだろう。
ところで、中央環境審議会の第十次報告に記載されている最近の自動車技術会等で話題となっている技術を寄せ集
めて羅列したと見られる表5の技術の組合せでは、大型トラックの十分な低NOx化と低燃費化を実現することが困難な ことは明らかだ。そして、第八次答申(2005年)に記載されたNOx削減の挑戦目標のNOx値= 0.23 g/kWh(JE05モー ド)を無視し、米国の2009年のNOx規制値= 0.27 g/kWhに比べても格段に緩和した緩い第十次答申(2010年7月)「NO x規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」が答申されていることは事実である。これについて、現在のわが国では、技術的 に「排気ガス温度の低いエンジン運転領域での尿素SCR触媒のNOx削減率を向上させて第八次答申(2005年)に記載 されたNOx削減の挑戦目標のNOx値= 0.23 g/kWhを達成する技術が不明」であることが事実であれば、且つ、「2015 年度重量車モード燃費基準からの5%程度の燃費向上を実現できる技術が不明」であるならば、中央環境審議会が 第十次答申において「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」への大幅に緩和したことは、当然のことと考えられる。
しかしながら、筆者は2006年4月にホームページを開設し、「排気ガス温度の低いエンジン運転領域での尿素SCR触
媒のNOx削減率を向上させて第八次答申(2005年)に記載されたNOx削減の挑戦目標のNOx値= 0.23 g/kWhの達成 が可能」であり、且つ、「2015年度重量車モード燃費基準からの5%程度の燃費向上を実現が可能」な気筒休止エンジ ン(特許公開2005-54771)の技術を公開している。そして、この気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を大 型トラックのエンジンに採用すれば、容易に「NOx排出値= 0.23 g/kWh(WHTCモード)」と「2015年度重量車モード燃費 基準からの5%程度の燃費向上」の大型トラックが実用化できることを公表しているのである。それにもかかわらず、 中央環境審議会が2010年7月の第十次答申で大型トラックの次期NOx規制値として「NOx値= 0.4 g/kWh(WHTCモ ード)」を答申されたことについては、わが国における明らかにNOx規制の緩和と筆者には見えるのである。
なぜならば、気筒休止エンジンによる大型トラックの低燃費化および気筒休止は、ディーゼルのNOx削減と燃費向上
の一挙両得の技術だ!に詳述しているように、中央環境審議会・大気環境部会の第十次答申に記載されている 今後の大型トラックの低NOx化と低燃費化を実現するための技術としては、自動車排出ガス専門委員会の学 者・専門家が第十次報告の中で提示されている寄せ集め技術(表9参照)よりも、一つの技術であるにもかか わらず十分な燃費改善と大幅なNOx削減の両方が実現できる気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技 術の方が格段に優れているためである。
このことは、飽くまでも筆者の単なる推測に過ぎず、中央環境審議会の第十次報告において気筒休止エンジン(特許
公開2005-54771)の技術が盛り込まれていないのは、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家がこの技術を意図 的に黙殺された結果であるのか、はたまた、筆者提案の気筒休止の技術の存在を全く承知されていないことによるも のであるかは、今のところ筆者には不明だ。
5−1 自動車排出ガス専門委員会は気筒休止(特開2005-54771)の技術を黙殺か?
ところで、現在は「CO2削減」、「省エネルギー」、「省資源」等が求められている時代であることは、一般の主婦や小
学生でも良く理解していることである。それにもかかわらず、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、「NOx削 減」と「燃費向上」の両方を同時に実現できる気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を無視する中央環境審 議会の第十次報告を作成されているのだ。このように、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家の手になる環境 省・中央環境審議会の第十次報告には、今後の大型トラックの低NOx化と低燃費化を実現するための技術として、筆 者提案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)が全く記載されていないことは事実である。このことについて、この 報告書は、技術情報を広く収集して客観的な評価によって纏められたものでは無く、自動車排出ガス専門委員会の学 者・専門家の恣意的な意見の集約のように筆者には思えるが、如何なものであろうか。
このように、ポスト新長期排出ガス規制適合の大型トラックに新たに気筒休止エンジン(特許公開2005-
54771)を追加することによって、容易に第十次答申の次期のNOx規制強化(2016年実施)に大型トラックを適 合させると同時に低燃費化が実現できる技術が既に存在しているのである。それにもかかわらず、自動車排出 ガス専門委員会の学者・専門家がこの技術を意図的に無視・黙殺して環境省・中央環境審議会の2010年7月 の第十次報告をまとめていたとすれば、極めて残念なことだ。
5−2 自動車排出ガス専門委員会は気筒休止(特開2005-54771)の技術を不承知か?
これは単なる仮定・推測の話となるが、中央環境審議会の第十次答申での次期のNOx規制強化(2016年実施)に大
型トラックを適合させることができる期待技術として、第十次報告にNOx削減や燃費改善の機能が劣る数多くの技術を 寄せ集めて列挙されている推測理由は、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が第十次答申が環境大臣に提 出された2010年7月28日より以前に、筆者提案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を承知されていなかった 場合も考えられる。このように、筆者提案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)に関する情報を全く入手できな い場合としては、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術が2006年4月7日に開設したホームページだけに掲 載している技術であるため、インターネットが普及した現在でもgoogleやyahooの検索を使ってディーゼルエンジンの排 出ガス削減や燃費向上の技術情報の収集を全く拒否されている自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家の場合に は、筆者提案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術の存在を知ることができなかった可能性も考えられ る。
しかし、googleやyahooの検索を使った技術情報の収集を全く拒否されている自動車排出ガス専門委員会の学者・専
門家が存在するとしても、それは極めて少数の学者・専門家ではないかと推察される。仮に、インターネットの検索エン ジンで技術情報を収集されない学者・専門家であっても、自動車排出ガス専門委員会の会議中に他の学者・専門家か ら気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の情報が得られたものと考えられる。したがって、中央環境審議会の第十 次答申が環境大臣に提出された2010年7月28日より以前に、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、筆者提 案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を承知されていたと考えることが妥当ではないだろうか。
したがって、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が主体となって作成された環境省・中央環境審議会の第十
次報告には、今後の大型トラックの低NOx化と低燃費化を実現するための技術として、筆者提案の気筒休止エンジン (特許公開2005-54771)が記載されていないのは、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、筆者が提案してい る大型トラック用ディーゼルエンジンの燃費改善やNOx削減に極めて有効な気筒休止エンジン(特許公開2005-54771) の技術を意図的に黙殺された結果と推察される。その一方で、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、第十 次報告の中には表5に示したように、今後の大型トラックの低NOxと低燃費を図る技術として燃費改善やNOx削減の機 能が劣る技術を寄せ集めて堂々と数多くの技術を列挙し、提示されていることである。これについて、「何をか言わん や!」と叫びたくなるのは、筆者だけであろうか。
5−3 気筒休止(特開2005-54771)は、大型トラックの低NOxと低燃費に最適な技術
今後の大型トラックの低NOxと低燃費を図る技術として、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が第十次報告
の中に示した燃費改善とNOx削減に関する寄せ集め組合せ技術と、筆者が提案している燃費改善とNOx削減の技術 を整理して、以下の表13に示した。
上記の表10に示しているように、中央環境審議会の第十次報告の記載内容を見ると、自動車排出ガス専門委員会の
学者・専門家は、自動車排出ガス専門委員会の第十次報告によるとポスト新長期規制適合エンジンに「2段過給」、 「EGR率の向上(一部にはLP-EGR採用)」、「燃料噴射圧力の向上とPCI燃焼」、「一部車種にはターボコンパウンド」を 寄せ集めた数多くの技術を追加しても、2016年実施の「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)への適合」のNOx削減 と、「燃費の伸びしろを確保」と称する程度の燃費改善レベルの大型トラックしか実現できないようだ。何しろ、ターボコン パウンドがディーゼル燃費を大幅に改善できるとの主張は、誤りだ!に詳述しているように、ターボコンパウンドの技術を 採用したとしても、この技術は気筒内の最高圧力を高めることなく、エンジンの高出力化が可能な技術であり、燃費向 上の機能は少なく、重量車モード燃費を1%未満しかできないような燃費改善に不適であるからだ。これに対し筆者が 提案する技術では、ポスト新長期規制適合エンジンに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の一つの技術の追加 することによって、「NOx値=0.23g/kWh(WHTCモード)の達成」に大幅なNOx削減と、「2015年度重量車燃費基準から 10%の燃費向上」の大幅な燃費改善した大型トラックが実現できるのである。
このように、中央環境審議会の第十次報告に記載されたポスト新長期規制適合技術に多数の技術を追加した手段・
技術による大型トラックのNOx削減と燃費改善のレベルは、筆者が提案するポスト新長期規制適合技術に気筒休止エ ンジン(特許公開2005-54771)の技術を追加した手段・技術による大型トラックのNOx削減と燃費改善のレベルよりも、 大幅に劣っているのである。したがって、大型トラック用ディーゼルエンジンのNOx削減と燃費改善の技術としては、こ の表8の中央環境審議会の第十次報告に記載の技術よりも、筆者が提案する気筒休止エンジン(特許公開2005- 54771)の技術の方が格段に優れていることは、誰でも容易に理解できる筈だ。
何度も繰り返すが、筆者が提案している気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を大型トラックに採用した
場合には、この気筒休止の技術だけで大型トラックでは優れたNOx削減と燃費向上が実現できるのだ。しかし、自動車 排出ガス専門委員会は、この大型トラックの十分なNOx削減や燃費向上が可能な筆者提案の気筒休止エンジン(特許 公開2005-54771)の技術について、日光・東照宮の「見ざる」+「言わざる」+「聞かざる」の三猿の如く、無視する方針 を決定されたように思えるのである。これが事実であれば、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が低NOxと低 燃費の両方に有効な技術を意図的に排除する行為であり、筆者には納得できないことだ。
ところで、大型トラック用ディーゼルエンジンにおいては、これまでの歴史を見れば明らかなように、更なる燃費向上と
NOx削減は容易なことではない。そのため、筆者提案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術に匹敵する ような、大型トラックのNOx=0.23g/kWh(WHTCモード)までのNOx削減と、2015年度重量車燃費基準から10%の 燃費向上とを同時に実現できる技術は、近い将来に開発できるようには思えない。そのような状況において、仮に、わ が国における大型トラックのNOx規制と燃費規制のルールメーキングに多大の影響力を行使されている自動車排出ガ ス専門委員会の学者・専門家が気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を黙殺されているとすれば、大型トラ ックにおける今後のNOx削減と燃費向上に大きな進展が全く期待できないと云っても過言ではないだろう。
さて、今後、10年単位の長い年月が経過しても、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を凌駕する新しい技術が
発明・開発されると云う保証は何処にもない。したがって、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が今後も気筒休 止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を黙殺され続ける場合には、将来において気筒休止エンジン(特許公開 2005-54771)を凌駕するディーゼルエンジンでの十分な低NOx化と低燃費化を可能にする新しい技術が発明・開発さ れるまで、表4に示したような大型トラックの新たな「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」が延々と設定されず、低 NOx・低燃費の大型トラックが実用化されない状況が続いて行く可能性もあるのだ。これに対しては、国民の批判が高 まってくるものと予想される。しかし、それでも自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、気筒休止エンジン(特許 公開2005-54771)の技術を無視し続け、筆者提案の気筒休止に匹敵する新しい技術が出現する時期や、この気筒休 止の特許が権利の終了する時期まで、国民の批判に耐えて行くつもりなのであろうか。そして、自動車排出ガス専門委 員会の学者・専門家は、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を凌駕する技術が早期に出現することをひたすら 天に祈り続けるつもりであろうか。そして、その間、大型トラックのNOx削減と燃費向上に有効な気筒休止エンジン(特 許公開2005-54771)を隠蔽していることについて、学者・専門家としての良心の呵責に悩まされ続ける覚悟であろう か。御苦労なことであり、筆者にはとても真似のできないことだ。何はともあれ、実際に自動車排出ガス専門委員会の 学者・専門家が実際に気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を黙殺されているのであるならば、その黙殺 の本当の理由・利益・メリットについて是非とも知りたいものである。
また、大型トラックのNOx削減と燃費向上に有効な気筒休止を黙殺する学者諸氏にも詳述しているように、自動車排
出ガス専門委員会の学者・専門家は、一致団結して気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を意図して黙殺 していることが仮に事実であれば、わが国における大型トラックの低NOx化と低燃費化を遅らせる行為を行っていると 言われても仕方がないように思える。そして、このようなことが現実に行なわれているとすれば、自動車排出ガス専門 委員会の学者・専門家は大型トラックのNOx規制と燃費規制を遅延させることによってトラックメーカの研究開発の投 資削減を可能にする環境を整えていることになり、トラックメーカの利益が増強できるように積極的に協力していると見 ることも可能だ。本来、自動車排出ガス専門委員会は国民の利益を最優先とする業務推進が求められていることから 考えれば、第十次報告の記述内容には少し問題があるように思うが、そのように感じてしまうのは筆者だけであろう か。
中央環境審議会の第十次報告を読む限り、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家は、僭越
ながら、大型トラック用ディーゼルエンジンにおける十分なNOx削減と燃費改善を見込める技術・アイデア・情報を十分 にお持ちでないように、筆者には思えるのである。そうであっても、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の 学者・専門家は、不思議なことに大型トラックの低NOx化と低燃費化を確実に実現でき気筒休止エンジン(特許公開 2005-54771)の技術を頑なに黙殺されているのである。このことについて、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委 員会の学者・専門家は、学者・研究・専門家としての良心の呵責に悩まされることがないのであろうか。それとも、学 者・研究・専門家としての良心のある人達は、最初から中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員を引き受けられて いないのであろうか。そこのところは、筆者には不明である。
もっとも、自動車排出ガス専門委員会の学者・専門家が学者・研究・専門家としての良心を立派に具備されている人
達であるならば、当然のことながらわが国の「国民の健康被害の抑制」と「低燃費・省エネルギー・CO2削減の推進」す る本来の業務・仕事・役割を完璧に果たしたいとの意思お持ちの筈である。その場合には、自動車排出ガス専門委員 会の学者・研究者・専門家は、これまでの中央環境審議会の第十次報告での意見・主張をキッパリと忘れ去って大きく 変更し、近い将来に大型トラックに対しての「2005年の第八次答申レベルの低NOx化」と「2015年度重量車燃費基準を 超える低燃費化」を確実に実現できる気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術の研究開発を強力に推奨・推 進されるのではいかと考えている。
5−4 新たな大型トラックの低NOx・低燃費の基準(新たなエコトラック基準)の設定
中央環境審議会の答申等について、ディーゼル重量車についてのNOx規制強化に関する最近の動向を以下の表A
にまとめた。
前述の通り、NOx規制については、環境省の中央環境審議会は、2005年4月の第八次答申には、ディーゼル重量車
について、0.7 g/kWhの 1/3程度(= 0.23 g/kWh)のNOxの挑戦目標が示されている。したがって、ポスト排出ガス規 制に続く2009年にNOx規制強化は、当然、このNOxの挑戦目標である 0.23 g/kWhになると多くの人が予想してい た。しかし、中央環境審議会の第十次答申(2010年7月28日に環境省に答申)では、2016年にディーゼル重量車(7.5ト ン超えの新型車)の「第十次答申の許容限度目標値(平均値)= 0.4 g/kWh」(=ホットスタート+コールドスターの WHTCモード試験)の実施が答申された。しかしながら、ディーゼル重量車2016年NOx規制の0.4g/kWhは、不当な緩和 の欠陥規制に詳述しているように、日本のディーゼル重量車のNOx規制は、近い将来には、第八次答申のNOx挑戦目 標と同等のNOx=0.23 g/kWh(=WHTCモード)のレベルに強化すべきことは明らかである。
一方、大型トラックのNOxを削減する技術として、筆者のホームページでは、4年前から気筒休止エンジン(特許公開
2005-54771)を熱心に提案してきたのである。この気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を採用すれば、J E05モード排出ガス試験においてエンジンでの運転頻度の高いアクセルペダル踏込み量Accelが50%近傍やそれ以 下のエンジン運転領域では、尿素SCR触媒の活性化による大幅なNOx削減を可能にする機能があるため、JE05モ ード排出ガス試験での 0.23 g/kWhのNOxレベルは、余裕で適合できる筈であった。勿論、2016年に実施予定の次期 NOx規制に採用される新しい世界統一試験サイクルであるWHTC(World Harmonized Transient Cycle)に変更されて も、気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を採用すれば、2005年4月の第八次答申の 0.7 g/kWhの 1/3程 度(= 0.23 g/kWh)のNOxの削減目標が達成できることは間違いないと考えている。
る。
また、大型トラックに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を採用すれば、都市内走行モード(JE05モー
ド)と都市間走行モード(縦断勾配付80km/h定速モード)の両モードの燃費が従来のエンジンに比べて大幅に改善 できるため、重量車モード燃費が従来のエンジンの場合に比べて5〜10%も削減できる機能がある。したがって、大 型トラックに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)を採用することによっては、重量車モード燃費の5%の改善はそ れほどの長い開発期間を設けなくても容易に実現できるのである。
したがって、2016年に実施が予定されている「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)のNOx規制強化」とは別に、近
い将来において、仮に大型トラックに「NOx基準 = 0.23 g/kWh(WHTCモード)」と「2015年度重量車燃費基準の+1 0 %程度を向上」を求めた表10の新たな「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」の施策を政府(環境省と国土交 通省)が実施した場合には、この低NOx・低燃費の基準に大型トラックを適合させるためには、各トラックメーカは大型 トラックの燃費改善とNOx削減に有効な気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の研究開発を実施し、この技術を採 用した大型トラックを早急に実用化することが必要である。これによって、わが国の大型トラック分野における「NOxの 削減」、「CO2の削減」および「省エネルギー化」が飛躍的に進展すると考えられる。このことは、省エネルギーやCO2 削減を求める国民の願いを実現することができると共に、トラックユーザにとっては、今後は燃費が改善された大型トラ ックを購入することによって、運行燃費の改善が実現できることになる。したがって、今後、政府(環境省と国土交通 省)が早期に表4の新たな「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」を政府が施行した場合には、政府が国民のため の仕事を立派に果たしているとして、国民全体から、大いに感謝され、称賛されることは間違いない。
ところが、中央環境審議会は、わが国の大型トラックの次期NOx規制としてNOx = 0.4 g/kWh(2016年実施)のレベ
ルに規制を強化する第10次答申が2010年7月に提出してしまっているのである。信じられないことではあるが、この 2016年に実施される次期の日本のNOx規制は、米国における2010年のNOx = 0.27 g/kWhの規制よりも大幅に緩い NOx規制となってしまっているのだ。そのため、日本国民は米国民よりも大気環境に曝され続けることになると予想さ れる。このような状況について、日本の環境行政に関係されている一部の常識のある政府・官僚の人達は、必ずや「こ の状況は早急に改善すべき」との想いを持たれているものと推測される。そのような政府・官僚の人達は、わが国に おける大型トラックの燃費向上とNOx削減が実現できる体制を早期に構築するため、できるだけ早期に排出ガ ス規制と燃費規制のオプションとして、環境省と国土交通省がNOx削減と燃費向上を規定した「低NOx・低燃費 トラック・バスの基準」を新たに設定する行動を起こすべきではないだろうか。そして、この「低NOx・低燃費トラッ ク・バスの基準」としては、表14に示したような、2005年の第八次答申にNOxの挑戦目標として示されていた 0.7 g/kWhの 1/3程度の 0.23 g/kWhのNOx 規制値と、2015年度重量車燃費基準から+10% 程度の燃費 を向上した基準値を設定することが適切ではないかと考えている。
そして、この新たに設定した表14の「低NOx・低燃費トラック・バス基準(案)」に適合した大型トラックには、現在のハ
イブリッド車や電気自動車等のエコカー減税と同様の税金の優遇が受けられる優遇税制を適用することだ。仮に、この 「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」に適合した大型トラックに対して税金を優遇するる制度が発足されたなら ば、大型トラックの税制優遇を受けたいため、各トラックメーカは先を争い、この表14の「低NOx・低燃費トラック・バス の基準(案)」に適合した低公害・省エネの大型トラックの開発を必死に推進することは間違いないだろう。
この表14に示した「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」のNOx排出値(JE05モード or WHTCモード)と重量車モ
ード燃費値の両方の基準に大型トラックを適合させることのできる技術が、筆者の提案している気筒休止エンジン(特 許公開2005-54771)である。この気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)は、ディーゼルエンジンの重量車モード燃 費値を5〜10%の改善すると同時に、JE05モード or WHTCモードでの尿素SCR触媒のNOx削減率を大幅に向上でき る新しい技術である。したがって、この筆者提案の気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術を大型トラッ クのディーゼルエンジンに採用すれば、「NOx排出値= 0.23 g/kWh(JE05モード or WHTCモード)までの削 減」と「2015年度重量車モード燃費基準よりも+10%程度の燃費向上」を実現した大型トラックが容易に実用 化できるのである。
因みに、欧州のEEV-NOx排出ガス基準値(過渡モード)は NOx = 0.2 g/kWhであり、米国の2010年NOx規
制はNOx = 0.27 g/kWhであり、日本の2016年規制のNOx= 0.4 g/kWhよりも大幅に厳しいNOx規制が行わ れている。(以下の表15参照)
注 EEV:Enhanced Environmentally Friendly Vehiclesの略。EEV規制値は、大気汚染が特に進行している都市等の地域問題解決のため、メン
バー各国が政策的に使用するための値(例:都市への乗り入れ制限を設ける際の基準として使用)で、暫定値。
なお、この気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術によって大型トラックの燃費改善とNOx削減が容易に実
現できる理由・原理の説明は、このページの記述が長くなることを避けるため、ここでは割愛する。しかし、気筒休止エ ンジン(特許公開2005-54771)の技術を採用することによって大型トラックの燃費改善とNOx削減が可能となる理由と 根拠を知りたい読者は、気筒休止エンジンによる大型トラックの低燃費化、または気筒休止は、ディーゼルのNOx削 減と燃費向上の一挙両得の技術だ!を是非とも御覧いただきたい
ところで、2016年に実施が予定されている「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)のNOx規制強化」とは別に、近い
将来、仮に国土交通省が「2015年度重量車燃費基準の+10%程度の向上」を求めた大型トラックの燃費基準の強化 を決断した場合、トラックメーカは、この「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」と「2015年度重量車燃費基準の+1 0%程度の向上」を満足する「低NOx・低燃費トラック・バス」を開発せざるを得ないことになる。その場合、大型トラック 用ディーゼルエンジンに気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の特許技術を採用すれば、この「低NOx・低燃費トラ ック・バス」は容易に実用化できることになる。したがって、現在のトラックメーカの技術者・専門家は、何の知的労力を も必要とすること無く、単なる腕力だけでは各自の開発業務の完遂を図れることになる。このことから、過去の「NOx規 制」や「燃費規制」の導入や強化の研究開発に従事した技術者・専門家に比べ、現在のトラックメーカの技術者・専門 家は極めて恵まれた環境に置かれているものと考えられる。
何はともあれ、近い将来に国土交通省が「2015年度重量車燃費基準の+10%程度の向上」を求めた大型トラックの
燃費基準の強化を決断した場合には、現時点で低NOx・低燃費の有効な技術を見い出していないトラックメーカは、こ の表14のような大型トラックの新たな低NOx・低燃費の基準が施行されて場合には、この燃費の新基準に自社の大型 トラックを適合させるために、燃費改善とNOx削減に有効な気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の研究開発を実 施し、この技術を採用した大型トラックの開発に着手するものと考えられる。これによって、気筒休止エンジン(特許公 開2005-54771)の技術を採用した大型トラックが早期に実用化され、わが国における大型トラック分野の「NOxの削 減」、「CO2の削減」および「省エネルギー化」が飛躍的に進展すると考えられる。このことは、省エネルギーやCO2削 減を求める国民の願いを早い時期に実現することができると共に、トラックユーザにとっては、今後は燃費が改善され た大型トラックを購入することによって、運行燃費の改善ができることになる。したがって、今後、政府(環境省と国土交 通省)が早期に、表14の新たな「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」を政府が施行した場合には、政府が国民 のための仕事を立派に果たしているとして、国民全体から、大いに感謝され、称賛されることは間違いない。その場合 には、政府(=環境省および国土交通省)は、『米国よりも格段に緩い重量車(=大型トラック・トラクタ)のNOx規制の 現状』を打破できることになり、国民からの信頼も得られるものと考えられる。
しかしながら、現時点(=2014年10月現在)では、米国よりも緩い大型トラックのNOx規制を施行し続ける日本政府の
怠慢に詳述しているように、政府(国土交通省および環境省)は、大型トラックにおいては現行の米国のNOx規制値= 0.27 g/kWh(=2010年規制)に比べて大幅に緩い「NOx規制値= 0.4 g/kWh(WHTCモード)」の規制を2016年に実施す る予定である。これは、大型トラックのNOx削減と燃費向上の新技術を黙殺・隠蔽する学者諸氏に詳述しているよう に、日本の学者・専門家が一致団結して大型トラックのNOx削減と燃費改善に有効な気筒休止エンジン(特許公開 2005-54771)の特許技術を無視・黙殺している結果と推察される。その成果・効果として、日本では今後も米国に比べ て緩い大型トラックのNOx規制の状況が続くため、日本の各トラックメーカは、大型トラックの燃費改善とNOx削減に有 効な気筒休止エンジン(特許公開2005-54771)の技術開発に巨額の開発資金と多数の開発人工を投入する必要が無 く、大型トラックの燃費改善の技術の技術開発が全く進展しなくても何の問題も生じない状況に置かれることになると推 察される。
この場合には、トラックメーカは、燃費改善の研究開発の投資が節約できるため、何の企業努力も無しにトラックメー
カが濡れ手に粟の如く利益を増大できることができることになる、したがって、政府(国土交通省および環境省)が表1 4に示した新たな低NOx・低燃費の基準を施行時期が遅ければ遅いほど、トラックメーカが多くの利益を得ることができ ることになる。このように、仮に、現在の政府(国土交通省および環境省)が表14に示した新たな低NOx・低燃費の基 準の施行を意図的に遅延し続けたとすれば、国土交通省および環境省はトラックメーカから「願ったり、適ったり」と感 謝されることは明らかだ。しかし、このようなことは、省エネルギー、CO2削減、およびNOx削減の必要性が叫ばれてい る現在、政府(=国土交通省および環境省)が国民から強い批判を浴びることは、間違いないだろう。
このように、近い将来に、仮に政府(国土交通省および環境省)が表11に示した大型トラックの新たな低NOx・低燃
費の基準を施行しないならば、政府の人達は「歌を忘れたカナリヤ♪」ならぬ「低NOx・低燃費を忘れた政府・官僚」に 落ちぶれてしまっていると言われても仕方がないように思えるのである。そして、このような場合には、政府(国土交通 省および環境省)の官僚や政府の関連審議会の委員は、国民の利益を優先する本来の仕事をさぼり、税金を貪る無 為徒食の輩と多くの国民から批判されそうだ。このような状況に陥ることを避けるための唯一の方法は、政府(国土交 通省および環境省)」は、表14に示したような新たな「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」を施行し、わが国にお ける大型トラック分野の「省エネルギー」、「CO2削減」および「NOx削減」の施策を推進をすべきである。この施策によ って、トラックユーザは、近い将来に低NOx・低燃費の大型トラックを購入することによって、燃料費の削減の恩恵に浴 すると共に、大気環境の改善にも寄与できるのである。
勿論、表14に示したような新たな「低NOx・低燃費トラック・バスの基準(案)」に適合した大型トラックに対しては、従
来のエコカー減税と同様に、税金を優遇することが必要である。このような施策によって、近い将来には、NOx を0. 23 g/kWhまで削減し、2015年度重量車燃費基準から+10% 程度の燃費を向上した新たな低NOx・低燃費の 大型トラックの販売台数は、多くの割合を占めるものと考えられる。そして、わが国における大型トラックの分野におけ る「NOxの削減」、「省エネルギー」および「低CO2」が飛躍的に推進されることは確実であろう。したがって、現在の政 府(国土交通省および環境省)が早急に行なうべきことは、上記の表14に類する大型トラック対象とした「低NO x・低燃費のトラック・バスの基準」若しくは「低燃費・低排出ガス自動車の基準」と称するエコカー減税の対象と なる新たな基準を早期に導入することではないだろうか。このことは、多くの国民の強い願望であることは間違いな いだろう。
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